ワクチンを接種すると、免疫系はウイルスやウイルスが作り出したタンパク質の特定の部分(エピトープ)を認識する抗体を産生する。しかし、ウイルスは時間の経過と共に遺伝子変異を起こし、ウイルスタンパク質の立体構造に影響を与える[25]。抗体が認識する部位にこのような変異が生じると、抗体の結合が阻害され、免疫反応が抑制される[26]。この現象は抗原連続変異(抗原ドリフト)と呼ばれている。B型肝炎やおたふく風邪などのブレイクスルー感染は、抗原連続変異の影響を受けているといわれている[15][17]。 ワクチンは、投与時に品質が悪いと、免疫が得られないことがある。ワクチンは、不適切な温度で保管されたり、使用期限を過ぎたりすると効力を失う[27]。同様に、免疫を確保するためには、ワクチンの適切な投与量が不可欠である。ワクチンの投与量は、患者の年齢や体重などの要因によって異なる[27]。これらの要因を考慮していないと、患者が誤った量のワクチンを接種されることになる。推奨されている量よりも少ない量のワクチンを接種した患者は、ワクチンに対する充分な免疫反応が得られず、免疫を確保することができない[23]。 ワクチンが有効であるためには、患者が獲得免疫を通じてワクチン内の病原体に反応し、その反応が患者の免疫学的記憶に保存されなければならない[10]。適応免疫反応を活性化することなく、液性免疫によって病原体を中和し、排除することも可能である[10]。病原性の弱い株や少ない株を使用したワクチンは、投与時の品質が悪い場合など、主に液性反応を惹起する可能性があり、その場合、将来の免疫を確保することができない[10]。
他の成因
ワクチンの品質と投与方法
出典[脚注の使い方]^ “「ワクチン接種後のブレークスルー感染」 なぜワクチンと感染予防対策の両方が必要なのか
^ “Factsheet for health professionals