ブレイクスルー感染
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おたふく風邪ワクチンは、麻疹・おたふく風邪・風疹ワクチン(MMR)の一部である[13]。おたふく風邪ワクチンは、おたふく風邪の予防に88%の効果があるとされている[14]。おたふく風邪のワクチンを接種していない患者に比べて、ブレイクスルー感染のおたふく風邪となった患者では、感染による重篤な合併症が少ないといわれている[15]。これらの合併症には、無菌性髄膜炎脳炎の発症が含まれる[15]

ブレイクスルー感染のおたふく風邪の原因は、現在のところ完全には解明されていない。ウイルスの変異(抗原連続変異)が、ブレイクスルー感染の大部分を説明すると考えられている[15]。また、記憶T細胞が打ち抜き感染の発生に関与しているという説もある[15]
B型肝炎

B型肝炎のブレイクスルー感染症例は、主にB型肝炎ウイルス(HBV)の変異により、HBVの表面タンパク質がHBVワクチンから作られる抗体に認識されなくなったことに起因している[16][17][18]。このような変異を持つウイルスは「ワクチンエスケープ変異体」と呼ばれている。ブレイクスルー感染は、ワクチン接種の遅れ、免疫抑制、母親のウイルス量などによっても引き起こされる[17]。HBVのブレイクスルー感染があっても、無症状の場合もある[16]
特徴
生物学的成因
年齢

患者は年齢を重ねるごとに、免疫システムに一連の変化が起こり、そのプロセスは免疫老化(英語版)と呼ばれる[19]。この変化の中で特筆すべきは、ナイーブT細胞ナイーブB細胞の生産量が減少することである[20]。ナイーブなリンパ球(T細胞およびB細胞)の減少は、造血幹細胞(HSC)のテロメアが時間の経過と共に短縮し、HSCの増殖およびリンパ系前駆細胞の産生が制限されることに起因している[19][20]。これは、時間の経過と共に、造血幹細胞がリンパ球系前駆細胞よりも骨髄系前駆細胞の産生を好む傾向があるという事実によって、更に悪化する[20]。また、成熟したリンパ球は無限に増殖することができない[19]。このように、ナイーブなリンパ球の減少と成熟したリンパ球の増殖能力の制限が複合的に作用して、ワクチンに含まれる病原体に反応するリンパ球の数や種類が限られてしまうのである[20]

実際、インフルエンザワクチン、三種混合ワクチン肺炎球菌ワクチン等のワクチンは、65歳以上の成人では効果が低いといわれている[20][21]。それでもCDCは、高齢者がインフルエンザに感染することは特に危険であり、ワクチンによってインフルエンザウイルスに対する少なくとも中程度の免疫が得られることから、インフルエンザワクチンの接種を推奨している[21]
抗体による干渉

乳児における母親の移行抗体の存在は、不活化ワクチン弱毒化ワクチンサブユニットワクチンの有効性を低下させる[22]。移行抗体は、ワクチン接種でウイルスが産生したタンパク質上のエピトープに結合する。母体の抗体がウイルスのタンパク質を認識することで、ウイルスが中和される[23]。更に移行抗体は、乳児のB細胞上のB細胞受容体が抗原に結合するより先に抗原を中和してしまうので、乳児の免疫系は高度に活性化されず、乳児が産生する抗体の数も少なくなる[10][22]

B細胞が病原体に結合したとしても、免疫反応は抑制される。B細胞受容体が抗原に結合し、同時にFc受容体が移行抗体に結合すると、Fc受容体がB細胞受容体に信号を送り、細胞分裂を抑制する[23]。乳児の免疫系が刺激されず、B細胞の分裂が抑制されるため、記憶B細胞はほとんど作られない。記憶B細胞のレベルは、病原体に対する乳児の生涯に亘る抵抗力を確保するのに充分ではない[22][23]

ほとんどの乳児では、母体の抗体は生後12?15ヶ月で消失するため、この時期以外に接種したワクチンが母体の抗体の干渉を受けて損なわれることはない[10]


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