ブレードランナー
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いつ、どのような経緯でそのように呼ばれるようになったかは判然としていないが、日本では1983年の初公開時の映画パンフレットにおいて「ブラスター」の名称[注釈 28]で解説されたため、それ以降、この銃はそのように呼称されるようになった[注釈 29]。一介の小道具であるにもかかわらず高い人気を博し、作品の公開後、数多くのプロップレプリカやモデルガンが製作されることになる。

本作品に登場するオリジナルデザインの品々の中で、この「ブラスター」はシド・ミードのデザインではない。当初彼がデザインしたモデルは前衛的に過ぎ、本作品の状況設定にそぐわず採用は見送られ[注釈 30]、新たにCOP .357を基にしたデザインがアシスタントアートディレクターであるスティーブン・デーンにより描き起こされたが[61]、これも採用されなかった[62][63]
なお、リオンがホールデンを撃つシーンで使われているプロップガンは、本来はデーンによるデザインに基づいて改造するために用意された銃を、ほぼそのまま使用したものである。

改めてプロップを製作するにあたり、まず参考にされたのが、映画『マッドマックス』で主人公の使う、「ソードオフ」と呼ばれる二連銃身の短縮型散弾銃である[64]。しかし、前述の「フィリップ・マーロウ的な探偵の物語(ハードボイルド)」の作風に合わせて、拳銃前提という制約があった。実在の銃器をそのまま、もしくは多少の改造を加えて使うという妥協案も出されたが、実際に使用されたものは美術部が現物合わせでプロップを制作したもので、オーストリア製のライフルの機関部をリボルバーと合体させた上に、電飾加工を施したものである[65][66]。ウィキメディア・コモンズには、ブラスター(ブレードランナー)に関連するメディアがあります。

リオンの用いた銃として使われたCOP .357

作中で用いられた“デッカードブラスター”のレプリカモデル
(日本製のもの)

ロケーション

作品の象徴でもある、日本語で書かれた看板やネオンサインが並び、多国籍の人々が行き交う未来都市の街頭は、ワーナー・ブラザースバーバンクスタジオにある「オールド・ニューヨーク・ストリート」と呼ばれるオープンセットを大規模に改装して作られたセットである[67]。「リドリーヴィル(Ridleyville)」のニックネームが付けられていたこのセットには、地上6mの地点に7基の散水装置が設置されており[68]、作品を代表するイメージの一つである「絶え間なく降り続ける酸性雨」を表現するために用いられた。これに撮影後の合成処理で超高層ビルその他を描き加え、2019年の近未来都市が作り上げられた。

その他のシーンは基本的にはロサンゼルスにある著名な建造物、もしくはスタジオセットで撮影し、撮影後に合成等の処理を施したもので、登場した建造物は2016年現在でも存在している。
警察署
ユニオン駅の駅舎内部

ロサンゼルス・ユニオン駅で撮影された[69]。駅舎内を署内として使用し、舎内一角にセットを組み、ブライアントのオフィスとしている[69]。現役で使用されている建物のため、使用できるのは営業外の夜から翌朝にかけての深夜に限定され、急いでセットを組み上げ撮影準備を完了させてから引き払い期限の午前6時までの間、純粋な撮影時間は1日あたりわずか10分程度しかなかったという[70]

なお、ブライアントがデッカードにレプリカントのプロフィールを説明しているシーンは、スタジオセット内で撮影されている[71]
トンネル
セカンドストリートトンネル

劇中で複数回登場した白い内壁のトンネルは、ロサンゼルスのダウンタウンにあるセカンドストリート・トンネル(英語版)である[72]

内壁を白い陶製のタイルで装飾したことで知られるこのトンネルは、他にも多くの映画に登場している。
デッカードの自宅
エニス邸外観

デッカードの自宅シーンに使用されたのは、ロサンゼルス郊外にある邸宅、エニス邸(英語版)である。1923年に建設された、フランク・ロイド・ライトの設計による「テキスタイル・ブロック住宅」の一つで、マヤ文明の遺跡をイメージした造形の施されたコンクリートブロック壁が特徴になっており、アメリカ合衆国国家歴史登録財に指定されている。実際のエニス邸は低層平屋の構造であり、郊外の高台に位置しているが、作品では合成を駆使して街中にある高層ビルに見えるように構成されている[73]

エニス邸は後のスコットの監督作『ブラック・レイン』においても、ヤクザの親分のスガイ邸として使われている。
セバスチャンのアパート

J・F・セバスチャンが住むアパートとして使用されたのは、ロサンゼルスのダウンタウンにあるブラッドベリ・ビルディング(英語版)である。1893年に建設され、アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されている。映画やTVドラマのロケ地としても有名で、他のロケーションと同様、様々な作品に登場している[74]

作中の設定ではデッカードのアパート等と同じく超高層ビルということになっているため、外観や屋上のシーン等は合成処理で高層建築に見えるように加工されているが、内部は演出上の装飾として荒れた雰囲気に飾り付けられた以外は、玄関として映る部分をビルの北西側エントランスにセットの柱を付け足して作り変えた他は元のまま用いられている。内部が吹き抜けになっていることや、吹き抜け部分の天井がガラス張りになっていること、内廊下の外周にオープンケージタイプのエレベーターがあることも元のままであり、床や壁、手摺の装飾といったものもオリジナルのまま用いられた。

撮影に使用された際もオフィスビルとして現役で使用されており、本作の撮影は営業時間外に行われた。映画製作に使用できるのは午後6時から翌日の午前6時の間に限られ、美術設定に従って各種の装飾とウェザリングを施した後に本編の撮影を行い、使用期限の前に撮影を切り上げて装飾を撤去し施した汚し塗装を清掃、使用前の状態に戻して撤収する、というハードスケジュールが連日繰り返された。

なお、セバスチャンの部屋の内部や、デッカードとバッティの戦いの舞台となる室内部分はスタジオにセットを組んで撮影されており、デッカードが壁沿いを伝って移動するシーンや屋上でのクライマックスシーンは、ブラッドベリ・ビルの上部3階層を再現した屋外セットが作られてそこで撮影され、合成処理が施されている[75]

ブラッドベリ・ビル外観
(2005年の撮影)

ブラッドベリ・ビル内観

北西側エントランス

その他
ミリオンダラーシアターの入場口
画像は2012年5月に撮影されたもので、当時とは異なる

セバスチャンのアパートの玄関のシーンで後方に見える派手なネオンサインの看板は、ブラッドベリ・ビルからブロードウェイ・ストリートを挟んで向かいにある劇場、ミリオンダラー・シアター(英語版)の入場口である[注釈 31]。ミリオンダラー・シアターではロサンゼルス歴史建造物保存協会主催の「ブレードランナー有料上映会」が2013年3月23日に一度だけ開催された。

リオンが宿泊していた「ユーコンホテル(YUKON HOTEL)」は、外観は美術スタッフの製作したミニチュアだが(このミニチュアは看板の文字を「NUYOK」と組み替えて別のシーンでも使われている[77])、内部はブラッドベリ・ビルの交差点を挟んで北側の斜め向かいにある、パンアメリカン・ロフトビル(PanAmerican Loft Building)で撮影された[78]

ハンニバル・チュウの工房は、外観はスタジオセットであるが、内部はカリフォルニア州ヴァーノンにあった食肉会社の冷凍倉庫を借りてセットを組み、実際にマイナス21度の環境として酷寒の中で撮影が行われた[79]。セットを組み終わった後、実物の霜が張り氷柱が垂れている環境を作るために4日間を要し[79]、予算の圧縮のために5日間が予定されていた撮影期間を2日間に短縮して行われた[80]
公開・反響

1982年6月25日に全米公開され、週末興行収入成績は初登場第2位(同年6月25日-27日付)を記録したが、2週間前に公開され大ヒットしていた『E.T.』などの影響などもあり、興行的にも同作の約7900万ドル[81]に対して約3380万ドル[82]と振るわなかった(皮肉にも『E.T.』の脚本を担当したのは、フォードが当時交際し、本作公開の翌年に結婚したメリッサ・マシスンである)。


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