フグ
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1887年、高橋順太郎教授(東京帝国大学医学大学薬理学)と助教授の猪子吉人と共にフグ毒の研究を始め、1889年にフグ毒が生魚の体内にあること、水に溶けやすいことなどから、それがタンパク質酵素)様のものでないことを証明し、毒力表を作成した[17]

1907年 田原良純が分離に成功したフグ毒をテトロドトキシンと命名。鎮痛作用があることを発見した。

1950年 テトロドトキシンの単離結晶化に成功。

1964年 テトロドトキシンの化学構造が発表される。

名称フグとブリを描いた歌川広重浮世絵
河豚

漢字で「河豚」と表記するが、「河」と書くのは中国で食用とされるメフグが河川など淡水域に生息する種であるためで[18]、また、このメフグが豚のような鳴き声を発することから「豚」の文字があてられているとされる[18]

中国語では「河豚」「河豚魚」「河?」という表記を使っている。『山海経』などの古典では「鮭」の字を当てている場合がある[19]
呼称

以下のような別称・地方名がある。
ふく
下関や北九州などでは「ふく」と呼ばれる[7][2]。「不遇」あるいは「不具」につながる「ふぐ」ではなく、縁起をかついで「福」につながる「ふく」と呼ぶ。
てっぽう[20]
大阪では「たまに(偶に)当たる」を「弾に当たる」「当たると死ぬ」に掛けた洒落から「てっぽう(鉄砲)」と呼ぶ[20]。「てっさ(てっぽうのさしみ)」「てっちり(てっぽうのちり鍋)」という料理名はここから来ている[18][2]。フグ食禁止令のために「テツ」の暗号が用いられたともいわれる[2]
がんば
長崎県島原地方でフグを指す方言「がんば」は、「がんば置いてでん食わんば(棺桶を置いてでも食わねば)」の略といわれている。
ナゴヤフグ(名古屋フグ)
瀬戸内海地方におけるナシフグコモンフグヒガンフグ等の別称。「当たれば身の終わり(美濃尾張)になる」→「尾張といえば名古屋」の連想から「ナゴヤフグ」となったとされる[21]

天然のフグを漁獲する方法は定置網、はえ縄、一本釣りなど多種多様である[2]。天然物のトラフグは尻鰭が白く[22]、しっかりとした尾鰭を持っている[23](尾鰭は黒色)。トラフグの代用食材となるカラスフグの場合には尻鰭も黒いため区別できる[22]

日本における食用フグの産地としては山口県下関市が有名であるが、下関はフグの産地というよりは集積地である。下関近海でもフグは獲れるが、それ以上の数のフグが天然物も養殖物も、日本全国や中国や韓国などの海外からも下関に集められる。下関がフグの本場と言われる理由として、明治期に全国で最初にフグ食が解禁になった地が下関であり(ふぐ料理公許第1号店は下関市の春帆楼。その後、山口県のみフグ食解禁の時期がしばらく続いた。)、それ以降の下関には多くのフグ料理店ができ、現在のフグ料理の多くが下関で考え出されたことなどが背景にある。これらに加え、フグは猛毒を蓄えているため、水揚げ後の加工が重要であるが、この加工業者や加工場が前述の歴史的背景などから下関に集積している点が大きい。

最近では水揚げ漁港の側で加工場などの整備を行い、地場の名産品とすべく独自ブランドを立ち上げるなどの努力も行われている。大阪府大阪市は消費で有名であり、愛知県日間賀島などもフグを観光として取り上げている。しかし、加工業者や加工場の質、数の問題もあり、漁獲されたフグの多くが下関に集中するという傾向にある。
輪島フグ
フグを食べる文化があまりなかった石川県輪島市が、ブランド化を図り始めたフグ。市内の料理店で3240円の統一料金でフグ料理を含むメニューを味わえるほか、輪島朝市では唐揚げを挟んだ「フグバーガー」が販売されている。輪島でのフグの地方名は「デブク」である[24]
讃岐でんぶく
香川県で水揚げされるナシフグに対し、香川県漁連が認定しているブランド。2010年3月に商標登録が認められた[25]
玄海とらふぐ
福岡県宗像市の漁港で、従来は下関漁港に水揚げしていたフグの一部をブランド化を目指して売り出したもの。

高級魚であるため養殖が行われている。養殖物のトラフグは天然物に比べて尾鰭が短く、全体的に黄色を帯びた色である[23]

愛媛県愛南町では陸上養殖が行われている。だが養殖の生産量が急増したのは、当時の水産庁によるトラフグ養殖推進の方針や、熊本県などのように養殖フグ生産地の各自治体による養殖マニュアルが作成された1991年以降である。当時ハマチ等を養殖していた業者がトラフグ養殖に転換し、生産量が増加した。平成後期になると無毒のフグを養殖できるようになった[26]

2005年には佐賀県嬉野町(現嬉野市)が厚生労働省に、フグ肝を食用として提供出来るよう特区を提案したが、現時点では100%の安全性が保証ができないと判断され却下されている。
流通
都道府県別

日本での県別漁獲量(2008年)[27]は以下の通り。なお、全国の水揚げの約6割が大阪で消費されている。

天然順位都道府県漁獲量 (t)構成比
1福岡54511%
2山口49810%
3島根4819%
4長崎3667%
5愛媛3417%
6石川3397%
7香川2745%
8愛知2595%
9富山2114%
10三重1994%
(計)全国計5,207

養殖順位都道府県漁獲量 (t)構成比
1長崎2,49660%
2熊本55413%
3香川1834%
4兵庫1524%
5福井1203%
6佐賀1143%
7山口832%
8鹿児島150.4%
9三重10.02%
(計)全国計4,138

輸入

2002年、初めてフグの輸入量が国内生産量を上回った[28]。2002年の輸入先の99%は中国であり、残り1%は韓国である。近年は養殖技術の向上により、これらの国の養殖フグも大量に輸入されている。

なお、中国産食品の安全性問題はフグ関連でも発生している。アメリカにおける、中国産のアンコウの切り身でのフグ・フグ毒の混入、及び日本と米国ハワイ州における中国産カワハギの切り身でのフグ・フグ毒の混入が代表例として挙げられる。
流通に関わる関連法規
日本
食用フグの種類と部位

日本近海においてもフグは数百種類生息しているが、種類によって毒を保有している部位が異なり、食用になる部位が全く無いものもいる。厚生省(現・厚生労働省)の「処理等により人の健康を損なうおそれがないと認められるフグの種類及び部位」によって食用可能なフグとされているのは21種で[2]、可食部位も筋肉、皮、精巣のいずれかである[2][29]。食用可能な種類と有毒種で見た目が似ているものがあり、キノコ類と同様、素人目には判断できない場合が多い[30]。さらに同じ種類の場合にも毒性に個体差があるほか[2]、生息海域や季節によって毒性に違いがみられる場合がある[2](日本近海産のクロサバフグは無毒であるが[13]、南シナ海産のクロサバフグは皮膚が弱毒で卵巣と肝臓が猛毒であることが判明している[31])。

一般消費者に対する未処理フグの販売は禁止されている[2]食品衛生法第6条第2号参照)。
フグの取扱い

フグ取扱資格は、国内統一資格ではなく都道府県ごとに定められていて、資格名称や資格取得方法に違いがあり、届け出後講習会を受講するだけで資格が与えられる地域もあれば、試験により資格を取得する地域もある。


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