フランク・コンラッド
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さて民間企業の商業放送には中波618-1,052kHzと短波[注釈 14]2.0-3.0MHzの2つのバンドが勧告された[注釈 15]

1922年 第一回国内無線会議の放送バンドプラン[25]周波数帯局種
146-162kHzGovernment broadcasting (海軍慰安放送や連邦政府放送)
200-285.7kHzGovernment & Public broadcasting
 (海軍慰安放送、連邦政府放送。および州政府、大学等による公共放送)
400-462kHzGovernment & Public broadcasting
 (海軍慰安放送、連邦政府放送。および州政府、大学等による公共放送)
606-618kHzGovernment & Public broadcasting
 (海軍慰安放送、連邦政府放送。および州政府、大学等による公共放送)
618-1,052kHzPrivate & Toll broadcasting (商業放送と有料放送)
1,052-1,091kHzCity & State Public Safety broadcasting (州政府、大都市が行う災害緊急放送)
2.0-3.0MHzPrivate & Toll broadcasting (商業放送と有料放送)

コンラッドはこの新しい放送バンド2.0-3.0MHzを番組中継用に利用しようと考えていたが、あまりにも急激にラジオ放送局数が増加していたため、この勧告案はすぐに陳腐化しまいその実施が見送られていた。さらに1923年1月3日、アナコスティア海軍航空局NOFは本来の航空無線の研究に専念することとなり、娯楽放送を終了した[26]
バンドプランの改正

1923年3月に再び召集された第二回国内無線会議[注釈 16]で、放送バンドは550-1,040kHz(A級放送局)と、1,050-1,350kHz(B級放送局)に集約する新しい勧告案が採択された。アメリカでいわゆる国営放送や州営放送が見送られたのはこの会議だった。また長波ラジオ放送が断念され、2.0MHz以上の短波帯を「Reserved」とするなか、2.100MHzと2.300MHzの2波だけは「Government[注釈 17]」とした[27]

1923年 第二回国内無線会議の放送バンドプランと短波の分配[27]周波数帯局種
550-1,040kHz[注釈 18]Class A broadcasting (クラスA 放送)
1,050-1,350kHzClass B broadcasting (クラスB 放送)
2.0-2.1MHzReserve (業務別分配を保留し、商務省より個別に特別免許を付与)
2.1MHzGovernment (連邦政府専用)
2.1-2.3MHzReserve (業務別分配を保留し、商務省より個別に特別免許を付与)
2.3MHzGovernment (連邦政府専用)
2.3MHz以上Reserve (業務別分配を保留し、商務省より個別に特別免許を付与)

この第二回国内無線会議の新勧告案を受けて、1923年5月15日より商務省電波局は以下の新放送バンドを施行した[28][注釈 19]

クラスB(500Wを超え1KW以下):550-800kHz、870-1,000kHz[注釈 20]

クラスA(出力500W以下):1,000-1,350kHz

KDKAはピッツバーグ市内の4つの教会から毎週交代で日曜礼拝を中継していたが、少なくともポイント・ブリーズの長老派教会では、短波の「Reserved」帯の許可を受けて、短波中継回線を実用化している[29]
アマチュア無線から放送を保護

ラジオ放送が普及するにつれて、1,500kHzで運用されていたアマチュア無線の電波が一般家庭のラジオ受信機に混信を与えることが社会問題化していた[30][注釈 21]。1923年6月28日、商務省電波局はそれまで単波免許だったアマチュア業務に対し1,500-2,000kHzの帯域免許を与える[注釈 22]と同時に、平日の20:00-22:30および日曜午前の礼拝タイムの運用を禁止する規則改正を告示し、即日施行した[31][32]。仕事や学校のあと、夕食を済ませてから無線交信を楽しんでいたほとんどのアマチュア無線家には大きな痛手となったが、この規則改正によりラジオ受信機へのアマチュア無線の混信トラブルは急減した。
短波中継機8XSの開発と試験

1922年6月、コンラッドらはピッツバーグのKDKAから180kmほど離れたエリー湖南岸のクリーブランドへ短波で同時送信して、そこから中波で再送信することを決めた[33]。クリーブランドにはKDKAの中波360m(周波数833kHz)の電波がほとんど届かないからだ。

クリーブランドよりもっと離れているのに良好に受信できる地点もあることから、ウェスティングハウスの技術陣にはこれら受信不良エリアの解消を会社から求められていたのである。この中継のためにコンラッドは250Wの真空管4本パラレルの波長80-91m(周波数3.3-3.75MHz)自励発振器を組み立て、AM変調器には同じ250Wの真空管5本を使った[34]

1922年9月1日、ウェスティングハウス電気製造会社を名義人とする新しい実験局8XS[35][注釈 23]の、送信機の試験調整がはじまった。工場の屋上に太い銅管式の垂直型アンテナを建てて約800Wをアンテナに供給できた。周波数安定度が一番の課題であり、工場の製造ラインとは別に専用電源を設け、さらに周囲の振動を吸収するスプリング付き架台に送信機を載せるなどの苦労があった[34]

1922年10月27日の20時から2時間、KDKAの音声ラインを分岐して、短波中継機8XSに流し込んだ。これがKDKAの番組音声を実際に短波で送り出した最初である。

しかし想定外に変調音が歪んでしまい、その対策に悩まされ続けた。この伝搬試験は1923年1月まで続けられ、昼間は波長80m(3.75MHz)が、夜間になると波長91m(3.3MHz)の方が良好であることが分かってきた[36]
8XSによるクリーブランドへの短波中継「KDKA-KDPM-WBZ 短波中継回線」 KDKAから3MHz帯の短波でKDPMとWBZへ送られた。(1923)

工場の屋上に立てた実験局8XS(短波中継機)の銅管式垂直アンテナは接地がうまく機能しておらず、工場内の人や機械の動きがアンテナの共振周波数を揺らがせていることが分かった。そこで12m長のゲージ型ワイヤーを平行に2条渡し、その7m下にも同型のものをカウンターポイズとして張り、両者を結ぶ7mの垂直エレメント部の中央から給電する方法とっている。またクリーブランドに中波放送局KDPMを建設中だったが、短波の受信アンテナが風で揺れて、受信レベルに強弱が付くのを防ぐため、室内に一辺2.4mの大型ループアンテナを設置した[37]

1923年3月4日、8XSによるピッツバーグKDKAからクリーブランドKDPMへの短波中継の実用化試験放送が始まった[38]。なおウェスティングハウス電気製造会社は後述するヘイスティングスKFKXへの中継を「短波中継の実用第一号」としているが、クリーブランドの住民は今まで聞こえなかったKDKAの番組が短波中継により地元KDPMで聞けることを大歓迎している。その意味において、1923年3月4日を「短波中継の実用化の日」と捉えることもできるだろう。

8XSの短波は、遠く640km離れたマサチューセッツ州スプリングフィールドの系列局WBZでも良好に受かったため、そちらへも不定期に中継放送が行われている[39]。東海岸(大西洋)に近いスプリングフィールドWBZは、KDKAからクリーブランドKDPMまでの距離のおよそ3.5倍あった。

コンラッドは全米20都市のアマチュア無線家や受信マニアらに8XSの受信試験を依頼したところ、全員から大変良好と報告が来たため、短波が番組中継に使えることを確信した[40]
大西洋を横断する短波中継計画

1922年5月16日、英国でラジオの試験放送を開始したメトロポリタン・ヴィッカーズ電気会社は元英国ウェスティングハウス電気製造会社である。英国ではマルコーニ科学機器会社のライトル2MTが1922年2月14日に[41]、ロンドン2LOが同年5月11日に定時放送を初めており[42]、メトロポリタン・ヴィッカーズ電気会社のマンチェスター2ZYによる試験放送が5月16日に続いた[43]

1922年夏、メトロポリタン・ヴィッカーズ電気会社のフレミング(A.P.M. Fleming)は放送技術のノウハウを相談するため、元・親会社であるウェスティングハウス電機製造会社を訪ねた。その際に8XSによる短波中継計画の話を聞いたフレミングは、経験豊かなKDKAの番組をマンチェスター2ZYへ短波中継する事を願ったが、まだこの時点では夢物語だった[44]

1922年10月18日、英国郵政庁GPOの調停で、英国放送会社BBC(British Broadcasting Company)[注釈 24]が誕生。メトロポリタン・ヴィッカーズ電気会社のマンチェスター2ZYはマルコーニ科学機器社のロンドン2LOとともに、新会社BBCへ移管された。

1923年3月4日より始まったクリーブランドKDPMへの短波中継が順調に滑り出した頃、メトロポリタン・ヴィッカーズ電気会社はウェスティングハウス電機製造会社と技術提携を結び、「大西洋横断短波中継」に合意した[45]


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