ブラック・レイン
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このシーンで登場する、佐藤が乗ってきた黒いメルセデス・ベンツ・560SEL(リヤスポイラー・ルーフスポイラー装着)ともう1台のSクラスセダンは、ダミーの「大阪」ナンバーをつけた北米輸出仕様車である[8]。
他にも強制送還されるニックが飛行機から抜け出す空港のシーン、チャーリーが佐藤一味に殺される地下駐車場のシーン、菅井の自宅豪邸、クラブ・ミヤコのシーン、佐藤のアジトシーンは全てアメリカで撮影されている(後者2つについては主要キャスト以外の日本人が英語訛りの日本語を話しているためそれがわかる)。
ケイト・キャプショーの登場場面のほとんどは米国で、カメラの切り替えでいかにも大阪でロケを行っているように見せている。唯一日本で撮影したシーンが使われているのは、チャーリーが殺された直後、心斎橋の今はなき橋の上でホームレスの男性に「これでパンでも買って」というシーンである(この橋はかつての長堀川域に実在し、1910年に2代目として架橋され、同川が埋め立てられ長堀橋筋となって以降の1964年から1995年まで歩道橋として再利用されていた橋である。現在は心斎橋筋通路に欄干部が再々利用されている) 加えて菅井宅は『ブレードランナー』のデッカード宅と同じロサンゼルスのエニス・ブラウン邸[9]である(特徴的なフランク・ロイド・ライト作のブロック壁で判別可能)。
佐藤の愛人をニックと松本が尾行するシーンは神戸で撮影されている。
神戸ナンバーの車だらけの中、佐藤の部下、梨田が乗ったタクシーだけは「なにわ」ナンバーだった。
銀行の支店や駅に「元町」と表示されている(撮影に使われた銀行の出入り口は旧協和銀行元町支店で、統廃合され現存しない)。
明らかに神戸市バスとわかるバスが映っている。
意味不明な街頭演説の音声(「社会党の今村マサコでございます…」と聞き取れる)が流れているが、なぜか英語訛りがある(他にも冒頭の佐藤がヤクザ幹部二人を殺害するシーンでも、ヤクザ幹部のセリフが英語訛りになっている)。
DVD特典のメイキングによれば、クライマックスシーンは2バージョン撮影されている。1つ目は「ニックが佐藤を殺すバージョン」。しかし「ニックが何かを学んだなら殺さないはず」と考えた監督たちは、「殺さず連行するバージョン」も撮影した。監督の心には「殺せ」という叫びも聞こえたが、殺せば物語は行き詰る上、佐藤は死なせるには魅力的すぎると思え、両方とも撮影して後で決めることにしたという。
警察に連行されるシーンは上映版では杭をカメラフレームに収めたカットから警察署内の扉を開ける場面に切り替わるが、第一試写版では警察署内の廊下を通過して階段を上がり扉を開ける流れが撮影され、終始ふてぶてしい笑顔を浮かべる佐藤が収録されており、一般公開前のプレス用資料には、これらの場面スチルが配布されていた。
米国のスタッフを驚かせた逸話として、佐藤がバイクに乗るシーンは全てスタント無しで松田優作本人が演じたことが挙げられる。しかし松田は一連の『遊戯シリーズ』にてスタントを全て本人がこなしており、松田はこれを当然と考えており、自分のやり方が正しかったと後に述懐している[10]。
佐藤がバイクに乗るシーンで着用しているゴーグル風のサングラスは、日本側で調達された1987年のジャン=ポール・ゴルチエ製コレクションである。市販モデルは平面レンズタイプであったが、レンズに映り込む光を複雑にしたいと監督から要請があり、球面レンズに交換された。
大阪府警の機動隊員のヘルメットにシールドが付いておらず、ジュラルミンの楯ではなく、狙撃用のライフルを持っていた。
ラストの空港のシーンで、松本がニックに「お子さんに」と渡す箱の包装は、当時関西圏で中堅の玩具チェーン店「いせや」のものであるので、中身は玩具と想像できる。公開当時、いせや常連客の間で話題になり、問い合わせがよくあったという。ちなみに逆にニックが松本に渡した箱の包装は阪急百貨店のものである(Hankyuの英字ロゴが確認できる)。
マフィアや日本人の偽札彫金師らのいるバーに登場する松田優作の最初の仕草は、人形浄瑠璃の『義経千本桜』をイメージしたものであるらしい。オリエンタルで怪し気な雰囲気が一瞬で表現できるからとの理由である。
店内でバッグに使われていた楽曲はボビー・ダーリンの「ビヨンド・ザ・シー」である。
キャスティングについて
ホテル内でスコット監督と行われた佐藤役のオーディションには、決定した松田優作の他に、萩原健一、根津甚八、小林薫、世良公則、田代まさし、遠藤憲一などが参加していた[11]。
このオーディションで松田は、自分で締めていたネクタイを外し、それを手錠に見立てて手首に結び、本番さながらの迫真の演技を披露し、佐藤役を獲得した。松田は当初、一次審査(書類選考)の時点で落とされていたが、日本側のスタッフが松田はそのようなレベルの役者ではないとアメリカ側のスタッフを説得し、実現したものだった。
萩原流行もオーディションを受けたが、意中の役は射止められなかった。その際、松本刑事の部下役で打診されたが丁重に断った。しかし、松本役が高倉健だと後で知って後悔したと日本テレビ『カミングダウト』[注 4]で語っている[12]。
元々は『海と毒薬』をベルリン映画祭で見たプロデューサーが主演の奥田瑛二に佐藤役を打診したが、本作と同時期に公開された『千利休 本覺坊遺文』との撮影スケジュールが合わず断ったため、オーディションが行われた[13]。
木村祐一もオーディションを受けたがすぐに終わり、落選。木村によると島木譲二はパチパチパンチをやって合格したらしい(『ダウンタウンDX』2007年12月13日放送分より)。
先述の木村同様、今田耕司もオーディションに参加しており、当時会社命令で他の吉本芸人ともどもオーディションを受けるも本人は乗り気でなく、オーディション中も自身の質問に対しコメディアンであることを伝えると、外国人スタッフから「コメディアンなら何か面白いことをやってみろ」と要求されるも、外国人に自分のギャグを披露しても伝わるわけがないと思った今田が「いや、ボクは別にいいです」と答えたところ、質問したスタッフが不思議そうな表情を浮かべながら「お前はチャンスがいらないのか?」と云われた。
クランクイン前に、マイケル・ダグラスと親交を結んだ坂本龍一に、松本刑事役をやらないかというオファーがあった[14]。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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