ブーベ島
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1808年、イギリス・ロンドンの捕鯨会社サミュエル・エンダービー社 (Samuel Enderby & Sons) の捕鯨船 Snow Swan の船長ジェームズ・リンゼイ (James Lindsay) によって島が発見された。リンゼイは島への上陸は行わなかったが、正確な位置の報告を行った。リンゼイが発見した島は、甚だしく誤った位置で報告されたブーヴェの島と別の島と考えられ、当初はリンゼイ島とも呼ばれていた。「リンゼイ島」と「ブーベ島」が同一の島であったとされるのはのちのことであり、しばらくは島の同定が困難な時期が続く。

アメリカの探検家ベンジャミン・モレルは、1822年に島に上陸してアザラシを狩ったと主張しているが、疑わしい。この島に「ブーベ島」の名を与えたのはモレルとされる[3]1825年12月10日、サミュエル・エンダービー社の捕鯨船 Sprightly と Lively を率いたジョージ・ノリス (George Norris) が島に上陸し、この島をリバプール島 (Liverpool Island) と命名、イギリスの国王に属するものと宣言した。しかしながら、ノリスは「リバプール島」がすでに発見された島であることを知らなかった。また、ノリスはこの島の付近に「トンプソン島」を「発見」しているが、今日では実在しない島と結論付けられている。1898年にはドイツの Valdivia 探検隊を率いたカール・チュン (Carl Chun) が島を訪れたが、上陸はしていない。
ノルウェーによる領有以後1927年、ノルウェー隊の上陸

1927年、ノルウェーの船 Norvegia の乗組員が上陸して小屋を建設し、数か月間生活した。このことが「先占」の実績であるとして、ノルウェー隊の隊長であるラース・クリステンセン (Lars Christensen (explorer)) は1927年12月1日にこの島がノルウェー領であると主張。1928年1月23日、ノルウェー王の裁可を経てブーベ島(ノルウェー語: Bouvetoya)はノルウェーの領域に編入された。

イギリスはノルウェーの主張を認めて請求権を放棄。1930年にノルウェーの法律が成立し、ノルウェー王国の主権下の「属領」となった(王国の一部ではない)。しかしドイツの南極探検隊が1939年に立ち寄っている。

1950年代から1960年代にかけて、南アフリカ政府から気象観測拠点としての関心が寄せられたが、あまりにも厳しい気象条件のために断念されている。1971年、ブーベ島とその領海は自然保護区に指定された。1977年にはノルウェーによって無人の気象観測拠点が設置された。

1979年9月22日、アメリカの人工衛星ヴェラが、ブーベ島とプリンスエドワード諸島の間で大規模な核爆発のような閃光を観測した(ヴェラ事件)。南アフリカ共和国の核実験ではないかという説があるが、原因はよくわかっていない[4]

1996年、ノルウェーは38立方メートルのコンテナによるフィールド・ステーションを建設した。2007年10月19日、ノルウェー極地研究所 (Norwegian Polar Institute) は、フィールド・ステーションが衛星写真で確認できなくなったと報告した。のちの調査によって、氷の地すべりか雪崩によって建物が押し流されたと判明した。2012年12月、新たなフィールド・ステーションが建設された[5]。なお、無人気象観測拠点はダメージを受けていない。
行政

ブーベ島はノルウェーの属領ノルウェー語: biland)であり、法務・警察省 (Ministry of Justice and the Police (Norway)) の極地局が管轄している。

南極とその周辺において、ノルウェーが属領として領有権の主張を行っている地域としては、ほかに南極大陸のドロンニング・モード・ランド(クイーン・モード・ランド)とピョートル1世島がある。これらの地域は南極条約によって領土主権・請求権が凍結されている。ブーベ島は南緯60度以北にあるために南極条約の対象とはなっていない。

ノルウェーの持つ同種の「本土以外の領土」としては、北極海にスヴァールバル諸島ヤンマイエン島があるが、これらは属領ではなく、本国の一部とされている。

ISO 3166では、国に準ずる地域として国名コードが設定されており、2文字コードで BV 、3文字コードで BVT が割り当てられている。下位行政区分コードの規格として ISO 3166-2:BV があるが、これに対応する割り当ては行われていない。

エディンバラ動物園のオウサマペンギンであるニルス・オラフ3世少将はブーベ島男爵の称号を持っている[6]
通信

ブーベ島への電話衛星回線に限られ、国際電話コードの割り当てはない。また、郵便番号もない。

インターネット国別コードトップレベルドメインは、原則として国名コード (ISO 3166) によって設定されているため、ブーベ島には .bv が割り当てられている。ただし、現在は使用されていない。

アマチュア無線コールサインとして、ノルウェーの通信当局はブーベ島に 3Y のプリフィックスを割り当てており、アメリカ無線中継連盟(ARRL)が作成したDXCCのリストでは、ブーベ島は独立した地域(エンティティ)として扱われている。ごく希に学術調査員などが免許を得て運用したことがある程度で、他のエンティティとの交信を全て成功させたベテランでも交信を目標としているほど[7]交信が困難なエンティティである[8]

3Y5Xのコールサインで行なわれた1989年年末?1990年にかけて2週間程度の移動運用(DXペディション)は、日本からも多くのアマチュア局が交信に成功し、夕方のTVニュースでも報じられた。
自然・環境
気候

この島は南極収束点の南に位置しているが、海洋性気候となっている。月ごとの最高平均気温は、年間を通してほとんど変動しない。

このような厳しい気候条件ではあるが、ブーベ島は実際には北緯 58 度に位置するノルウェー最南端よりも赤道に 4 度近い緯度に位置していいる。その緯度は、スカンジナビアに例えると、むしろデンマーク南部に近い。

ブーベ島の気候
月1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年
平均最高気温 °C (°F)3


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