この疑いが晴れて、彼は故郷のジュネーヴに戻り、父の配慮で、養女として一緒に育てられたエリザベスと結婚するが、その夜、怪物が現れて彼女は殺される。創造主たる人間に絶望した怪物は、復讐のためフランケンシュタインの友人や妻を次々と殺害したということになる。憎悪に駆られたフランケンシュタインは怪物を追跡し、北極海までたどり着くが途中で倒れ、ウォルトンの船に拾われたのだった。
全てを語り終えたフランケンシュタインは、怪物を殺すようにとウォルトンに頼み、船上で息を引き取る。また、ウォルトンは船員たちの安全を考慮し、北極点到達を諦め、帰路につく。そして、創造主から名も与えられなかった怪物は、創造主の遺体の前に現れ、その死を嘆く。そこに現れたウォルトンに自分の心情を語った後、北極点で自ら焼け死ぬために北極海へと消える。怪物のその後は誰も知らない。
慣用[ソースを編集]
英語においては、「フランケンシュタイン」は「自ら創造したものに滅ぼされる者」「自ら撒いてしまった呪い(または災い)の種」といった意味の慣用句としても使われている。
後世の創作での変容[ソースを編集]1931年映画版のフランケンシュタインの怪物(演:ボリス・カーロフ)「フランケンシュタインの怪物」も参照
本作の怪物には固有名詞がなく、また主人公ヴィクター・フランケンシュタインは一介の大学生で博士号は持たない。元来この怪物は極めて知的で、たった数か月で複数の言語を独学でマスターするほどであった。しかし後世の映像化・創作・パロディ作品では、主人公が博士であったり、怪物の知性が低い、あるいは生まれつき凶暴とするなど、原作とはかけ離れた翻案がなされている例が多い。特に、1931年にユニバーサル・ピクチャーズが製作した映画『フランケンシュタイン』において描かれた怪物は、いかつい不気味な大男で、全身の皮膚に人造人間であることを意味する縫い目があり、特徴的な四角形の頭部[注釈 3]といったビジュアルであった。これが後世に典型的イメージとして広く定着し、また本来は「フランケンシュタインによる怪物」であるはずが、いつのまにか怪物自身を指して「フランケンシュタイン」と呼称されるようになった。しかし、これはあきらかな間違いである。作者はこの作品が舞台化された際の台本を見たときに、『怪物』の名前が____(アンダーバー)だった事を喜んだ記録が残っている。名前がない事にこだわっていた証拠である。
派生作品[ソースを編集]「フランケンシュタインを題材とした映画の一覧」、「フランケンシュタインを題材とした舞台作品の一覧」、および「Category:フランケンシュタインをベースとしたフィクション作品」を参照
文献[ソースを編集]
Mary Shelly著『Frankenstein』(Dover Thrift Edition, 1994-2017年)。これは1831年版。
日本語訳[ソースを編集]
『巨人の復讐 フランケンシュタイン』山本政喜訳(「世界大衆文学全集」第11) 新人社 1948年
『フランケンシュタイン』角川文庫 1968年
『フランケンシュタイン』宍戸儀一訳 (「サスペンス・ノベル選集」第4) 日本出版協同 1953年
『フランケンシュタイン』臼田昭訳 (ゴシック叢書6:国書刊行会)、1979年
内容.フランケンシュタイン、変身、寿限有の寿限無/(臼田昭解説.シェリー夫人の生涯と作品)
『フランケンシュタイン』森下弓子訳(創元推理文庫:東京創元社) 1984年 ISBN 4-488-53201-2
解説は新藤純子、詳細な年譜入り。
『フランケンシュタインあるいは現代のプロメシュース』菅沼慶一訳 共同文化社 2003年 ISBN 4-877-39087-1
『フランケンシュタイン』小林章夫訳、光文社古典新訳文庫、2010年10月
『フランケンシュタイン』芹澤恵訳、新潮文庫、2015年1月 ISBN 4-102-18651-4
『新訳 フランケンシュタイン』田内志文訳、角川文庫、2015年2月 ISBN 4-041-01240-6
関連文献[ソースを編集]
『メアリ・シェリーとフランケンシュタイン』 モネット・ヴァカン著 辻由美訳 パピルス 1991年11月25日 ISBN 4-938165-04-X
年譜: p234 - 235、参考文献: p236 - 242
原著: Monette Vacquin, Frankenstein: ou les delieres de la raison, Francois Bourin, 1989; 4 aout 1994: ISBN 2-87686-028-7
『怪物の黙示録 『フランケンシュタイン』を読む』 スティーヴン・バン編 遠藤徹訳 青弓社 1997年8月 ISBN 4-7872-9122-X
原著: Stephen Bann, Frankenstein, Creation and Monstrosity - Critical Views, Consortium Book Sales & Dist, 1995. ISBN 0-948462-59-0 ; Oct 1997, ISBN 0-948462-60-4
『フランケンシュタイン』 久守和子・中川僚子著 ミネルヴァ書房 2006年12月 ISBN 4-623-04688-5
『身体で読むファンタジー フランケンシュタインからもののけ姫まで』 吉田純子人文書院 2004年12月 ISBN 4-409-24071-4
『現代思想で読むフランケンシュタイン』 J=J・ルセルクル著 今村仁司・澤里岳史訳 『講談社選書メチエ』105 講談社 1997年5月 ISBN 4-06-258105-1
原著: Jean-Jacques Lecercle, Frankenstein : Mythe et Philosophie, Paris, Presses Universitaires de France. ISBN 2-13-041872-4
『フランケンシュタイン・コンプレックス―人間は、いつ怪物になるのか』小野俊太郎 青草書房 2009年11月 ISBN 978-4-903735-14-6
『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』廣野由美子 中公新書 2005年3月 ISBN 4-12-101790-0
『フランケンシュタインとは何か―怪物の倫理学』武田悠一 彩流社 2014年9月 ISBN 978-4-7791-2049-7
関連項目[ソースを編集]
フランケンシュタイン・コンプレックス
マッドサイエンティスト
作家の悪夢
ディオダティ荘の怪奇談義
吸血鬼 (ポリドリ) - 本作と同じくディオダティ荘の怪奇談義から執筆された作品
ゴーレム
失楽園
フランケンシュタイン城
中国 - リチャード・ニクソンは後年、中国門戸開放の際に「中国というフランケンシュタインを造ってしまったことを心配している」と話した[3][4]。
脚注[ソースを編集][脚注の使い方]
注釈[ソースを編集]^ プロメテウス(プロメーテウス)は、ギリシア神話において、人間に火(知恵)を授け、一説には人間を創造したとも言われる神のこと。詳細は当該ページを参照。
^ 「フランケンシュタイン」は怪物の名前として定着しており、小野俊太郎のように創造者を「ヴィクター」とし、被造物を「怪物」と分ける者もいる。