ブナ
[Wikipedia|▼Menu]
生長すると、樹高は30メートル (m) にもなるものがある[4]。樹皮は灰白色できめが細かくて割れがなく[7][4]、よく地衣類コケが着いて、まだら模様のように見える[6][17]。一年枝は暗紫褐色で皮目が多い[17]。一年枝と二年枝の間に芽鱗痕があり、古い芽鱗が残ることがある[17]。若い枝は褐色で光沢がある[7]。葉痕は半円形で、両端に筋状で長い托葉痕がある[17]

互生し、長さ4 - 9センチメートル (cm) 、幅2 - 4 cmの楕円形[8]で、薄くてやや固め、縁は波打っていて、鋸歯というよりは葉脈の所で少しくぼんでいる感じになる[6]。秋には黄葉し、黄色に色づき、橙色から赤褐色を帯びてくるが、紅葉は長持ちせず後半には褐色になりやすく、その後落葉する[11][6]。落ち葉は乾燥すると葉の表側へ巻き込むように丸まる[18]

冬芽は褐色の鱗片に包まれ、茎が伸びた後もそれがぶら下がっている。鱗片が取れても、数年は茎に痕が残る(芽鱗痕)。枝先には仮頂芽をつけ、側芽が開出して枝に互生する[17]。芽から展開した若葉には長い軟毛があり、後に無毛となる[8]。イヌブナの冬芽に似ているが、色は濃いめで、ときに短枝がある[17]

花期は晩春(4 - 5月ごろ)[9][4]雌雄同株で、葉の展開と同時に開花する[8]。雄花は枝先からぶら下がった柄の先に6 - 15個付いて、全体としては房状になる。

果期は秋(10 - 11月)[4]果実総苞片に包まれて10月ごろに成熟し[8]、そのやわらかいトゲをもつ殻が4裂して種実が落ちて散布される[5]。果実(堅果)は2個ずつ殻斗に包まれていて[4][7]、断面が三角の痩せた小さなドングリのようなもの。しかしながら、中の胚乳は渋みがなく脂肪分も豊富で美味であり、生のままで食べることができる。実はソバの実を大きくしたような形をしている[5]。なお、ブナの古名を「そばのき」、ブナの果実を「山そば」「そばぐり」というのは、果実にソバ(稜角の意の古語)がある木、山で採れるソバ、ソバのあるの意である。タデ科の作物ソバ(蕎麦)の古名を「そばむぎ」といったのと同様である。

ブナは生長するにしたがって、根から毒素を出していく。そのため、一定の範囲に一番元気なブナだけが残り、残りのブナは衰弱して枯れてしまう。ところが、一定の範囲に2本のブナが双子のように生えている場合がある。これは、一つの実の中に2つある同一の遺伝子を持った種から生長したブナである。

根は多く地表付近で密生するが、根の垂直分布は1.2 m - 1.4 m程度までと比較的浅いため、倒木する際には周囲の土壌ごと持ち上げて塊状に倒れる[19]

種子から発芽した子葉(下)と本葉(上)

長い軟毛がある若葉、後に無毛となる

幼木と無毛の

垂れ下がる雄花と果実に移行中の雌花

果実

ブナの4裂した殻斗と堅果

生態

ブナは保水力が大きく湿り気がある森林を形成する[4]。多雪環境に極めて強く、日本海側の気候に適応した樹木とされている[20][21]。ブナは極めて多雪な地域では樹形を変化させ、地を這うような(匍匐型)ものに変わる。これは多雪環境に適応した樹木によく見られる特徴であり[22][23]ユキツバキヒメアオキでも知られている。

日本海側ではしばしばブナが優先し純林を形成するが、太平洋側に降りると純林はあまり見られず、ミズナラなど他樹種との混交林を作る。これは雪が少ないという気候的な面だけではなく、古くから人が入り山火事の多発などにより遷移が退行した面もあるとされる[24]

ブナの果実は多くの哺乳類の餌として重要であり日本では2003年ニホンツキノワグマが多数里に出てきたことで知られるが、この年はブナの不作の年でもあった。しかしブナは基本的に毎年不作であり、5-10年に一度豊作になるだけである。さらに、ブナがより不作だった2004年には出没例は2003年より少なく、全国的に過去に例がないほどのブナの豊作となった2005年にはクマの出没が増加した地域と減少した地域があった。以上から、ツキノワグマの出没とブナの豊不作は必ずしも相関がないとの説もある。

ブナの葉にはタマバエ科の昆虫による虫こぶがつきやすく、26種の虫こぶが知られている[25]。葉の分解は非常に緩慢であり、その分解が細菌によってなされる環境では土壌は改善されるが、主にキノコによって分解される環境では酸性の粗腐植が作られ、他の土壌生物の土壌を改善する活動を阻害する。そのため、森の養母とも称えられるが、粗腐植の主要因としてネガティブな評価を受けることもある[26]

三方崩山ブナ林

太平洋側、丹沢山地 堂平のブナ林(6月)

丹沢山地 堂平のブナ林(10月)

丹沢山地 堂平のブナ林(3月)

奥志賀(8月)

ブナの紅葉岩木山、10月)

八甲田 南股山付近 ブナ林(3月)

人間との関係

かつては日本の森林を構成する主要な樹木として保水や治水に重要な役割を果たしてきたが、開発などによって伐採されてブナの森林は年々減少している[5]。春の新緑、秋の紅葉など四季折々に変化に富む様は、公園や緑地の材料としても優れている[27]。ブナの並木は日本では少なく、造林に使われた例も少ない[12]
木材

ブナの木は非常に重く川を流して搬出することが困難なことから、商取引には向かない資材だった[26]。その上、腐りやすい、加工後に曲がって狂いやすいという性質があり、日本では建築用材としては重要視されなかった[10]20世紀の後半まで用材としては好まれなかったが、のほか、下等品のための需要はあった。鉄道枕木は主に硬く腐朽しにくいナラ材が用いられてきたが、第二次世界大戦後の資材不足の折、1951年から防腐剤の注入を条件に用いられるようになった経緯もある[28]。しかし、杓子など、さまざまな容器などには広く使われた[10]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:56 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef