フルメタル・ジャケット
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しかし、ジョーカーら同期生のサポートを受けて訓練をやり遂げ、最終的に射撃の才を認められ高い評価を得る。だが、過酷な訓練により精神に変調をきたしてしまい、卒業式の夜にハートマンを射殺した後、自ら命を絶ってしまう。
ストーリー後半
厳しい訓練を耐え抜き一人前の海兵隊員となった彼らは、ベトナムへ送られる。報道部員になっていたジョーカーは上官から目をつけられ、前線での取材を命じられる。訓練所での同期であったカウボーイと再会し、彼が属する小隊に同行することとなる。ある日カウボーイたちは、情報部から敵の後退を知らされ、その確認のためにフエ市街に先遣される。しかし交戦地帯で小隊長が砲撃で戦死、さらに分隊長をブービートラップで失う。残る下士官のカウボーイが隊の指揮を引き継ぐも、進路を誤って転進しようとしたところに狙撃兵の待ち伏せを受け、2人の犠牲者を出す。無線で前線本部の指示を仰ごうとしたカウボーイは、廃ビルの陰に隠れたつもりが、崩れた壁の隙間から襲ってきた銃弾に倒されてしまう。残されたジョーカーらは狙撃兵への復讐を決意し、煙幕を焚いたうえで狙撃兵がいるとみられるビルに忍び込む。ジョーカーが見た狙撃兵の正体は、まだ若い少女だった。ジョーカーは狙撃兵から返り討ちにされそうになるが、駆け付けたラフターマンが彼女に銃弾を浴びせた。虫の息となった狙撃兵の少女は祈りながらとどめを刺すよう懇願し、ジョーカーは様々な思いの中で拳銃の引き金を引いた。運よく五体満足で任期を終えられる期待に喜びを感じながら、ジョーカーらは高らかに歌いつつ、闇夜の戦場を行軍してゆく。
登場人物とキャスト

()内は愛称。本名では滅多に呼ばれない。
ジェイムズ・T・デイヴィス(ジョーカー)
演 -
マシュー・モディーン、吹替 - 利重剛本作の主人公で、海兵隊員。皮肉屋で、その言動からハートマンに「ジョーカー(おふざけ野郎)」と命名された。ハートマンにも皮肉を言える度胸を買われ、訓練途中から班長に抜擢、レナードのバンクメイト(ペアを組んで助け合う「寝台戦友」)を命じられる。高校生の時に広報部だったため、歩兵訓練後は『スターズ・アンド・ストライプス』(米軍の準機関紙)の報道員となる。原作では高校で演劇部の経験も積んでいて、エロール・フリンジョン・ウェインの声帯模写を披露している。ベトナムで伍長から軍曹に昇進したが、原作では下っ端の方が向いていると主張して、伍長の階級章を付け続けている。いつも胸にはピースマークのバッジを付け、ヘルメットカバーには「Born To Kill」と書いている。ある海兵隊大佐が前線でこれを見咎めて問いただしたものの、ジョーカーの「ユングのいう、人間の二面性のようなものを表そうと思ったのです」という説明が全く理解できなかった。原作ではフエ戦の後で、遭遇した「事務屋」の海兵隊大佐の機嫌を損ねたことから、報道部から戦闘部隊へ転属させられる。
レナード・ローレンス(微笑みデブ。英語では「ゴーマー・パイル(英語版)」)
演 - ヴィンセント・ドノフリオ、吹替 - 村田雄浩渾名の由来はドラマ『メイベリー110番』と続編『マイペース二等兵』の、やはり海兵隊員である登場人物より(「マイペース――」では主役を張る)。海兵隊に志願したは良いが、非常に鈍臭い上に靴紐を結べないなど、基本的な生活能力に欠ける面があり、訓練所では当初ドジばかりで、その度にハートマンから厳しい指導を受ける。これを繰り返すうちに、連帯責任として本人を除く全員が罰を受けるようになり、それを恨んだ同期の訓練生たちから、夜中にタオルにくるんだ固形石鹸で殴打されるリンチ(Blanket party(英語版))を受け、世話係に任命されたジョーカーも複雑な表情を見せながら参加した。しかしその後、動きは格段に素早くなり、射撃の才能を開花させ、入隊時とは別人のように成長していくが、精神に変調をきたし、貸与されたM14自動小銃に話しかけるなどの奇行が目立ち、同期生たちから気味悪がられる。原作では最優秀訓練生として、卒業パレードで礼装「ブルードレス」を着る栄誉を得た。訓練所を離れる前夜、営舎の便所にて、M14自動小銃にどこからか入手した実包を装填して、止めに来たハートマンの命令を無視して彼を射殺、自身も銃口を口にくわえて引き金を引き自殺する。
ハートマン軍曹
演 -
R・リー・アーメイ、吹替 - 斎藤晴彦アメリカ海兵隊の訓練教官で、階級は一等軍曹。厳しい教練で知られ、常に訓練生たちを容赦なく品のないスラングで罵倒し続け、蹴る殴るの体罰を与える鬼軍曹。訓練生を故意に挑発して反応を確かめたり、出来の悪いレナードの面倒を同じ訓練生のジョーカーに任せるなど、練兵下士官としての老練さも見せる。訓練所卒業前夜、M14を持ち出したレナードを諭すが、腹部を銃撃され殺される。原作小説ではガーハイム砲兵軍曹[3]という名で、硫黄島の戦いでの戦歴があり、ビール腹の体型、ジョーカーが配属されることになった報道部に対して「あいつらのために軍規が緩む」と不満を見せ、銃を突き付けてきたレナードに対して得心の笑みを浮かべるなど、映画とは設定が若干異なる。
エヴァンス(カウボーイ)
演 - アーリス・ハワード、吹替 - 塩屋俊海兵隊員。訓練所ではジョーカーと同じ班に配属され、彼と特に気が合う仲となる。テキサス州出身で、ヘルメットには南部旗のステッカーを貼っている。H中隊第1小隊所属の下士官となり、先遣指揮官のクレイジー・アールがトラップによって戦死したとき、臨時に指揮を執る。戦車の支援を無線で呼ぶ際に、建物に開いていた穴を通して狙撃され、止血の甲斐なく死亡する。原作では、第3部のジャングル偵察で敵狙撃兵の待ち伏せを受け、身を隠せない場所で重傷を負い、同じく倒れた部下たちを拳銃で撃って楽にしてやり、自らはジョーカーが放った銃弾によってとどめを刺された。
アニマルマザー
演 - アダム・ボールドウィン、吹替 - 菅田俊カウボーイの分隊に所属するM60機関銃手。カウボーイの後退命令を拒否して、撃たれた仲間の救出を試みる。黒人差別的な言動があったが、その黒人兵が撃たれた際には猛然と銃を連射し、救出に向かおうともした。本名は不明。ヘルメットカバーには「I Am Become Death」(我は死神なり)と書いている。原作では民間人や気に入らない上官を殺すことすら厭わないなど、凶暴な面が強調されている。
エイトボール
演 - ドリアン・ヘアウッド、吹替 - 岸谷五朗カウボーイの分隊に所属する黒人兵。ヘルメットカバーにはビリヤードのエイトボールのイラストが描かれている。スノーボール演 - ピーター・エドモンド黒人の訓練生、訓練所でジョーカーらと同じ班となる。本名は「ブラウン」だが、ハートマンから「スノーボール(白雪丸)」というあだ名を付けられた。当初は班長を務めていたが、ハートマンの命令でジョーカーに班長を交代させられる。後半のベトナムには登場しない。
ラフターマン
演 - ケビン・メージャー・ハワード海兵隊報道部の一等兵。ジョーカーの相棒を務めるカメラマン。駐屯地の酒場で酒に酔ってに登り、居合わせた将軍(ゼネラル・モーターズ)一行のテーブルへ転落したためラフターマン(梁男)という渾名を付けられたが、映画ではその経緯が省略されている。ジョーカーとともにフエ奪還戦に加わり、敵狙撃兵に狙われた彼を危機から救った。なお原作では、フエから報道部へ戻る帰路で味方戦車にひかれ、ジョーカーの眼前で事故死した。
ウォルター・J・シノスキー(ミスター・タッチダウン)
演 - エド・オロス、吹替 - 菅生隆之エヴァンスの所属する隊を指揮する少尉。エヴァンスを探すジョーカーに自らがカウボーイの隊の一員だということを明かし、戦況などをジョーカーに教えた。フエ市街での戦闘で、飛来した砲弾片に当たって戦死。原作ではショートラウンド(チビ)という名で、フエ王宮をめぐる戦闘中に手榴弾攻撃を受けて死亡。その手榴弾は、彼から度々叱責されたことを逆恨みしたアニマルマザーが、戦闘にまぎれて投げつけたものだった。
スタッフ

監督:
スタンリー・キューブリック

音楽:アビゲイル・ミード(キューブリックの娘であるヴィヴィアン・キューブリック(英語版)の偽名)

作品解説

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出典検索?: "フルメタル・ジャケット" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2011年7月)

日本語字幕

他のキューブリック監督作品でも多い例だが、キューブリック自身が本作品の字幕翻訳をチェックしている。日本語字幕への翻訳は、当初は戸田奈津子が担当したが、ハートマン軍曹の台詞を穏当に意訳したため、再英訳を読んだキューブリックは「汚さが出てない」として戸田の翻訳を却下、急遽、原田眞人が起用され、翻訳作業にあたった[4]。キューブリックが原文の直訳を要求した結果、「まるでそびえたつクソだ!」などの奇抜な言い回しがかえって著名になり、さまざまなパロディが登場した。
撮影

アメリカ合衆国ベトナムが舞台だが、イギリスで撮影された。そして原作の後半が省略されたこともあり、ベトナム戦争を扱った映画には珍しくジャングルでの戦闘がなく、主に市街戦が描かれている。ただし原作ではフエ宮殿地域の邸宅群が舞台となっているのに対し、映画ではコンクリート建築が並ぶ街並みにアレンジされている。

前半の訓練シーンはイギリス南部にあるバシングボーン基地・クイーンズ師団駐屯地が使用されている[5]

後半の戦闘シーンの撮影は1985年8月から約1年に渡ってイーストロンドンで行なわれた。ベックトン地区のブリティッシュガスの敷地内にあった解体予定の建物の使用許可を得ると、美術スタッフは6週間をかけて建物を部分的に破壊し、戦時下のフエの街並みを再現した。


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