ブレードランナー
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この他、撮影所の倉庫の隅に保管されていた1960年代の中古車があり、それらは他の映画の撮影に際して様々な装飾が施されていたものだが、これらも「エキストラ」として渋滞の列に並ぶ車として用いられている[45][注釈 21]
スピナー

「スピナー(Spinner)」は、劇中に登場する架空の飛行車の総称である。

通常の自動車と同じく、地上を走行することができるだけではなく、垂直に離着陸することができ、垂直離着陸機と同様のジェット推進装置を使用して浮上し、そのまま空中を飛行することができる。作中では主に警察パトカーとして使用しているが、裕福な人々はスピナーのライセンスを取得することができる、と設定されており[46]、警察用以外にも複数種類のスピナーが登場する[注釈 22]

この架空の車両は、ミードによって「揚力を得るために空気を直接下方に噴射することによって飛行する」機構を持つ、という「エアロダイン(Aerodyne)」という名称のメカニクスとして考案され、デザインされた(ただし、映画公開時の広報用資料では、スピナーは「従来の内燃機関ジェットエンジンに加え、反重力エンジンという3つのエンジンによって推進されている」と記述されている[47])。
ポリススピナー

作中に登場したスピナーのうち、パトカーとして登場したものは“ポリススピナー”と通称されており、「映画『ブレードランナー』に登場した架空のメカニクス」としての“スピナー”といった場合、まずこれを指すことが多い。

ポリススピナーは各種サイズの複数のミニチュアと実物大のプロップ劇用車)が4台製作された[48]。なお、スピナーには左側面にレーザーガンとの設定がある武装が装備されたタイプがあるが(シド・ミードによるコンセプトデザインにも描かれている[49])、この通称“レーザースピナー”はミニチュアモデルしか製作されていない[50]

4台の実物大プロップの製作は「空を飛ばない」自動車と同じくジーン・ウィンフィールドと彼のチームが担当した。4台の内訳は、フォルクスワーゲン・ビートルのシャーシとエンジンを流用して作られた、実際に自走できる劇用車が2台、車内とコクピット周辺のみが製作された、車内シーンの撮影用モデルが1台、軽量アルミニウムで製作され、ジェット噴射のギミックが内蔵されているが自走能力はなく、クレーンで吊り下げて低空飛行および離着陸シーンを撮影するために用いられた、通称“フライングスピナー”が1台である。なお、車内シーン用のモデルはスピナーの他“デッカードセダン”の車内としても使用された[51]

映画の撮影が終了した後、これらのプロップは映画の宣伝に使用され[注釈 23]、その後は他のSF映画に使用された[注釈 24]後に処分・売却された。
自走可能なプロップのうち1台はパトロールカー・セダンと共にフロリダ州オーランドMGMスタジオで屋外展示品とされ[注釈 25]、劣化が進んだこともあり、1990年代の末に処分された[52]。自走可能なプロップのもう1台は、映画撮影用車両会社の間を転々とした後、1990年代初頭にオークションへの出品を経て日本のコレクターに売却された[53]。この車両は『ブレードランナー』撮影後に他の映画の撮影に用いられた際に塗装や細部に変更が加えられているが、オリジナルの状態を比較的保った形で現存している[54]。個人蔵ということもあり、時折『ブレードランナー』関連のイベント等に展示される(一部のパーツのみが展示された例もある)他には一般公開はされておらず、「ポリススピナーの実物大プロップのうち1台が日本に現存している」とマニアの間で語られるのみの存在となっていたが、2017年よりは後述の“フライング・スピナー”同様にプロップを製作したウィンフィールドを交えたレストアの計画が進められ、2019年に入りメディアに現存が公表され、その詳細が紹介されている[54][55]

飛行シーン撮影用の“フライング・スピナー”は1990年代初頭に「デッカード・セダン」と共にフロリダ州のアメリカ警察殿堂博物館(英語版)(American Police Hall of Fame & Museum)に売却されたが、1992年、輸送中に大破し、部品状態で売却された。その後は不完全な修理が施されたまま宣伝用の展示品とされ、1999年には再び売却された[53]
21世紀に入り、2003年12月12日に開催されたオークションに出展され、マイクロソフトの創設者の一人、ポール・アレンが落札した。落札時にはオリジナルの状態を大きく損っていたが、ウィンフィールドの工房にレストアが依頼され、2004年6月に完了、アレンが開設したシアトルのSF博物館(英語版)(Science Fiction Museum & Hall of Fame)に搬入され[56]、同博物館の目玉展示品の一つとして常設展示されている[57][58]

また、ロサンゼルスにあるピーターセン自動車博物館(英語版)(Petersen Automotive Museum)にはレプリカが展示されている[59]

エッセンモーターショーで展示されたポリススピナー
1983年の撮影

SF博物館に展示されているポリススピナー
(2012年7月20日撮影)

上方より撮影したポリススピナー 並列に配置された座席のある操縦室がわかる
SF博物館の展示品、2007年7月22日撮影

ピーターセン自動車博物館に展示されているポリススピナーのレプリカ
(2019年5月18日撮影)
.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、スピナー(ブレードランナー)に関連するメディアがあります。
ブラスター

スピナーと並んで本作品を語る上で重要な小道具として、デッカード他が使用した架空の拳銃がある。劇中に登場したものは2種類あり、冒頭でリオンがホールデンを撃つシーンで使われた「ブラックホール・ガン」の仮称で考案された、COP社の4連装小型拳銃COP .357をそのまま使用したものと、後に「デッカード・ブラスター」と通称されるようになった、ライフルリボルバーを合わせて改造したプロップガンがある。詳細は「デッカードブラスター」を参照
ブラックホール・ガン

映画の製作にあたり、スコットは従来のSF映画でよく用いられた「明るい光線を発射するレーザー・ピストル」を避けたいと考えており、それに代わる全く新しい表現を求めていた。これに対し、特殊効果監修のデヴィッド・ドライヤーが考案したものが、「ブラックホール・ガン」であった[60]

これは「強力な分子破壊ビームを発射し、命中箇所を分子レベルで破壊する」というもので、画面上ではまったく光を発しない「黒いビーム(Black beam)」が銃から目標に発射され、命中すると目標は消滅する、という表現が考案された。これは、派手な血飛沫や出血を描く必要がない、という点でも良案とされた[注釈 26]

しかし、冒頭でリオンがホールデンを銃撃するシーンにおいて、特殊効果を挿入したカットを試験的に制作したところ、「ただの暗い筋にしか見えず、劇的効果が得られない」と判断され、このアイディアは他のシーンでは用いられなかった[注釈 27]
デッカードブラスター

主人公のデッカードらが使っている銃については、公式な命名がなされていない。いつ、どのような経緯でそのように呼ばれるようになったかは判然としていないが、日本では1983年の初公開時の映画パンフレットにおいて「ブラスター」の名称[注釈 28]で解説されたため、それ以降、この銃はそのように呼称されるようになった[注釈 29]


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