フォーティテュード作戦
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B1Aは非常に優秀だと言われ、ドイツが英国に送り込んだスパイ全員が、実際にはMI5の手中に落ちていたことをドイツ側は最後まで知らなかった[* 4]。MI5は彼らを通じてドイツ諜報機関に侵攻作戦の誤った情報を流す事を計画した。それらのスパイを通じてドイツに送られる間違った情報や報告書は、欺瞞作戦担当官がドイツ軍に与えたいイメージや印象に沿うように注意深く統制された。

フォーティテュード作戦のための3人の主要な二重スパイは以下の通り:

ガーボ - フアン・プホル、スペイン(カタルーニャ)人[2]。ドイツ側のコードネームは「アラベル」。スペイン内戦を通じてファシズムと共産主義に対して嫌悪感を持つようになり、イギリスを助けるためドイツ諜報組織に雇われる事にした奇人(ドイツ諜報組織に入る前に英国にアプローチした時は断られている)。彼はドイツ諜報組織のために英国内に於いて最大27人にもなる巨大なスパイ網を作りあげたが、実際は彼以外のスパイは全員架空の人物で、実在しなかった[2]。巨大なスパイ網もそのスパイ網からもたらされる情報も全てフォーティテュード作戦の一環だったのである[2]。皮肉な事に彼はDデイの後にドイツから鉄十字章を与えられた[* 5]。また、ガーボは二重スパイとしての働きを英国に認められ英国から大英帝国勲章も受章している(ただしスパイとしての働きを公式に認めるのは危険だったため極秘での授賞だった)。

ブルータス - ポーランド軍士官のロマン・ガービー=チェルニアウスキー[3]。ポーランド占領後はフランスで連合軍のためのスパイとして活動していたが情報が漏洩しドイツ軍に逮捕される。その後、仲間を救うためにドイツのスパイとして働くチャンスを提供され英国に派遣されたが到着してすぐに英国の諜報組織に自首し、その後は英国のスパイとして偽の情報を送り続けた。戦後ポーランドが共産化してしまったため祖国に帰れず、英国で亡くなっている。

トライシクル - ユーゴスラビア人の弁護士ドゥシュコ・ポポフ[3]。ドイツ側のコードネームは「イヴァン」。ドイツ語が堪能でドイツ人の友人が多かったが実はナチスを嫌悪しており、ドイツ国防軍諜報部にスパイとして雇われ英国に送られた直後にロマンと同じように英国側に寝返っている。

フォーティテュード・ノース

フォーティテュード・ノースはスカンジナビアに対する架空の侵攻作戦で、2つの部分から構成されていた。第一は、ドイツ軍の撤退に伴って防御が弱くなったであろうドイツ占領下にあるスカンジナビアのいずれかの部分の再占領計画である。第二は、ノルウェーに対する襲撃である。

この作戦に割り当てられた(架空の)部隊は英第四軍で、スコットランドに位置していた。ドイツがスコットランドを空中から偵察することはほぼ不可能だったので、二重スパイを使って偽の情報を送り、無線通信員が英第四軍隷下の架空の部隊の同士の無線交信を装った。同時に、スウェーデン上空で偵察飛行を行う権利や緊急着陸した飛行機に燃料を補給する権利のような、ノルウェー侵攻のときに有用であろう譲歩を得るため、英国の外交官が中立国のスウェーデンで交渉を始めた。これらの交渉は実際にスウェーデンからそれらの権利を得ること自体が狙いではなく、交渉の内容がドイツ側に流れて連合国側がスウェーデンでの軍事行動を真剣に検討している、と誤認させる事を意図して行われた。

この結果ドイツ軍は連合軍によるノルウェー上陸を現実の脅威として捉え続け、その地に駐屯していた40万近くの兵力を動かす事無くスカンジナビア方面に駐屯させ続ける事となった。

英第四軍を構成している部隊は1944年を通じて変化した。本当の役割と編成を書類上偽装しただけの実在の部隊も含まれたが、全くの架空の部隊も多く含まれていた。作戦のピーク時点における編成は次の通りだった:


英第四軍(架空。司令部エディンバラ

英第二軍団(架空。司令部スターリング

第55師団(北部アイルランド

第58師団(架空。アバルー)

第113独立歩兵旅団(オークニー諸島シェトランド諸島に駐屯)


英第七軍団(架空。司令部ダンディー

英第52歩兵(ローランド)師団(ダンディー)

米第55歩兵師団(架空。アイスランド

米レンジャー大隊3個大隊(架空。アイスランド)


米第十五軍団(北部アイルランド)

第2歩兵師団

米第5歩兵師団

米第8歩兵師団


フォーティテュード・サウス

フォーティテュード・サウスは、連合軍のフランス上陸がパ・ド・カレーで行われるであろうことをドイツ軍に信じさせることを狙って実施された。パ・ド・カレーはイギリスから一番近いフランスの沿岸であり、その海岸の防衛が困難であったために、戦略的な側面から見た場合侵攻地点としては非常に論理的だった(ただしドイツ軍もそれに気づいておりフランス沿岸ではもっとも多くの施設が建設され、最も多くの兵によって守られていた)。


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