プログラマブルロジックコントローラ
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満タンかどうかのスイッチだけで判断しないのは、少しずつ水を使うような状況でスイッチがひとつだけだと頻繁にバルブの開閉が行われて機械が消耗するのを避けるためである(そのような状態をフラッターと呼ぶ)。

アナログシステムではタンクの重さを測定する重量計と流量を制御できるバルブを使う。PLCは PID フィードバックループ(後述)を使ってバルブを制御する。重量計はPLCのアナログ入力に接続され、バルブはPLCのアナログ出力に接続される。このシステムではタンク内の水量が少ないほどバルブを大きく開けて素早く水を満タンにしようとする。水量が素早く減っている場合、バルブも大きく開けられる。ほんの少しだけ水が使われている場合、バルブは少しだけ開けられ、ゆっくりとタンクに水を入れる。

このシステムでバルブのフラッター状態を防ぐために、こういった制御装置では不感帯(デッドバンド)が設けられる。つまり、水の減り具合の変化がある閾値より下ならバルブを開閉しないようにする。そうすることでバルブの動作が最適化され、消耗を防ぐことができる。

実際のシステムは両方を結合して使用するかもしれない。デジタル信号を水があふれるのを防ぐために使用し、水量をなるべく一定に保つためにアナログ信号を使う。さらにバックアップや保守状態を考慮することで実際のシステムは複雑化していく。
PLC の形態による I/O 能力:モジュール、ラック、P2P

モジュール型のPLCは組み込まれる入出力の数が限られている。一般に、基本モデルの入出力数で足りなければ拡張機構を使う。

ラック型のPLCはプロセッサモジュールと分離したI/Oモジュールになっていることが多い。場合によってはI/Oモジュールが多数のラックから構成されることもある。その場合、数千の(離散あるいはアナログの)入出力を持つ。プロセッサとI/Oモジュールの間は高速シリアルリンクで接続されるので、離れていてもよく、大規模工場で配線コストを低減させるのに役立つ。

さらに大規模な入出力システムが必要な場合、プロセッサ間をP2Pの通信システムで接続する。これにより、大きなシステムを分割して制御し、かつ全体として通信して協調動作させることができる。この通信リンクはヒューマンマシンインタフェース機器(キーパッドやPC)を接続するのにも使用可能である。

一般に入力数は出力数の三倍必要といわれている。センサーなどの故障に備えて入力を冗長化することが多いためである。
プログラミング

PLCのプログラムはパーソナルコンピュータ上の特別なアプリケーションで作成し、PLCにダウンロードする。単純なものは現場で作ることも多い。以前はプログラム専用のハードウェアを使用していたがノートパソコン等の発達によりほとんど見られなくなった。プログラムはPLC毎にバッテリーバックアップされたRAMや不揮発性のメモリ(フラッシュメモリ)に格納される。ひとつのPLCで数千のリレーを置換するようプログラムすることもできる[4]

初期のPLCは電気技術者が使うことを想定して設計され、彼らは業務で使用するうちにPLCのプログラミングを学んだ。専用のプログラミング用パネルや端末があり、PLCプログラムの各種論理要素に対応したファンクションキーが並んでいた[5]。その後PLCはリレー回路の配線に対応するようになっているラダー論理でプログラムされるようになった。最近のPLCはラダー論理だけでなくBASICやC言語を使ってプログラムすることもできる。また、状態遷移図に基づいてPLCのプログラミングをする方式もある。ただし、高級言語で複雑なプログラムを組む際は、ライブラリ(サブルーチン)の内容を理解していないと、本来組み込むべき引数などの定義や多重化の限度数などの誤りを認識できず、ライブラリーから帰ってくる結果を利用する分岐プロセスで重大なエラーを起こすことがある。(通常はコンパイル時にエラーが発生し作成者に注意を促すが、スタックポインターなどの内容は、プログラム作成時、意識しないことが多く、特に注意が必要である)

最近では、国際標準規格 IEC 61131-3 が一般的になっている。それによると、5種類のプログラミング言語が定義されている。FBD(ファンクション・ブロック・ダイアグラム)・LD(ラダー図)・ST(ストラクチャード・テキストPascal型の言語)・IL(命令リスト、アセンブリ言語風)そしてSFC(Sequential Function Chart;シーケンシャル・ファンクション・チャート)である[6]。これらの技法は処理の論理構成を明確にするものである[4]
PID ループ

PLC には単一変数汎用工業フィードバックループ、つまりPIDコントローラ(比例(proportional), 積分(integral), 微分(derivative)ループ)が含まれることもある。PIDループは工業プロセス制御では一般的な方式である。PIDループは水泳用プールのpH値の制御にも使われる。
ユーザインタフェース

PLC は場合によっては、設定変更や警報表示や定時制御のために人間とやりとりする必要がある。ヒューマンマシンインタフェースがそのために使われる。単純なシステムではボタンとライトでやりとりする。テキスト表示やグラフィック表示の可能なタッチスクリーン(プログラマブル表示器)も使われることが多い。最新のPLCではネットワーク経由で他のシステム(例えば、SCADAシステムやWebブラウザが動作しているコンピュータ)とやりとりすることができる。
歴史

PLC はアメリカ自動車産業での必要性から開発されたものである。PLC が登場する以前、自動車製造における制御回路、シーケンス回路、連動回路はリレーやタイマーや独立した閉ループ・コントローラを使って構成されていた。そのような装置を毎年のようにあるモデルチェンジの度に変更・修正するのは非常に時間と手間のかかるプロセスである。というのもリレー回路の配線を変更するのは熟練した技術者でなければ出来なかったからである。

デジタルコンピュータが登場すると、汎用のプログラム可能デバイスとして製造工程の制御にも応用する動きが見られるようになった。初期のコンピュータはプログラミングの専門家と、温度や周辺の空気のきれいさや電力品質などの面で厳格な環境管理を必要としていた。産業用制御コンピュータにはいくつかの属性が求められる。まず、製造現場の環境で動作可能でなければならない。また、容易に拡張可能な方法で離散的入出力をサポートする必要がある。使用するのに何年もの訓練を要するようでは、使いものにならない。動作状況を監視できるようになっている必要がある。制御するのに十分な反応速度も要求されるが、工程の性質によって必要とされる反応速度は異なる[7]

1968年、ゼネラルモータースのオートマチックトランスミッション製造部門(Hydramatic)はリレーシステムを電子的に置換するための要求仕様を作成した。


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