プラネタリウム
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日本国産として最初に開発されたプラネタリウムは、1958年に、千代田光学精工(株)(のちのコニカミノルタ)が市井の発明家・信岡正典が開発したプラネタリウムを甲子園阪神パークで開催された科学博に出展。この投影機はそのまま常設され、その後福岡、広島などにも設置されていった。

一方、五藤光学研究所1959年に製作したM-I型投影機(当時の価格で約800万円)である。この投影機は静岡県清水市(のちの静岡市清水区)の富士観センターや東京・浅草公園六区の新世界ビルなどに設置され、うち1台は1960年ニューヨークの国際見本市に出品、見本市終了後にコネチカット州のブリッジポート博物館へ販売され、1962年に一般公開された。

現在[いつ?]、五藤光学研究所とコニカミノルタプラネタリウムは、2社を合わせて世界のプラネタリウムの半数近いシェアを抱えるトップメーカーとなっている。

また、大平貴之が個人で製作し、1998年にロンドンで初公開されたメガスターは、従来比100倍に相当する投影恒星数150万個を再現し、世界のプラネタリウム専門家を驚かせた。その後、本人により設立された大平技研によって開発・運用されているメガスターIIは、恒星投影数約500万個(12.5等星まで)に拡張され、日本科学未来館川崎市青少年科学館などに設置されて話題となった。さらに2008年6月シカゴで行われたIPS(国際プラネタリウム協会)大会で初めて発表されたスーパーメガスターIIは、約2200万個(13等星まで)の恒星を投影することが可能である。2012年7月7日に投影を開始した東京の多摩六都科学館のプラネタリウム(五藤光学研究所製、直径27.5m)は世界最多の1億4,000万個の恒星を投影する。

2006年現在、プラネタリウムを最も多く保有している国はアメリカで約1200基、その次に日本の約300基が続いている。

投影用のドームとしては、2011年3月名古屋市科学館に新設された直径35メートルのものが世界最大である。2021年3月まではネーミングライツスポンサーのブラザー工業により「ブラザーアース」という名称が使われていたが、ネーミングライツスポンサーがNTP名古屋トヨペットに代わった2021年4月からは「NTPぷらねっと」という名称が使われている[8]
投影される内容

主に季節毎の星空を、星空にまつわる話を交えて投影することが多い。投影機で星を投影する以外にも、OHPスライドプロジェクタなどを利用してドーム内に絵を映し出すなど、話の進め方にもさまざまな工夫を凝らしている。また、流星群日食彗星の接近などの天文イベントがある場合は、それらの話題も加わることが多い。施設によってはアニメーションの上映や、CDや生演奏での演奏会といった天文学習ではない「癒し」を目的としたイベント、実際の天体観測とリンクしたイベントなど、投影の仕方も多彩になっている。投影される内容は「番組」と呼ばれ、プラネタリウム番組専門の製作・供給会社が製作したもののほかに、各施設の職員が投影する番組を自ら作成する「お手製番組」がある。投影方法自体も、あらかじめプログラムした内容で投影機を自動で作動させ、自動的に投影する方法(俗にオート番組と呼ばれる)と、オペレーターがその場で解説を行い、それに併せて投影機も手動(もしくは半自動)で操作するという投影方法(俗に生番組と呼ばれる)、あるいは両者の組み合わせなど、各施設で特色のある内容となっている。
構造
主投影機

電球の光を使って星像を投影する光学式、ビデオプロジェクターを使ってドーム全面に映像を投影するデジタル式、その両方を取り入れたハイブリッド式に大まかに分類される。
光学式投影機光学二球式投影機の一例(カール・ツァイスZKP2)。中央部に水平に配置されている緯度軸から惑星棚→恒星球と並んでいるツァイス型の構造がわかる。

恒星球と呼ばれる球形または半球形の恒星投影機の中心に光源となる電球(主にハロゲンランプメタルハライドランプが用いられるが、近年では白色の高輝度LEDも用いられる)を設置し、その光を恒星の光に見立ててドーム内に投影する方式。恒星球の構造により、ピンホール式とレンズ式に大別される。また形状により、緯度軸を中心に恒星球が北半球用と南半球用とそれぞれ独立して存在する二球式と、北半球用・南半球用の恒星球を合わせてひとつの球形(またはほぼ球形)とした一球式に大別される。二球式はさらに、主にカール・ツァイスやコニカミノルタプラネタリウムが採用する緯度軸を中心として緯度軸→惑星投影機群(惑星棚と呼ぶ)→恒星球という順で構成されるツァイス型と、主に五藤光学研究所が採用する緯度軸→恒星球→惑星棚という順で構成されるモリソン型とに区別される(なお、五藤光学研究所のGSS-IおよびGSS-IIは惑星投影機群が独立して設置されているが、惑星棚を廃止したモリソン型である)。近年では、大型の二球式投影機は投影機本体により観客の視野が遮られてしまうことから減少傾向にある。

光学式における天体の運動は日周運動方位緯度歳差の4軸で制御される。ただし、歳差軸は一球式の場合省略されることがある。歳差軸を省略した場合は、歳差によって天の北極(南極)が移動した場合の日周運動を仮想軸を使って再現する。また、地平線下に恒星が投影されないように、主投影機には恒星シャッターが設けられている。恒星シャッターは重力式とXY制御式の2種類あるが、ドームが水平式の場合は重力式、傾斜式の場合はXY制御式を用いる(ドームの形式については後述)。また主投影機本体には恒星シャッターを設けず、恒星球をすだれ形シャッターで覆う方式をコニカミノルタプラネタリウムが採用している。ピンホール式投影機の一例(五藤光学研究所EX-3)。
ピンホール式投影機
球状もしくは多角形の恒星球に、投影する恒星の等級に応じた穴をあけた構造。光源となる電球のフィラメントが回折して星像に悪影響を与えるので光源はできるだけ無指向、点光源に近く恒星球は大きいほどシャープな星像を得られる。構造が単純なため、中学校や高校などの学校教材として用いられるほか、アマチュアの天文サークルや個人によって自作されることも多い。アマチュア用だけでなく、アメリカのスピッツ社の大型ピンホール式投影機は全米各地の教育施設に納入されているほか、フランスのラ・ヴィレット公園にあるシテ科学産業博物館でも使用されている(明るい星はレンズで投影)。


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