フジ_(植物)
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花期は春から初夏(4 - 6月ごろ)で[17][9]、フジ属の中で最も長い総状花序を持ち、花序は枝の先端に出て下に垂れるように伸びて100 cmにも達し、多数の花を付ける[18][注 2]。本種である牛島のフジは明治時代には約300 cmの花序をつけたことがあり、それから生まれた栽培品種のノダナガフジ(紫長藤、九尺藤)も条件により花序が200 cmに達する[19][20][21]。その花数は時に100個を超え、開花はその花序のつけ根側から先端に向かって咲いていく[11]。開花は数日かかるので、その初期には花序は綺麗な倒円錐形をなす[6]。花序の軸や小花柄には白く短い毛が密生している。苞は狭卵形で長さ1.5ミリメートル (mm) ほど、小花柄は長さ15 - 25 mm。花は紫から淡紅色(いわゆる藤色)、または白色である[10]。萼は椀型で裂片は5,そのうち上の2つがやや合着し、最下のものが一番大きいのはこの属の特徴であるが、本種では最下の裂片は狭三角形で先端が長く伸びている。旗弁(上側の立っている花弁)はほぼ円形をしており、径10 - 13 mm、先端がわずかに突き出しており、基部は心形となっていて短い爪状突起があり、舷部の基部の中央には襞がある。ちなみにこの旗弁の基部の突起は、翼弁を押さえることで旗弁がしっかり立ち上がるようになる、という意味がある[6]。翼弁(側面にある花弁)は竜骨弁(下面のボート状で中に雄蕊や雌蘂を納める花弁)とほぼ長さが同じで長さ15 - 20 mm、やや長い爪状突起がある。雄蕊は10本あり、左右2群に分かれるが、旗弁の側の1本は離生し、長さ13 - 17 mm。

果期は10 - 12月[9]。花が終わると大型の豆果が垂れ下がる[9]。豆果(さや)は長さ10 - 19 cm、幅2 - 2.5 cmもあり、狭倒卵形で扁平になっており、表面にはビロード状の短い毛を密生している。その果皮は厚く、熟すると木質化してかたくなり[11]、冬になって乾燥すると左右の2片に裂け、それぞれがねじれて種子を飛び散らせる形で散布する[9]。種子は円形で扁平、径11 - 12 mm、褐色で光沢がある。

冬芽は鱗芽で互生し、長卵形で赤褐色をしており2 - 3枚の芽鱗に包まれている[14]。冬芽の基部は横に膨らむ[14]。短枝には多数の冬芽がつく[14]。葉痕は半円形で、維管束痕は3個つく[14]

樹皮







生態など

つるに巻きついて登り、樹冠に広がる。直射日光の差す場所を好む、好日性植物である。花序は長くしだれて、20 cmから80 cmに達する。他のマメ科植物同様、夜間は葉をすぼめる。

本種は高木に巻き付いて登り、その樹幹に葉を広げる[8]。その枝葉は高木の葉を被って日光を遮り、また幹は樹木の幹を締め付けて肥大成長を阻害するので、樹木は生長を阻害され、時に枯死する。

種子散布に関しては、上述の通りに乾燥すると鞘が二つに裂開し、それぞれがよじれることで種子を飛ばすが、この際の種子の飛ぶ力は大変なもので、当たって怪我をした人が実在するという[22]。また寺田寅彦は、種子が莢から飛び出して障子に当たったことから興味を持ち、実験によって初速を計算し、秒速10 mで飛んでいくこと割り出している[9]。また、それについて随筆[23]を書いているとのこと[6]
近縁種・類似種など

フジの所属するフジ属には日本、中国と北アメリカに合わせて6種が知られ[24]、そのうちで日本に自生するのは本種の他に以下の種がある[25]

W. brachybotrys ヤマフジ

フジとヤマフジは蔓の巻き方が異なるほか、違いは以下の通り。

ヤマフジは葉の側小葉が4?6対と、フジ(5?9対)よりかなり少ない。

ヤマフジの葉裏には毛がある。フジでは成熟時に無毛となる。

ヤマフジの花序は長さが10?20 cmにしかならず、フジ(20-90 cm)より遙かに短い。そこに花の柄が同じかやや長いので、花序の形は細長い紐状でなく、まとまった房のようになる。

ヤマフジの苞は卵形、フジでは狭卵形。

ヤマフジは種子が黒褐色(フジは褐色)。

ヤマフジは蔓が左巻き(Z巻き)で、右巻き(S巻き)のフジと逆。

なおヤマフジは京都奈良県滋賀県には見られないので、古代にフジとされるものにはヤマフジはほぼ含まれない[26]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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