この章ではニコラス・ホークスムア(英語版)の建築作品が中心的に扱われている。ホークスムアはフリーメイソンの一員であり、教会建築に異教の意匠を取り入れたことからオカルティストの間で関心が高く、本作以前にもシンクレアやピーター・アクロイド(英語版)の小説で取り上げられている[48]。
ムーアはこの章の単調なプロットを作品として成立させた作画家エディ・キャンベルを称賛している[43]。キャンベルは描写に少しでも緩急をつけるため、ガルらが立ち止まっているときは背景を写実的に描き、馬車で移動している間はスケッチ風のタッチに変えて細部に目が留まらないようにした[49]。また余計な部分で読者が混乱しないように、馬車が東に向かうシーンでは人物は右を向き、西に向かうシーンでは左を向いている[50]。この章は丸1日の出来事であり、太陽の動きを計算に入れて絵の光源が設定されている[51]。 第14章でガルは次元の壁を超越し、すべての時間に偏在する存在となる[36][61]。作者は実在の歴史記録に残る幽霊の目撃談や超常現象をガルの霊体と結び付けている。たとえばウィリアム・ブレイクは自室で全身鱗の怪物を幻視し、そのスケッチを元に『蚤の幽霊
バトル・ブリッジ・ロード。何の変哲もない裏通りだが、ケルトの女王ボアディケアがローマ軍に敗れた場所とされる[52][53]。「これこそが女どもの最後の希望と夢が潰えた場所なのだ」[54]
バンヒル・フィールズ(英語版)。幻視者ウィリアム・ブレイクは、男性原理と理性を象徴する「太陽神のオベリスク[† 3]」の根元に葬られている[55]。
セント・ルーク教会(英語版)。オベリスクのような尖塔は建築家ニコラス・ホークスムアの特徴である[48]。「ありゃあバンヒル・フィールズの奴と同じもんだ! でもあんなかたちの尖塔があるわけない」[56]
ホークスムアのセント・ジョージ教会(英語版)。尖塔はマウソロス霊廟の影響を受けている[48]。「巨大で暗く精巧な聖堂の精神、鳥糞に染まった石積みが今世紀を定義した……」[57]
太陽神アトゥムを称えるオベリスク「クレオパトラの針」。「すべてに共通するものが何か、わかるか? 太陽と月との戦いだ」[58]
半神狩人ハーンと縁のあるハーン・ヒル(英語版)。ガルはハーンが月の女神ディアーナの王座を簒奪したという[59]。
ロンドンを代表する名所、ロンドン塔。ガルは暴力と怪奇に満ちたその歴史を暴き出してみせる[37]。
ディアーナ神殿の跡地に建てられたセント・ポール大聖堂[53]。「ディアーナは縛められ/その住み家は、パウロの名によって神に捧げられた」[60]
第14章「ガル昇天す」