作中で訪問される、太陽と月の戦いを象徴する数々のランドマークは地図上で禍々しい五芒星を描き出す[44]。その中央にあるセント・ポール大聖堂はガルによると男性原理の核心的な象徴であり、建築構造に埋め込まれた鉄鎖(レンの鎖[45])が「無意識、月、女性性」をその内に縛り付けている[37](ムーアは執筆当時のウェールズ公妃ダイアナがセント・ポール大聖堂で皇太子と結婚式を挙げたことを意識していた[46])。ロンドン市街の「力と意味の線」を引き直し、封印を再生させることが、切り裂きジャックの事件を起こさなければならない必然的な理由だとされる[47]。
この章ではニコラス・ホークスムア(英語版)の建築作品が中心的に扱われている。ホークスムアはフリーメイソンの一員であり、教会建築に異教の意匠を取り入れたことからオカルティストの間で関心が高く、本作以前にもシンクレアやピーター・アクロイド(英語版)の小説で取り上げられている[48]。
ムーアはこの章の単調なプロットを作品として成立させた作画家エディ・キャンベルを称賛している[43]。キャンベルは描写に少しでも緩急をつけるため、ガルらが立ち止まっているときは背景を写実的に描き、馬車で移動している間はスケッチ風のタッチに変えて細部に目が留まらないようにした[49]。また余計な部分で読者が混乱しないように、馬車が東に向かうシーンでは人物は右を向き、西に向かうシーンでは左を向いている[50]。この章は丸1日の出来事であり、太陽の動きを計算に入れて絵の光源が設定されている[51]。
バトル・ブリッジ・ロード。何の変哲もない裏通りだが、ケルトの女王ボアディケアがローマ軍に敗れた場所とされる[52][53]。「これこそが女どもの最後の希望と夢が潰えた場所なのだ」[54]
バンヒル・フィールズ(英語版)。幻視者ウィリアム・ブレイクは、男性原理と理性を象徴する「太陽神のオベリスク[† 3]」の根元に葬られている[55]。
セント・ルーク教会(英語版)。オベリスクのような尖塔は建築家ニコラス・ホークスムアの特徴である[48]。「ありゃあバンヒル・フィールズの奴と同じもんだ! でもあんなかたちの尖塔があるわけない」[56]
ホークスムアのセント・ジョージ教会(英語版)。尖塔はマウソロス霊廟の影響を受けている[48]。「巨大で暗く精巧な聖堂の精神、鳥糞に染まった石積みが今世紀を定義した……」[57]
太陽神アトゥムを称えるオベリスク「クレオパトラの針」。「すべてに共通するものが何か、わかるか? 太陽と月との戦いだ」[58]
半神狩人ハーンと縁のあるハーン・ヒル(英語版)。ガルはハーンが月の女神ディアーナの王座を簒奪したという[59]。