プロパガンダ(羅: propaganda)は、特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持った行為の事である。「ボリシェヴィキの自由」 - 戯画化された裸のレフ・トロツキーが描かれた、ポーランド・ソビエト戦争でのポーランド側の反共プロパガンダポスター。ソビエト政権下で多数の人民が虐殺された事件を風刺している。 情報戦、心理戦もしくは宣伝戦、世論戦と和訳され、しばしば大きな政治的意味を持つ。政治宣伝ともいう。最初にプロパガンダと言う言葉を用いたのは、1622年に設置されたカトリック教会の布教聖省(Congregatio de Propaganda Fide、現在の福音宣教省)の名称である[1]。ラテン語のpropagare(繁殖させる、種をまく)に由来する。 あらゆる宣伝や広告、広報活動、政治活動はプロパガンダに含まれ[1]、同義であるとも考えられている[2]。利益追求者(政治家・思想家・企業人など)や利益集団(国家・政党・企業・宗教団体など)、なかでも人々が支持しているということが自らの正当性であると主張する者にとって、支持を勝ち取り維持し続けるためのプロパガンダは重要なものとなる。対立者が存在する者にとってプロパガンダは武器の一つであり[3]、自勢力やその行動の支持を高めるプロパガンダのほかに、敵対勢力の支持を自らに向けるためのもの、または敵対勢力の支持やその行動を失墜させるためのプロパガンダも存在する。 本来のプロパガンダという語は中立的なものであるが、カトリック教会の宗教的なプロパガンダは、敵対勢力からは反感を持って語られるようになり、プロパガンダという語自体が軽蔑的に扱われ、「嘘、歪曲、情報操作、心理操作」と同義と見るようになった[1]。このため、ある団体が対立する団体の行動・広告などを「プロパガンダである」と主張すること自体もプロパガンダたりうる。 またプロパガンダを思想用語として用い、積極的に利用したウラジーミル・レーニンとソビエト連邦や、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)とナチス・ドイツにおいては、情報統制と組み合わせた大規模なプロパガンダが行われるようになった[注釈 1]。そのため西側諸国ではプロパガンダという言葉を一種の反民主主義的な価値を内包する言葉として利用されることもあるが、実際にはあらゆる国でプロパガンダは用いられており[1]、一方で国家に反対する人々もプロパガンダを用いている[4]。あらゆる政治的権力がプロパガンダを必要としている[5]。 なお、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)は、戦争や人種差別を扇動するあらゆるプロパガンダを法律で禁止することを締約国に求めている[6]。 報酬の有無を問わず、プロパガンダを行う人々を「プロパガンディスト(propagandist)」と呼ぶ[7]。 プロパガンダには大別して以下の分類が存在する。ホワイトプロパガンダの例。痴漢の撲滅を目的とした大阪府警による中吊り広告。 アメリカ合衆国の宣伝分析研究所
概要
観念
プロパガンダの種類
ホワイトプロパガンダ
情報の発信元がはっきりしており、事実に基づく情報で構成されたプロパガンダ[1]。
ブラックプロパガンダ
情報の発信元を偽ったり、虚偽や誇張が含まれるプロパガンダ[1]。
グレープロパガンダ
発信元が曖昧であったり、真実かどうか不明なプロパガンダ[1]。
コーポレートプロパガンダ
企業が自らの利益のために行うプロパガンダ。
カウンタープロパガンダ
敵のプロパガンダに対抗するためのプロパガンダ[1]。
プロパガンダ技術
ネーム・コーリング攻撃対象をネガティブなイメージと結びつける[注釈 2]。恐怖に訴える論証
カードスタッキング自らの主張に都合のいい事柄を強調し、都合の悪い事柄を隠蔽、または捏造だと強調する。
バンドワゴンその事柄が世の中の趨勢であるように宣伝する[注釈 3]。衆人に訴える論証
証言利用「信憑性がある」とされる人に語らせることで、自らの主張に説得性を高めようとする。権威に訴える論証
平凡化その考えのメリットを、民衆のメリットと結びつける。
転移何かの威信や非難を別のものに持ち込む[注釈 4]。
華麗な言葉による普遍化対象となるものを、普遍的や道徳的と考えられている言葉と結びつける。
また、ロバート・チャルディーニ(英語版)は、人がなぜ動かされるかと言うことを分析し、6つの説得のポイントをあげている。これは、プロパガンダの発信者が対象に対して利用すると、大きな効果を発する[9]。
返報性人は「利益が得られる」という意見に従いやすい。
コミットメントと一貫性人は自らの意見を明確に発言すると、その意見に合致した要請に同意しやすくなる。
また意見の一貫性を保つことで、社会的信用を得られると考えるようになる。
社会的証明自らの意見が曖昧な時は、人は他の人々の行動に目を向ける。
好意人は自分が好意を持っている人物の要請には「YES」という可能性が高まる。ハロー効果
権威人は対象者の「肩書き、服装、装飾品」などの権威に服従しやすい傾向がある。
希少性人は機会を失いかけると、その機会を価値のあるものであるとみなしがちになる。
ウィスコンシン大学広告学部で初代学部長を務めたW・D・スコットは、次の6つの広告原則をあげている[10]。