プロレス団体、興行会社における特徴の1つとして現役選手または引退した選手がプロレス団体を運営する会社を設立して、その社長業を兼務するというものがある。日本でもプロレス団体運営システムの始祖である力道山からこの形式は始まっており、日本プロレスから、さらに派生した新日本プロレス、全日本プロレスもこの形式を踏襲したほか、2024年現在も新日本プロレスなどはこの形式を取っており、特に女子プロレスでは、センダイガールズプロレスリング、OZアカデミー女子プロレス、ワールド女子プロレス・ディアナ、プロレスリングWAVEが該当する。
引退したプロレスラーが社長を務めるプロレス団体としては過去には国際プロレスなど、2019年現在はPURE-Jなどがある(PURE-Jについては現役から継続)が、これは主演スターが座長も兼ねる劇団の世界に近い形態といえる。
興行の現場を知るものが社長業を行うことで、現場(プロレスラー)との乖離を避けることが出来たり、スポンサーとの営業活動などに利点がある。その一方で、ワンマン体制や血縁、同族企業になりがちとされ、また、プロレスの試合におけるセンスと経営の能力は別物であるため、経営を手助けする優秀なブレーンとなる存在が無ければ維持することは難しい。さらに、特に主力選手が社長を務めるケースにおいて、プロレスラーとしてのコンディション維持に必要なトレーニング、休息、リハビリなどの時間の確保が困難になり、三沢光晴の死亡事故を機に問題視する声も出ている[17]。
これに対して選手出身ではない者(「背広組」と呼ばれる)が社長や経営幹部を務める場合は、経営と現場を分離して安定した運営をすることができるものの、選手と経営組の間に軋轢が生まれ、活動を停止するケースも存在する。さらにプロレスラー出身のトップから交代した場合、絶対的な影響力を持つ社長プロレスラーの退陣によって(プロレスラー、背広組問わず)後任者が選手やフロントをまとめきれず瓦解するケースも少なくない。
このためJWP女子プロレスや、ジャイアント馬場が会長に退いていた時期の全日本プロレスの様に、背広組社長が会社経営に専念して、マッチメイクなどの現場にかかる業務のほとんどを選手に委ねるプロレス団体も存在する。
一方で「背広組の社長がプロレスラーになる」ケースもある。WWEでは会長であるビンス・マクマホンが(時期によるが)自ら試合に出る。彼は「背広組」であるが、これは演出の必要上もあるが、レスラーとしての出場例である。また、FMW社長の荒井昌一はプロレスラーとしての訓練は積んでいなかったが、演出としてリングでプロレスラーとの乱闘を演じたことがある。I.W.A.JAPAN社長の浅野起州も元はプロモーター出身の背広組だが、2000年の「プロレスラーデビュー」以後時折試合に出ていた。ハッスルMAN'Sワールド最高経営責任者の草間政一の場合は、レスリング経験者ということもあり、2010年に「プロレスラーデビュー」して勝利を収めた。 日本のプロレス団体でツアー展開をする場合は、相撲の地方興行やサーカスと同様、巡業の形態を取ることがある。メジャーと呼ばれる大規模団体が開催する興行数は年間100?150試合前後と他の格闘技と比べて圧倒的に多く、スタッフはリングや周辺機材を積んだトラックで別移動するが、プロレスラーは集団でバスなどを用いて移動して同一のホテルなどに宿泊する。 競技性を売りとするUWF系の団体では、コンディション調整に時間を割くため、興行数は年間数試合から数十試合程度となっている他、対戦するプロレスラー同士が会わないよう、別のホテルに宿泊させて競技性の保持に務めた。 集客数は、試合の会場とする場所にもよるが、スタジアムなどの大会場では数万人規模、地方の体育館やイベントホール、屋外グラウンドなどの会場では数千人から少なくとも千人程度までの集客を見込んで興行を打つことが一般的である。 興行の際の会場使用料に関しても、主要アリーナや公共の体育館は入場料を徴収するアマチュアスポーツ大会使用時よりも高額(入場料を徴収するアマチュアスポーツ大会使用時の使用料より3から10倍程度)に設定されている。使用料自体も、開催曜日(土曜、休日は平日よりも高額となる会場もある)、使用時間帯(定額制の会場もある。時間帯制の会場は時間が遅くなるほど高額になる)、最高入場料(特別リングサイド料金)、観客席の使用の有無などで会場によって異なっており、設営から撤収までの時間で使用料が決まる。会場使用料には基本使用料の他にも、時間外使用料、冷暖房料金、照明料金、テレビ中継を行った際の設備料金などの付帯料金などが加わる。 使用料の支払は基本的に前払い(前払いの場合は支払期限があり、期限を過ぎれば予約は自動的にキャンセルとなる)であるが、一旦使用料を支払えば、開催中止の場合でも使用料を返還しない会場が殆どであり、その場合は巡業の収支にも大きく影響する。また、撤収が予定よりも伸びた場合の時間外使用料や会場設備を損傷した場合に生じる損害賠償は、後日会場側から団体に請求され、追加の負担となる。大日本プロレスは損害賠償のリスクを回避するため、会場によってマッチメイクを決めている。国際プロレスはジプシー・ジョーが参戦したシリーズでは損害賠償に悩まされていた他、新日本プロレスは観客が暴動を起こしたために使用料をはるかに超える損害賠償を請求されたり、使用禁止を言い渡されたことがある。一方で全日本女子プロレスは、急遽後払いに変更した会場使用料を滞納したために会場の管理者から告訴されたことがある。 会場や興行の規模によっては、使用申込後に他のスポーツイベントや行事などとの日程を調整する利用調整会議への出席が義務付けられている会場や使用申込後に団体の信用度などの事前審査を行う会場もあり、会場の事前審査によっては使用不可となる場合もある、使用料の滞納などで使用禁止となる場合がある。 海外ではプロレスラーの現地集合、現地解散の方式を取ることが大半で個別行動が基本。新人や若手レスラーは、移動経費の節約のため、自動車や先輩選手の自家用飛行機に相乗りで移動することもある。それが故に、大剛鉄之助やジョニー・バレンタインが事故でプロレスラー生命を絶たれたり、アドリアン・アドニスが移動中の交通事故で死去したケースもある。日本でもJWP時代のデビル雅美やFMW時代の大仁田厚は自家用車に後輩を乗せて移動していた。 近年では何らかの形で常設会場を設けて地方巡業を行わないプロレス団体も増えてきている。主にローカルインディーや草の根インディー或いは「どインディー」[18] というスラングで呼ばれる極めて小規模な団体がこの形態を取ることが多い。 こうしたプロレス団体はメジャー団体や中規模インディ団体のように集客数の採算分岐点の大きく、かつ会場使用料が高額な大会場を用意する経営体力がないため、仮に巡業を行う場合であっても小規模な公民館や体育館の一室、或いは駐車場の一角で平均百人前後、多くても数百人程度の集客で興行を成立させる運営を行っていることが多い。 リングさえ用意してしまえば何処でも興行会場になるとも言えるため、極端な場合ではプロレス団体事務所の敷地内にリングを置いたり、リングが常設されているプロレス団体の道場に客を集める形態(いわゆる道場マッチ)を取る場合もあり、数十人から数人程度の観客動員でも興行を成立させたと見なしてしまう零細団体も存在する。 海外ではプロレスラー自身が各地のインディー団体を転戦するケースも多く、この形式はインディーサーキットと呼ばれている。 2010年代以降、特に新型コロナウイルス感染症の世界的流行以降、YouTubeやUstream等の動画配信サービスを利用し、道場もしくはスタジオで行う無観客試合を配信する形で興行を行う団体も出てきており(『19時女子プロレス』、『NOAH “NEW HOPE”』等)、これらも通常巡業は行わない。
巡業
巡業を伴わない興行