フレスコ
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漆喰の乾燥が進んだ後も描き続けるために、顔料に媒材として消石灰などを混ぜる。壁面の乾燥を遅らせるために砂を多めにした漆喰を用いる、顔料の定着を助ける目的で漆喰の表面を粗く仕上げるなどの特徴がある。
掻き落とし法
ズグラッフィートまたはグラッフィート (Sgraffito/Graffito)
「引っ掻かれた」の意味。2層または数層の異なる色彩の漆喰を塗り重ね、一部を掻き落として絵柄を浮き出す技法。漆喰の着彩には土性顔料を用いる。型紙を用いて比較的安価に制作でき耐久性も高いため外壁に用いられることが多い。
基本的な描法
湿式法の構造
支持体(壁芯)
普通は煉瓦や石を組んだ壁などを支持体とする。葦などを編んだカンニッチョとよぶ支持体を用いる場合もある。
荒下地(トルリザチオ trullisatio)
支持体の壁面を水で良く洗い充分湿らせてから、粗い川砂と消石灰の漆喰を壁に投げつけるように塗り付ける。
中間層(アリッチョ arriccio)
トルリザチオを乾かし(通常一週間程度)、トルリザチオを水で充分湿らせ、川砂と消石灰による漆喰を塗る。
下絵(シノピア sinopia)
中間層に、水で溶いたシノピア、ヴェルダッチョなどの顔料による下絵を描く。下絵を描く目的は全体像を確認するとともに、ジョルナータの区分を明確にすること。この層は完全に次の層に被われるため顔料の定着に留意する必要はない。そのため区分せず全画面は一度に描かれる。また次の漆喰層の定着のために下絵完成後、表面にケガキで筋状の傷を付けることが多い。原寸大の紙に描かれた下絵(カルトーネ cartone)を漆喰に転写する方法には、壁の上に重ねたカルトーネの上を尖ったものでなぞるけがき法(インチジオーネ incisione)と、カルトーネに針で穴を開け、その穴から顔料を透過させる方法(スポルベロ spolvero)とがある。中世期にはこの下絵層を指す言葉は存在しなかった。「シノピア」と呼ばれるようになったのは、修復過程で下絵層の即興的描画の美術史的価値と芸術性が注目された20世紀以降である。
上塗り=描画層(イントナコ intonaco)
ジョルナータ分の漆喰を強く塗り、表面を平らに仕上げる。漆喰層がしまってきたら水または石灰水で溶いた顔料で描き始める。漆喰が乾くと顔料の表面が炭酸カルシウムの皮膜で覆われるため、最終層の漆喰は一日で描けるだけのもの(ジョルナータ分)を準備し、素早く描かなければならないため相応の技術と経験が必要となる。
仕組み
漆喰には
石灰岩(CaCO3)を焼成し、生石灰(CaO)にした上に加水した消石灰(Ca(OH)2)を使用する。

作品を描写中、媒剤となる水分はたえず気化し、消石灰は二酸化炭素(CO2)を吸収、酸素(H2O)を放出し、炭酸カルシウム(CaCO3)に変化する。

炭酸カルシウムは水に溶けないため、フレスコ画は保存性に大変優れている。
著名なフレスコ画

ルクソール神殿エジプトルクソール) - キリスト教徒によって描かれたフレスコ画が残っている。世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」の一部。

ギョレメの岩窟教会(トルコカッパドキア) - 9世紀-11世紀の作品。世界遺産「ギョレメ国立公園カッパドキアの岩石遺跡群」の一部。

サン・フランチェスコ聖堂(イタリアアッシジ) - ジョットによる「聖人フランチェスコの生涯」「玉座の聖母と4人の天使と聖フランチェスコ」がある。13世紀末期の作品。世界遺産「アッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群」の一部。

バチカン宮殿バチカン市国) - ラファエロによる「アテナイの学堂」がある。16世紀初頭の作品。世界遺産「バチカン市国」の一部である。

システィーナ礼拝堂(バチカン市国) - ボッティチェリによる壁画や、ミケランジェロによる「創世記」「最後の審判」が著名である。16世紀前半の作品。世界遺産「バチカン市国」の一部。

カーリエ博物館(旧コーラ修道院)(トルコ・イスタンブール) - 14世紀に描かれた末期ビザンティン美術の宗教画。世界遺産「イスタンブール歴史地域」の一部。

ギャラリー

受胎告知、1437-46年頃、サン・マルコ美術館所蔵

システィーナ礼拝堂最後の審判


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