フロム・ヘル
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女性参政権運動や社会主義の台頭を懸念し、生贄殺人によって男性支配を象徴的に再生しようと試みる[17][18]

;ヴィクトリア女王:半世紀近くにわたって大英帝国に君臨してきた女王。王家のスキャンダルを隠蔽するため、4人の売春婦を抹殺するようガルに命じる。

;プリンス・エディ:王位継承者ながら平民との間に庶子を儲ける。「ジャック」の殺人が起きると罪の意識に駆られ、標的の一人メアリー・ケリーに警告する[19]

;アニー・クルック:菓子店員。プリンス・エディの出自を知らずに結婚したが、女王の手によって強制的に精神病院に送られる。

;ウォルター・シッカート:プリンス・エディのお目付け役だった画家。赤ん坊の子守りをしていたメアリー・ケリーから口止め料を要求される。

;メアリー・ケリー:アイルランドの飢饉によってロンドンに移ってきた一家の出[20]。売春のみかじめ料を支払うためにシッカートを恐喝するが[21]、共謀者が次々に殺されると放逸に走る。

;ポリー・ニコルズ:ケリーの同業で、「切り裂きジャック」の最初の犠牲者となる(写真は遺体)。夫と別れて以来、救貧院暮らしを経てその日暮らしの娼婦となった[22]

;アニー・チャップマン: 二人目の犠牲者。寡婦で、売春のほか老人の身の周りを世話して日銭を稼いでいたが、仕事に必要な石鹸すら買えないほど困窮していた[22]

;リズ・ストライド: 三人目の犠牲者(写真は遺体)。雇い主によって孕まされたことから娼婦となり、取り締まりを避けてスウェーデンからロンドンまで流れてきた[23]

;ジョン・ネトリー:無学な御者。ガルによって連続殺人の助手を務めさせられ、その見返りとしてフリーメイソンの一員に迎え入れられることを期待する[24]

;フレデリック・アバーライン:労働者階級出身の警部[25]。事件の真相を突き止めると、警察組織の関与に失望して職を辞する[26]。パブで知り合った売春婦に金を巻き上げられる[27]

;ロバート・リーズ: 女王お抱えの霊媒。心霊能力が演技に過ぎないことをガルに侮蔑され[28]、報復の機会を狙っていた。その結果、思惑を超えて真実を予言してしまう。

;モンタギュー・ドルーイット:教師。ガルのスケープゴートを探していたフリーメイソンにより「女嫌いの男色家」に仕立て上げられて失職し[29]、自殺を装って殺害される。

;ジョゼフ・メリック:病により異様な容姿となった聡明な人物。ガルによってガネーシャの使いになぞらえられ[30]、最初の犠牲者を生贄に捧げられる[31]

第4章「王は汝に何を求めたるや?」

翻訳者柳下毅一郎は「ウィリアム・ガル博士の魔術行為が示される二章、第四章と第十四章」が本書の白眉だと述べた[32]。第4章において、ガルは馬車でロンドンを一周しながら、無学な御者ネトリーに歴史的な建造物の由来を語って聞かせる。過去の時代に視点が移ることもなく[33]、石造りの建築を背景にした会話シーンが30ページ以上続く単調な構成はストーリー漫画として異色であり[34]、作者たちも成否を危ぶむほどだった[35]


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