この大改革に伴う編成改編の目標は、当時絶好調の視聴率を誇るTBSを、どうやって攻め上げるかであった[57]。その頃のTBSは『全員集合』、『クイズダービー』、『日本昔ばなし』など30%を超す番組5本をはじめ、20%台のものが11本というすさまじさであった[57]。そこで村上専務は日枝編成局長と話して、解決が長期化する『スター千一夜』問題はさておいて、ゴールデンタイムに20%を超える番組を3、4本制作することを当面の目標とした[57]。そして40歳前後の若いスタッフによる編成局によって、1981年4月の『Dr.スランプ』、『欽ドン!』、『時代劇スペシャル』などを皮切りに、『スタ千』後の10月改編では、『なるほど!ザ・ワールド』、『いじわるばあさん』、『オレたちひょうきん族』、『北の国から』、『うる星やつら』など軒並み20?30%のヒット作が繰り出された[58]。これによって、同年11月の月間視聴率でフジは、14年ぶりに月間三冠王を達成。また翌年には、年間三冠王になり、この勢いは止まることなく、遂に12年間にわたり三冠王を続けることになった[59]。 2011年以降の深刻な視聴率低迷はフジテレビのみならず、親会社のフジ・メディア・ホールディングスの業績や株価にも悪影響を及ぼしている。ただし、これはフジテレビだけに限らずテレビメディア市場全体が「テレビ離れ」の影響で厳しい状況に置かれていることを考慮する必要がある。
好調な時代からの深刻な視聴率低迷と業績不振
2011年、年間視聴率3冠を2003年以来8年ぶりに日本テレビに奪われる(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム。以下略)。この年のフジテレビは全日視聴率が日本テレビと同率1位の1冠のみに終わった。2011年の年度視聴率においても、3冠を日本テレビに奪われている[60]。
2012年、年間視聴率ではゴールデン、プライム、全日の全ての時間帯で3位に後退[61]。2013年1月第4週(同月28日 - 2月3日)における全日帯の平均視聴率と2013年8月の平均視聴率では4位に後退した[62][63]。
かつては企業価値評価の指標である株式時価総額で日本テレビ(現在の上場会社は日本テレビホールディングス、以下「日テレHD」)と互角かそれを上回る状態であったが、2014年春頃から民放トップの日テレHDに大きく溝を開けられてしまい、2015年11月現在のフジの株式時価総額は日テレHDの6割程度に留まっている。また、2015年夏頃からは長年業績低迷が続いているTBS(現在の上場会社はTBSホールディングス、以下「TBSHD」)の株式時価総額をも下回ってしまい、株式市場でも僅か数年で民放トップから3位にまで転落した。フジが株式時価総額でTBSHD(前身の東京放送時代も含む)を下回ったのは、1997年8月8日の東証1部上場以来初の出来事である。
2014年度を以て放送収入(地上波放送におけるタイムCMとスポットCMの年度売上高の合計)でもついに日本テレビに追い抜かれてしまい、30年に渡り守ってきた放送収入民放トップの座から陥落した[注釈 30]。
2015年1月第1週(2014年12月29日から2015年1月4日まで)の週間平均視聴率が、ゴールデン・プライムの2部門でテレビ東京を下回り、フジテレビは1962年12月3日にビデオリサーチが視聴率の計測を開始してから初めて週間平均視聴率でNHK総合・在京キー局中[注釈 31]単独最下位となった。フジテレビがテレビ東京に週間平均視聴率で負けたのは、テレビ東京の前身・東京12チャンネル時代も含めて初[注釈 32]の出来事である。なお、2015年1月4日の1日平均視聴率では前述の2部門に加え全日でもテレビ東京に敗北した[64]。その後も業績と裏番組の影響からの視聴率の悪化に歯止めがかからない状態が続き、2015年10月30日に発表された2015年度第2四半期決算発表では利益の全てが赤字に転落し[65]、1959年の開局以来初の赤字決算となった。更に正月に続いて11月第4週(11月23日から11月29日まで)の週間平均視聴率でもゴールデンでテレビ東京に敗北した[66]。
2015年の年間平均視聴率では全日が3位に留まったものの、ゴールデン・プライム2部門が昨年4位だったTBSテレビに抜かれ4位に後退した。フジテレビが年間平均視聴率でTBSテレビを下回ったのは、1981年以来34年ぶりの出来事である[67]。更に2016年上期以降のゴールデン帯の平均視聴率においては前年上期以上にTBSテレビに大きく水をあけられる結果となり[68]、2016年の年間・年度平均視聴率はついに全日でもTBSテレビに抜かれてしまい、全ての部門(全日・ゴールデン・プライム・ノンプライム)がNHK総合・在京キー局6局中5位に転落した。
上述の各利益に加えて年間売上高の減少も深刻であり、最大で3829億円(2009年3月期)あった年間売上高も2016年3月期の決算では20年ぶり[注釈 33]に3000億円の大台を割ってしまった。その裏で視聴率が好調な日本テレビが3000億円の大台を超えたため、1984年から31年間維持してきた年間売上高民放トップの座からも陥落し[69]、純利益でもテレビ東京の純利益を大きく下回る状況となってしまった[70]。更に2017年3月期の決算では営業利益・経常利益・純利益の全てがテレビ東京を下回り、在京キー局中最下位となった。
しかしながら、平日朝の情報番組は軒並み好調で、2014年[71]と2015年[72]には『めざましテレビ・第2部』『とくダネ!』『ノンストップ!』の3番組が年間平均視聴率で民放横並び1位を同時に獲得している。また、平日6時から正午までの午前帯でみればフジテレビは2010年から2015年まで6年連続で民放横並び1位を記録している[72]。
一方、2015年から民放公式動画配信サービスである「TVer」の開始、2016年10月3日からはビデオリサーチの関東地区における視聴率調査で、従前のリアルタイム視聴率に加え、新たにタイムシフト視聴率および個人視聴率の調査が開始された(2020年からは対象を全国に拡張)。これ以降広告の取引指標を世帯視聴率から個人視聴率に変更し、13?49歳を“キー特性”とした番組改編を行うようになった。この改編が功を奏し、2020年度には個人視聴率で日本テレビに次ぐ2位につけている[73]。
2022年には「TVer」「FOD」といった配信において「AVOD」(広告付き動画配信)が、再生数、UB(ユニークブラウザ)数、総視聴時間のすべての指標で民放1位となっている[74]。