一方で『ブルマーの謎〈女子の身体〉と戦後日本』(青弓社)の著者の山本雄二は、当時のバレーボール日本代表選手たちが密着型ブルマーを下着のようで恥ずかしいと断ったという証言から、バレーボール普及説を否定している[8]。
上記の山本によれば、戦後、文部省が作成した「新教育指針」により学生スポーツは勝利至上主義的な指導をとりやめ、全国規模での大会が禁止となったが、その結果、東京オリンピックでの成績は惨憺たるものとなった[9][10]。その後、文部省は全国大会を容認。中学体育連盟(中体連)は多くのスポーツ全国大会を主催することになったが、資金難に苦しむようになる。そこで中体連は制服メーカーの商品に推薦を与えるかわりに、資金援助をしてもらうようになった[8]。
1966年、菅公学生服(当時は尾崎商事)は全国中学校体育振興会(中体連の指定機関)から体育衣料指定メーカーとして全国唯一の推薦指定を受ける[11]。山本はこれが密着型ブルマーの普及時期と一致しており、メーカーが推薦指定をセールスポイントに学校に営業をかけ、急速な普及につながったと推測している[8]。
密着型ブルマーは、提案当時「東京五輪の女子体操選手のレオタード姿を通して女性の肉体に健康美を見いだす」という感覚が広まっていたため学校側も抵抗感なく容認したものの、従来のちょうちんブルマーとは運動面の機能で差が無かったため、実質的に密着型ブルマーに移行する合理性は全く無かった[12]。こうした理不尽な移行が後に約30年に渡る余計な問題を引き起こすことになる。 静岡県の清水市立飯田小学校(現・静岡市立清水飯田小学校)では1972年ごろ、男子の体操服にもブルマが採用されていたがすぐに短パンに切り替わったとの証言がある[13]。静岡県学校生活協同組合連合会の影山滋樹用品部長は、「決して男子用にブルマーが製造されていたわけではないが、飯田小独自のルールとして色だけ指定され、結果的に男子もブルマーをはくようになったのでは」や「他校でも採用された可能性は低いと思います。」と、学校独自の特殊な採用例であったことを述べている[14]。 思春期の少女においては、足の付け根まで露出し、「体形が丸見え」「下着同然」「しゃがんで立ち上がればお尻のほっぺたが顔を出す」「パンツがはみ出る」密着型ブルマーは羞恥心を感じさせることから非常に不評であった[4][7][12]。1987年、名古屋西高校で女子生徒の体操着として新たにブルマーを導入したところ、生徒による反対運動が起こった[15]。1988年、朝日新聞で女子中高生がブルマーに反対する投書が掲載された。 1990年代に入ると、それまでは一部のマニアのものであったブルセラ趣味が商業的に展開され、女子生徒から着用済みのブルマーやセーラー服などを買取り販売するブルセラショップが誕生した。ブルマーが性的好奇心の対象として一般に認知されるようになると、運動会などの学校行事でブルマー姿の女子生徒を盗撮したり、校舎に侵入してブルマーを窃盗し逮捕されるなど不審者による事件が相次ぎ、社会問題として取り上げられるようになっていった。 1993年11月22日付朝日新聞はシンガポール日本人学校中等部でのブルマー統一問題を報じている。新任の保健体育教師がそれまで自由だった体操着を日本のブルマーに統一し、それ以外の体操着着用を禁止したところ、生徒から「太ももの上部まで見え、校外マラソンの際、通行人にじっと見られる」との苦情が寄せられた。この記事に対し、学校側の姿勢に批判的な投書があいつぎ、他紙でもブルマーの問題を取り上げるようになる[16]。 1989年に新語・流行語大賞にもなったセクハラの概念も後押しとなり、密着型ブルマーはハーフパンツやジャージに移行していき、教育現場から一部を除いてほぼ使用されなくなった[17]。東京女子体育大学・掛水通子教授によると、1992年以降に完全に廃止されたとしている[18]。 ブルマーが完全に過去の遺物となった2022年にも、学校でブルマーを着用した年代の女性有名人から「最悪な思いしかない」、「下着が出るか気になって運動なんて集中できない」、「強要してくる日本社会と学校が憎かった」などといった不快感が表明されているように、当該世代においてはかなりのトラウマとなっている様子である[19]。 下記はブルマーの最終型であるニットブルマーの参考画像である。 前述の経緯から現実の校庭からは消え失せたブルマーだが、かつてブルマーが現役だった世代を中心に性的興味の対象として熱狂的なマニアが存在するほか、男性向け作品のフィクションの中では萌え属性としてひとつのジャンルを形成している[20]。そういった作品ではあえて女性キャラクターにブルマーを着用させ、ブルマーに対するフェティシズムを押し出し「ブルマー物」とも呼ばれる。学園物の成年コミックやアダルトゲームが多いが、場合によっては全年齢対象の作品も存在する。 2019年公開の一般向け実写映画「惡の華」にも、性倒錯を印象付けるシーンとして男子によるブルマー着用シーンが登場したことがある[21]。 また、現在でもコスチュームショップやブルセラショップといった販売店で、マニア向けのフェティシズム対象物として取扱われている[22]。
男子向けの採用例
反対運動と衰退
参考画像
ローカット ブルマー
ハイカット ブルマー
文化
性的フェティシズムの対象として
脚注[脚注の使い方]
出典^ “ファッション豆知識:#6 ブルマーについて
^ INC, SANKEI DIGITAL (2017年1月27日). “【教えて!goo】ブルマはなぜ消えたのか!? 専門家に聞いてみた(2/3ページ)
^ “bloomers の意味、語源、由来・英語語源辞典・etymonline
^ a b c d “ファッション豆知識 #7 ブルマーと現状と来歴
表
話
編
歴
被服
トップス
ブラウス
カシュクール
クロップトップ(英語版)
ホルターネック
シャツ
ワイシャツ
ヘンリーシャツ(英語版)
ポロシャツ
ランニングシャツ
Tシャツ
セーター
カーディガン
ガーンジー(英語版)
スウェットシャツ
スパゲティストラップ
パーカー
ジャージー
タートルネック
ボレロ
セーターベスト(英語版)
ツインニット(英語版)
ウェストコート
開襟シャツ