ブラック・エンジェルズ
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『ブラック・エンジェルズ』は、平松伸二による日本漫画作品[1]。1981年から1985年まで、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された。
概要

主人公が被害者から報酬を一切受け取らず、法で裁けない悪人を抹殺するハードな物語が描かれる。コミックス売上の累計は800万部[2]

本作の執筆開始以前、平松は武論尊による原作のもとで描いた『ドーベルマン刑事』が500万部以上を記録していたが、編集者からは「作画だけでは漫画家として認めない」と言われていた。本作はそれに対し、平松の「いつかオリジナルでヒットを出して見返してやろう」との思いから描かれたオリジナル作品である[3]

連載終了から13年後の1998年には、平松がかつて『スーパージャンプ』に連載していた別作品『マーダーライセンス牙』(以降、『牙』)とのクロスオーバー作品マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ』の連載が同誌で開始され、2004年まで連載された。同作品では、『牙』の主人公・木葉優児と本作品の主人公・雪藤洋士の両方が主人公として描かれている。

2010年には、『別冊漫画ゴラク』(日本文芸社)にて本作品の主要人物の1人・松田鏡二を主人公としたスピンオフ作品『ザ・松田 ブラックエンジェルズ』(以降、『ザ・松田』)の連載が開始され、2012年まで続いた。その後、2013年から2014年まで『ザ・松田 超人最強伝説』が連載された。

2011年4月27日には、落合モトキ矢島舞美らの出演による実写のオリジナルDVDが発売された。詳細は#実写版を参照。

2017年には、「創刊50周年記念 少年ジャンプ展」開催記念企画の一環として『グランドジャンプPREMIUM』同年9月号に『ブラック・エンジェルズ 雪藤ですが...何か!?』が掲載された。『牙』との関連を含めて前述のスピンオフ作品群を踏襲したほか、久々に雪藤が主人公を務めた。

2020年より、『コミック乱』(リイド社)にて設定を江戸時代に置き換えたセルフパロディ作品『大江戸ブラック・エンジェルズ』が不定期で連載されている。
作品内容

ストーリーは全3部構成となっており、各部の合間には読み切りに近い単発のエピソードが挿入されている[注釈 1]

第1部は雪藤らブラックエンジェルの初期メンバーを中心とした単発のエピソードが続いた後、日本壊滅による革命を目指して暗殺組織を暗躍させる集団「竜牙会」との抗争が描かれる。

第2部は第1部から2年後、第1部の終盤に発生した大震災による壊滅を経て地方から隔離された関東から始まり、その支配勢力が全滅した後は外の世界に舞台を移す。新たな敵「ホワイトエンジェル」と謎のコイン「8枚の金貨」を巡る戦いを描き、そのコインがキーアイテムとなって第3部へつながっていく。

第3部は第2部から3年後、新政府による恐怖独裁政治が敷かれた日本にて、最強にして最凶の悪・勇気との最終決戦が描かれる。

前半こそ連載当時における現代版『必殺シリーズ』と呼べるものだったが、大震災以降は世界観が一変し、内容も『バイオレンスジャック』や『北斗の拳』のように、秩序が崩壊して暴力が支配する世界が舞台となり、主人公側も敵側も超人的能力の持ち主になっていく。第3部ではさらに世界観が一変し、全てが管理されて自由の無いディストピアを舞台とした話が展開する。

竜牙会やホワイトエンジェルとの対決ではエンターテイメント性が重視されていたが、連載開始当初と竜牙会編の合間(作者が構想を練る間の繋ぎ)に挿入されていた、一般人の「外道」を死をもって裁くエピソードには性犯罪家庭内暴力少年犯罪消費者金融暴力団などを扱った陰惨な話が多い。主人公たちが動く頃には手遅れになっていることが大半で、被害者を救うエピソードは少ない[注釈 2]うえ、主人公たちに倒される外道のあくどさを際立てるかのように、善良な一般人や罪の無い子供が無残に殺されるシーンも多い。描写には漫画的な誇張が見られるが、一般社会の「法で裁けない悪」への怒り[注釈 3]を題材としていた。

ブラックエンジェルは決して弱者を見捨てず、暗殺対象は法で裁けない外道のみと限られており、神父が定めた「死の掟」を厳守するという勧善懲悪の内容は全編を通して守られていた。また、勇気を含め、フィクションにおける後天的な悪には通常見られる「何かをきっかけに、もしくは今際の際に善の心を取り戻す」描写が最後まで無かったことも、本作品の大きな特徴である。
登場人物
ブラックエンジェルのメンバー
第1部:初期 - 関東壊滅
雪藤洋士(ゆきとう ようじ)
本作の主人公。モデルは「高校時代の先輩」(単行本 第2巻の作者コメントより)。自転車
[注釈 4]のスポークがメインの武器で、悪人の頭頂部、首筋に刺すことで絶命させる。「秘灸暗剣殺」「円空暗剣殺」と名付けた必殺技を使うことがある。連載当初は、普段は眼鏡を掛けた気の弱い青年が、外道の前では一変、冷徹な闇の暗殺者に変わるという、表と裏2つの顔で表現されていた[注釈 5]。ただし、戦いが激しくなるにつれて裏の顔でも外道に怒りを燃やしたり、仲間の死に慟哭するなど、感情を顕にすることも多くなっていった。職歴は多彩で、ラーメン屋や銭湯などの住み込み店員や、レストランや喫茶店のウエイター、学校の用務員、靴磨きなどをして食いつないでいる[注釈 6]。両親を交通事故で失っており、姉と共におじ夫婦の家で暮らしていたが、強盗におじ夫婦を殺され、罪をなすり付けられ逮捕された姉も警察の過酷な取り調べに耐えかねて自殺した、という過去を持つ。後にこの事件の真犯人を自らの手で裁いたことで、ブラックエンジェルとなる。胸の十字の傷はこの時に付いたもの。武器はスポークの他にも、靴(コンバース オールスター)に仕込んだ剣、ワイヤー、自転車のサドルに仕込んだ吹き矢、自転車の車輪に仕込んだ刃(車輪ごと投げつける)、自転車のハンドルに仕込んだワイヤーなどがある。なお、自転車には隠し武器以外にもかなりの改造が加えられている模様。関東壊滅後、一時期だけ銃を所持していた。身体能力は高く、自転車で90km/h以上出すこともできる[注釈 7]。さらにその状態から急停止し、高速でバックするという曲芸も見せたことがある。バイクの運転も得意。跳躍力や反射神経は超人レベルである。また「心を無にする」ことで、刀の上に立つ(相手は重さを感じない。後に空中浮遊能力:レビテーションと判明)、催眠術にかからない、摂氏100度の熱泉を浴びても火傷をしない、心を読まれないなど、ある種の超能力を持っている(ただし作品中盤から後半になって突然身につけたものであり、序盤にはそのような描写は一切ない)。「心を無にする」力は、殺しを行う悲しみから逃避するために無意識に身につけたものとされている。勇気との最終決戦にて、ブラックエンジェルたちの十字架を全て引き受け、唯一にして本物の「黒い天使」と化し、人ではない存在となる。勇気を亜空間まで追い詰めて抹殺し、戦いに終止符を打った後に塵となって消えていった。その場にはスポークだけが残され、最終的な生死は明言されなかったが、後発作にて生存が判明し、以降もブラックエンジェルとして外道を地獄に落とし続けることとなる。決め台詞「地獄へ落ちろ!!」はブラックエンジェルを象徴する名台詞となっている(この決め台詞は、雪藤以外にも松田・水鵬・牙が使用している)。『マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ』でも主人公の一人を務める。本作の後、しばらくは自転車で世界を旅しつつ外道と戦っていたが、風俗嬢のナミにパンを貰ったのをきっかけに彼女の元へ身を寄せて以降、ヒモ同然の生活を送りながらもブラックエンジェルとして外道を狩り続けている。それまでと異なり、必ずしも悪党を殺すとは限らず、二度と悪事を行えないような重傷を負わせる程度に留めたり警察に突き出す場合も見受けられるようになった。目立った超能力は使えなくなっているが、『マーダーライセンス牙』の主人公・木葉優児とは数々の戦いで共闘し、雪藤の「無」と木場の「空」を合体させた最強の連携攻撃「絶対空」を編み出す。また、スポークが使えない際の対処法として、鍛錬した手の指で相手を刺し貫く技・指剣を習得している。『外道坊&マーダーライセンス牙』やスピンオフ作品『ザ・松田』では再び自転車で各地を回っている。『ザ・松田』では回ごとに出前持ちやレンタルビデオ店などでアルバイトをしているが、ブラックエンジェルとしての活動はしている。設定に多少前後する点が見られ、雪藤は松田から煙たがられており、知り合った当初のような関係になっている。同作では直接戦うよりも松田のサポート役に回る場合が多いが、平気で人命を奪うような外道に対してはこれまで同様に暗殺者に徹している。読み切り作品『ブラック・エンジェルズ 雪藤ですが...何か!?』では久しぶりに主人公を務めている。
松田鏡二(まつだ きょうじ)
初登場時は刑事(その話中で懲戒免職)、その後は主に飯場の作業員や港湾労働などの肉体労働で生計を立てている。初めは元刑事のプライドから、雪藤の行為を私的制裁として「人殺し野郎」と詰り反発していたが、轢き逃げを金の力で揉み消そうとした財閥の御曹司の外道ぶりに「法で裁けない悪」の存在を実感し、怒りを爆発させてこれを殺害。ブラックエンジェルとなる。後の竜牙会との戦いであばら骨を断たれるほどの強烈な手刀を受けた際に胸に十字の傷が刻まれる。空手を取り入れた自己流の喧嘩殺法で戦う(ちなみに刑事時代に同僚から「お前の空手は凶器だ」とまで言われたことがある)。手錠を素手で引き千切り、ゾウに踏まれても押し返し、無反動砲の砲弾を素手で受け止めるという恐るべき腕力を誇り、その手刀は頭蓋骨を割り、貫手は人体を貫くほどの威力がある。加えて超人的なタフネスの持ち主であり、筋肉は数十発の銃弾が命中しても貫通できず運動能力もほとんど衰えない。巨大ブーメラン(元々は不動王の武器)や愛車のバイク(HONDA CBX)、アメフト風のプロテクターなども駆使して竜牙会の名立たる殺し屋を倒していく。最期は竜牙会との戦いの中、背後よりマシンガンで頭部を撃ち抜かれる。雪藤が発見した頃には、恋人に贈るために手折った花を握り、立ったまま絶命していた。後に霊体として牙に乗り移り、彼に超常的な力を与えるも、最後は「俺はそろそろ眠らせてもらう。麗羅や水鵬が待ってるんでな」という言葉を残して消えていった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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