ブレンパワード
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本作を「リハビリ」と公言した通り、富野自身の再生の過程でもあり、それまでの富野作品に見られたような殺伐とした雰囲気や残酷な描写は極力抑えられ、美しい自然を基調とした作風が本作の特徴の一つとなっており、この牧歌的な作風は『∀ガンダム』、『OVERMANキングゲイナー』へ受け継がれていく。放送期間と話数が合わないのはWOWOWの都合ではなく、製作したサンライズ第1スタジオと富野側の都合で、週1放送のペースに間に合わないことがあったからである。

ロボットデザインには『ファイブスター物語』の作者で『重戦機エルガイム』、『機動戦士Ζガンダム』といった富野作品でデザインを担当していた永野護を起用した。一方、キャラクターデザインには、いのまたむつみを起用。永野・いのまたが「メインデザイン」と連名になっているのは、「人物もメカもひっくるめてキャラクターであるわけだし、両方とも描ける人間が本来のデザイナーだと思う。だから、今のデザイナー志望の若い人には『専門のデザイナー』を目指すのは間違いだと言いたい」という永野の意向によるものである。永野はデザイナーとしての作業に専念して、演出・脚本には全く意見を挟まなかった。サンライズ・スポンサーからは「自由にやっていい」と言われたので、永野は「正に好き勝手にデザインした」と振り返っている[2]。富野は、いのまたの描くような「大きな眼」のキャラクターが苦手であり、アニメーションデザインを担当した重田敦司にも眼を小さく描くように指示を出している。

オープニングは主人公が登場せず、メカも主役機においてすら僅かに1カット登場するのみであり、それに代わってメインに描写されているものは作品に登場する女性キャラクター(比瑪、カナン、ヒギンズ、コモド、アイリーン、クインシィ、シラーの7人)たちの裸体となっている。エンディングもまた写真家荒木経惟による植物の写真が映されるという、当時としてはユニークな構成となっている。それには富野由悠季が荒木経惟の作品や撮影スタイルに感銘を受けた上で、彼に会いたいという願望もあったという経緯がある。アイキャッチは長めで、リバイバルするプレートに登場人物の顔が次々と浮かび上がるというものである。アニメ技術的には、過去の富野作品・サンライズ作品、また、ロボットアニメで多用されていたストロボがほとんど使用されていないことが、特徴の一つである。

全般的に多彩な女性キャラクターたちが物語の主役であり、祖母、母、姉、妻といった女性の役割と、「女」としての自我が生み出す葛藤に苦しむ姿が如実に描かれている。各キャラクターは富野の過去作のそれに比べ、ほとんどの者が生還している。また、直子とゲイブリッジ、翠とジョナサンなど、大人の恋愛を直接的な性描写なしに露骨に表現している。

放送時のキャッチコピーは「頼まれなくたって生きてやる」。

WOWOWの加入契約促進ポスターは「普通のテレビじゃ、ここまでやれない」。
あらすじ

自然災害で荒廃した近未来の地球。海底で発見された謎の巨大遺跡オルファンを巡って、世界は混乱と争いに見舞われていた。オルファンを浮上させて宇宙への進出を目論むリクレイマーは、オルファンに呼応して世界各地に出現したプレートをリバイバルさせることで巨大人型兵器グランチャーを産み出し、戦力の拡大を図っていた。リクレイマーを指導する伊佐未ファミリーの一人伊佐未勇は同僚のカナン・ギモスと共にプレート回収の任に当たっていた。その際、プレートのリバイバルが始まり、グランチャーの宿敵ブレンパワードが産み出される。たまたまそこに居合わせた孤児の少女宇都宮比瑪がブレンパワード(ヒメブレン)と心を通わせる様子を見て、勇はある決意を固める。

それから月日が流れ、浮上を開始したオルファンにより事態はいよいよ深刻化していた。くり返される地震と津波により沿岸の都市機能は麻痺し、人類の多くは難民となっていた。比瑪はヒメブレンと共に、リクレイマーに対抗すべく国連主導で建造された新鋭鑑ノヴィス・ノアの一員となっていた。そんな比瑪の前に、水色のブレンパワード(ユウブレン)に乗った勇が現れる。勇はオルファン内で廃棄されていたブレンパワードと心を通わせ、オルファンを出奔したのだった。勇は祖母直子も乗り込むノヴィス・ノアに迎え入れられ、勇を追ってきたカナンもまた加わる。だが、身内から裏切り者を出したことに憤る勇の姉クインシィ・イッサー(伊佐未依衣子)は、勇をライバル視するジョナサン・グレーンと共に、容赦なき追撃戦を繰り広げ、戦いは激化の一途を辿る。

人々の意思が様々に交錯する中、浮上を続けるオルファン。直子、翠、依衣子の3世代にわたる根深い確執により、身内同士で争うことになった伊佐未ファミリー。一方、生き別れの息子を思うアノーア・マコーミックノヴィス・ノア艦長と、母親の愛情を受けずに成人し歪んだ情念を抱くジョナサンの親子。2組の家族の人間模様を軸にしながら物語は展開する。
登場人物
ノヴィス・ノア
伊佐未 勇(いさみ ゆう)
声 -
白鳥哲[3]本作の主人公。オルファン内で家族と共に暮らしていたが、彼らの主張に疑問を持ち、密かに調整していたブレン(ユウ・ブレン)でオルファンを出奔した後、比瑪と接触したことがきっかけでノヴィス・ノアに居つき、部隊の主力となる。思春期と複雑な家庭環境から神経質で自己中心的な面があり、当初は周囲と馴染めなかった。比瑪やクマゾーたちの無邪気さに触れる中で落ち着き、家族内の対立という狭い問題から、人類と地球を救うという大きな問題に目を向けることができるようになる。リクレイマー時代にコンビを組んでいたカナンを説得してノヴィス・ノアに寝返らせるが、その後はジョナサンやシラー、クインシィといったかつての仲間や肉親との戦いを続けていく。比瑪との関係においては挨拶と称して自らキスするなど積極的な反面、なかなかうまくかみ合わず擦れ違うが、戦闘においては最高のパートナーとして能力を発揮する。ほとんど全編を通し、白いハイネックのシャツに青いジャケットというスタイル。
宇都宮 比瑪(うつみや ひめ)
声 - 村田秋乃[3]本作のヒロイン。天真爛漫な性格で誰からも愛される少女。ほとんど全員から「比瑪ちゃん」と呼ばれる。ブレンやオルファンのような無機生命体を人間同様に扱い、意思疎通ができる不思議な少女。孤児院でクマゾーらと暮らしていたが、ヒメ・ブレンのリバイバルに立ち会い適任者となる。その後ノヴィス・ノアの乗員となり、勇とノヴィス・ノアとの繋がりを作った。両親と死別しているが、孤児院で親代わりとなった教師らの許、屈折したところのない明るく逞しい少女に育っている。孤児院ではクマゾーら年少者の世話をしていたことから、面倒見がよく世話好きで、時として過干渉だが、そんな彼女の持つ優しさが、不幸な過去を背負い孤立しがちな勇をはじめとするノヴィス・ノアの人々を支えた。


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