フランス系
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エリック・ホブスボームなどの歴史家の説によれば、 フランス語は「フランス国家」という概念に不可欠であったにもかかわらず、フランス革命の時点で約半数のフランス人がフランス語を一切話さず、中央のオイル語圏ですら、都市部以外ではあまりフランス語が用いられていなかったという[27]。ホブスボームはナポレオンが創設した徴兵制度、そして1880年代以降の大衆教育関連の法案が、さまざまな国内の集団を混淆し、統一国家の一員という自覚を持つ「フランス市民」を創出する上で大きな役割を果たしたと評価している。

1870年普仏戦争、そして短命に終わった1871年パリ・コミューンは、フランス愛国心を強めるきっかけとなった。第一次世界大戦 (1914年-1918年)までは、フランスの政治家たちは、アルザス=ロレーヌ地方問題から目を離すことができなかった。そしてこの問題が、フランス国家の定義、そのままフランス国民の定義に深い影響を及ぼした。更にドレフュス事件により反ユダヤ主義が高まった。このような中で、王党派知識人のシャルル・モーラスは反議院内閣制を唱えるアクション・フランセーズの一員として、「反フランス」という言葉を造語した。これは共和制の「民族的出自や宗教的信念と無関係にあらゆるフランス市民を『フランス人』とする」という定義への、最初期の反対運動のひとつであった。 モーラスの「反フランス」という言葉は、カトリック教徒フランス人を、4つの「よそ者」の「同盟国」、すなわちユダヤ人フリーメイソンプロテスタント、そして「メトイコス」(meteques、移民など)に対立させたのである。

19世紀半ば頃、フランスでの産業革命が展開し始めた頃より、フランスの人口趨勢に変化が生じた。急速に産業発展を遂げるフランスには、次の100年間にヨーロッパ中、特にポーランドベルギーポルトガルイタリアそしてスペインから何百万人もの移民が流れ込んだのである。

1960年代には、フランスへの移民第二波が起こった。これらの移民は第二次世界大戦以後の荒廃した国土再建のために必要であった建設事業を安価な労働力として支えた。フランス企業は、マグレブに安価な労働力を買い付けに赴き、フランスへの就労移民を促進したのである。これらの移民の定着は、 ジャック・シラクの1976年の「家族再会法」(regroupement familial)によって公的に進められた。これ以後、移民のあり方は多様化し続けているが、今ではフランスは他のヨーロッパ諸国に比べると、大きな移民受入国ではなくなっている。
フランス系人口

西半球には、民族的フランス人の子孫であると自認する人々が相当数いる。カナダのケベック州は、大西洋西岸のフランス系社会の中心地となっており、もっとも歴史の古いフランス系移民社会であると同時に、フランス語による芸術活動、メディア活動、教育の活発な中心地でもある。オンタリオ州ニューブランズウィック州を中心に、カナダの他の地域にも、多くのフランス系カナダ人コミュニティーが存在する。そのため、カナダでフランス人というとフランス国籍者よりもむしろ英語系住民との区別でフランス語系住民を指すことが多い。

アメリカ合衆国にもまた、数百万のフランス系移民が住み、その主な居住地はルイジアナ州ニューイングランドである。ルイジアナのフランス系社会にはクレオール、フランス領時代に移住してきたフランス人子孫、そして、18世紀半ばのアカディアにおける大規模追放(en:Great Upheaval)から逃れてきたケイジャンがいる。ニューイングランドについては、19世紀から20世紀初頭に大量に流入したフランス系移民は、ほとんどがフランス本国からではなく、ケベック州からの移民であった。彼らは、当時この地域に次々と建てられていた製材所や織物産業で働くために来たのである。今日、ニューハンプシャー州の人口の約25%がフランス系であり、この割合は全米でももっとも高い。

また、独立前のアメリカにおける、イギリス人入植地やオランダ人入植地が、多くのフランス人ユグノー教徒を引きつけたことにも触れておくべきだろう。後にニューヨーク州ニュージャージー州北東部となるオランダ人入植地では、フランス系ユグノーは宗教的にほぼ同じ教義を持つオランダ改革派のコミュニティーに、ほぼ完全に同化していった。フランス系であるという出自も忘れ去られ、名前をオランダ風に改名する者も多かった(例、意味の翻訳:ドゥ・ラ・モンターニュ(de la Montagne)> ヴァンデンベルフ(Vandenberg)。どちらも「山の」の意味。音の置換:ドゥ・ヴォー(de Vaux)>デヴォス(DeVos)あるいはデヴォー(Devoe))。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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