ブラウン運動
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数学のモデルとしては、フランス人ルイ・バシュリエは、株価変動の確率モデルとして1900年パリ大学に「投機の理論」と題する博士論文を提出した[9]。今に言う、ランダムウォークのモデルで、ブラウン運動がそうである、という重要な論文であるが、当時のフランスの有力数学者たちに理解されず、出版は大幅に遅れた。

ブラウン運動という言葉はかなり広い意味で使用されることもあり、類似した現象として、電気回路における熱雑音[10][11]ランジュバン方程式)や、希薄な気体中に置かれた、微小な鏡の不規則な振動(気体分子による)などもブラウン運動の範疇として説明される。
アボガドロ定数との関係

ブラウン運動について以下の式が成り立っている。

⟨ ( x − x 0 ) 2 ⟩ = 2 R T N A f t {\displaystyle \left\langle (x-x_{0})^{2}\right\rangle ={\frac {2RT}{N_{\mathrm {A} }f}}t}

ここで、上式左辺はブラウン運動する物体の平衡位置 x0 からのずれの2乗の平均である(系は1次元とする)。R は気体定数、T は絶対温度、f は易動度[注 2]、t は十分経過した時間(極限としては t → ∞)である。そして、NA がアボガドロ定数である。アボガドロ定数以外はブラウン運動とは関係なく求めることのできる量であり、フランスの物理化学者ジャン・ペラン1908年、ブラウン運動の観測を元に NA = 7.05×1023(資料により値が異なる)という値を得ている[12][13]

なお、ボルツマン定数 kB = R / NAを用いて表記すると、次の式となる。

⟨ ( x − x 0 ) 2 ⟩ = 2 k B T f t {\displaystyle \left\langle (x-x_{0})^{2}\right\rangle ={\frac {2k_{\mathrm {B} }T}{f}}t}
花粉にまつわる誤解.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2023年2月)
詳細は「ブラウン運動にまつわる誤解」を参照

水中で浸透圧により破裂した花粉から流出した微粒子ではなく、花粉そのものがブラウン運動すると間違われることがある。一般書などに限らず、高名な学者や学術書や教科書にも見られた。最近でもマスコミの記事や、インターネット上の検索サイトで検索すると大学のウェブ上のアインシュタインの業績説明は誤ったままの説明になっていることが多い。
アインシュタインの論文詳細は「アインシュタインの関係式 (速度論)」を参照

1905年のアインシュタインの論文[4]によって、ブラウン運動は原子の存在を明白に証拠付ける事実となった。その内容を要約すると以下のようになる[1]
微粒子が時刻 t に位置 x にいる確率密度 ρ(x, t) は次の拡散方程式を満たす ∂ ρ ∂ t = D ∂ 2 ρ ∂ x 2 {\displaystyle {\frac {\partial \rho }{\partial t}}=D{\frac {\partial ^{2}\rho }{\partial x^{2}}}}

拡散係数 D は、微粒子の半径 a 、溶媒の粘性 μ を用いて D = R T N A 1 6 π μ a = k B T 6 π μ a {\displaystyle D={\frac {RT}{N_{A}}}{\frac {1}{6\pi \mu a}}={\frac {k_{\mathrm {B} }T}{6\pi \mu a}}} と表される。ブラウン運動の原子論的描像は、この式の導出の際に用いられている。この導出には、ファントホッフの式ストークスの式フィックの法則定常流であることが用いられている。

平均二乗変位は拡散係数を用いて表される。 ⟨ ( x − x 0 ) 2 ⟩ ≡ ∫ − ∞ ∞ ( x − x 0 ) 2 ρ ( x , t ) d x = 2 D t {\displaystyle {\begin{aligned}\left\langle (x-x_{0})^{2}\right\rangle &\equiv \int _{-\infty }^{\infty }(x-x_{0})^{2}\rho (x,t)dx\\&=2Dt\end{aligned}}}

以上から、平均変位 λ λ = ⟨ ( x − x 0 ) 2 ⟩ 1 / 2 {\displaystyle \lambda =\left\langle (x-x_{0})^{2}\right\rangle ^{1/2}} が求められ、実験観測により検証できる。

数理モデル詳細は「ウィーナー過程」を参照

ブラウン運動の数学的に厳密なモデルとして、ノーバート・ウィーナーの名を冠してウィーナー過程と呼ばれる連続型確率過程がある。ウィーナー過程は離散型であるランダムウォークの極限となる確率過程として確率論、確率解析において非常に重要な概念である。ウィーナー過程のランダムさは、ブラウン運動のモデルに相応しく至る所通常の意味では微分不可能なほどであるが、その軌跡(サンプルパス)は連続性を持ち、ある種の測度としてウィーナー過程の存在を肯定する。そしてこれが微分(殊に二次の微分)によってある種の無限小余剰項を生むという規約を設けた[注 3]特別の微分(確率微分)を考えることにより、確率積分などの概念が定式化され、確率解析と呼ばれる一分野が展開される。非常に多くの粒子の影響がブラウン運動の不規則さを生むという考え方は、やはり多数の原因によって複雑な変動を示す株取引などの経済活動などにも応用することができるため、ウィーナー過程や確率微分を応用した確率解析は、金融工学などの分野でも盛んに用いられている[2]

簡単のため1次元ウィーナー過程について述べる。
定義
確率空間 ( Ω , F , P ) {\displaystyle (\Omega ,{\mathcal {F}},P)} 上で定義された連続な確率過程 W(t) で次の性質を満たすものをウィーナー過程という。


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