フォーライフ・レコード
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事態を憂慮した日本レコード協会は定例理事会を開き「吉田、井上らの新レコード会社の販売は引き受けない」ことを申し合わせ[4]、各レコード会社にプレスも販売も認めないでくれと通達がまわった[25]。海外ではビートルズローリング・ストーンズレッド・ツェッペリンなど、当時から自分のレコード会社を持つアーティストは多かったが、それらも自分たちが録音したものを既成の大メーカーに売るという制作会社で、この時のような制作から販売までするということではなかった[5]

業界筋、ジャーナリスト間では実現できそうもない夢だよとの見方が大方であったが、マスメディアの反響の余りの大きさに小室、吉田、井上の3人は今更引くに引けなくなり意地でもやり抜こうと結束[10][12]。吉田の友人の中には、プロダクションから吊るし上げに遭う者も出た。しかし多くの若者、フォークファンは賛辞を送った。2008年に吉田の曲を全編にわたって使用する映画『結婚しようよ』を監督した佐々部清は「レコード会社に喧嘩売った幕末の志士みたいでカッコよかった」と述べている[26]。吉田ファンの重松清は、自身を「フォーライフ世代」と述べている[27]

最も問題となったのはレコードのプレスと流通ルートであった。それらは殆んど大手レコード会社が持っていたため業界から圧力をかけられ、やむなく人件費が日本より安くなる韓国でのプレスや通信販売まで検討[10]。ただ大きな売上が予想されるだけに手掛けたいというのが各レコード会社の本音ではあった[4]。そこへ当時ポニーおよびキャニオンレコード(現:ポニーキャニオン)の社長であった石田達郎が救いの手を差し伸べ、プレス・販売元をキャニオンレコード[注 1]、販売委託をポニーが受け持った[23][25][29]
会社発足

1975年4月11日、高輪プリンスホテルで新レコード会社発足記者会見。この会見では300人の報道陣が集まり関心の高さを示した[10][14]。同年6月1日、小室、吉田、井上に、後から参加した泉谷のフォーク4人衆が「フォーライフ・レコード」を正式発足させた[5][12]。フォーライフ発足時のキャッチコピーは、私たちに音楽の流れを変えることができるでしょうかだった[24]。フォーライフの設立は革命であり[24]サブカルチャーからメインカルチャーに躍り出た70年代フォークの一つの到達点だった[24]。しかし、他のアーティストはあまり参加せず、野澤享司[31]がセカンド・アルバムをリリースした程度であった。業界全体売上が184億円だった1975年初年度の売上高は31億円に達した[29]。翌1976年の売上高は公称41億4千万円、実質20億7千万円といわれた[1]
その後

第2・第3のフォーライフの追随を期待したが、そういった動きは全く無かった[10][32][33]世間からは「果たしていつまでいつまで続くか」と冷ややかな目で見られた[34]

発売タイトルがアイドル歌謡曲ロックバンドに偏重するようになると、創業メンバーに足並みの乱れが生じる。

1977年3月期の総売上が8億円になったことで小室に代わり吉田が代表取締役社長に就任[1][12]。井上、泉谷は吉田の社長就任に反対したが[15]、「みんなの意見を聞いていたら3ヵ月で出るレコードが1年かかる。フォーライフの再建は俺しかない」と吉田が社長に就任[15]。社長交代で小室、井上、泉谷の3人は経営から手を引き、一プロデューサーになり、吉田のワンマン体制が敷かれた[12][15]。各メディアは「経営不振、内紛が原因」と報じた[1]。吉田は自身の音楽活動を辞め社長業に専念[15]。大手プロダクションやレコード会社社長と接待ゴルフをしたり酒を飲み交わした[15]。吉田のプロデュースで原田真二がデビュー、大きな利益を挙げたものの、その原田が早々に移籍するなど、フォーライフ側の狙う方向性と、次世代アーティストの理想との間に乖離が出てきた[6]。吉田が社長になり水谷豊など歌謡曲も手がけるようになったことに対し、泉谷は、以前のフォーライフの考え方と違うと問題を提起、同年7月13日に退社[18][35][36]。作り手側の理想と、利益を生み出さねばならぬレコード会社の現実という問題に直面することになった[6]。泉谷と他の3人は10年間仲違いがあり[19]、泉谷は「フォークの裏切り者」のレッテルを貼られライブをやってもお客が入らなくなり[19]、その頃、向田邦子からオファーがあったのが役者の仕事だった[19]1982年、吉田に代わり後藤が社長に就任した。販売・流通は後の1990年代にポニーキャニオンから離れ、BMGジャパン(現:アリオラジャパン)、SMEJ(現:ソニー・ミュージックソリューションズ)に移管した。


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