フェーベ_(衛星)
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観測はペルーボイデン天文台で行われ、写真を撮影したのはデリール・スチュワートである[10][11][12][13][14]。フェーベは、写真の分析によって衛星が発見された初めての例である。

フェーベは、ギリシア神話におけるティーターンの1人ポイベーにちなんで名付けられた。また Saturn IX と呼ばれることもある。名称を提案したのは発見者であるピッカリングであり、発見を報告する論文の中で、それまでに発見されていた土星の衛星を命名する慣習に従ってフェーベという名前を提案した[12]。なお、発見者はウィリアム・ヘンリー・ピッカリングであるが、発見を報告する一連の論文の著者はウィリアムの兄で同じく天文学者のエドワード・ピッカリングである[10][11][12][13]
観測と探査

土星の他の衛星とは異なり、フェーベはボイジャーが観測しやすい位置にはいなかった。ボイジャー2号1981年9月に数時間にわたってフェーベを観測している。この時の観測画像では、低い位相角から220万キロメートルの距離での画像が取得された。画像の中では11ピクセルのサイズがあり、暗い表面の中に明るい領域が存在することが判明した。

2004年に土星周回軌道に投入された探査機カッシーニはフェーベに接近して観測を行っている。2004年6月11日に 2,068 km の距離を通過して高解像度の画像を取得し、その詳細な表面の様子が明らかになった。ボイジャー2号の観測では高精度のフェーベの画像が得られていなかったため、フェーベに接近して高解像度の画像を得ることはカッシーニのミッションでも優先度の高いものであった[15]。そのためカッシーニの飛行経路はフェーベに接近するように意図的に設計されていた。フェーベの自転周期はおよそ9時間17分と短かったため、カッシーニはフェーベの全表面を観測することができた。この近接観測によってフェーベの質量はわずか 0.2% の不定性で測定されている[16]
軌道フェーベの軌道のアニメーション。
       土星 ·        フェーベ ·       タイタン

フェーベは逆行軌道であり、土星の自転の向きと逆向きに公転している。発見されてから2000年に複数の小さい衛星が発見されるまでの100年以上の間、フェーベは土星から最も遠い既知の衛星であった。主要な衛星の中でフェーベの内側にあるイアペトゥスのほぼ4倍の軌道長半径を持つ。またフェーベの軌道の周囲には似たような軌道を持つ衛星が複数発見されているが、その中では目立って大きなサイズを持つ。

土星の規則衛星は、イアペトゥスを除くと土星の赤道面に非常に近い軌道を持つ。外側の不規則衛星は中程度から大きな軌道離心率を持って公転しており、内側の衛星とは違って自転周期と公転周期は同期していないと考えられる (ただしヒペリオンは内側を公転しているが同期していない)。
フェーベ環フェーベ環の想像図。「 土星の環#フェーベ環」も参照

フェーベ環は土星の環の一つである。土星の赤道および他の環から 27° 傾いている。土星半径の128倍の距離から207倍の距離まで広がっており[17]、フェーベの軌道は土星半径の215倍とフェーベ環の領域よりやや外にある。また、環の厚みは土星の直径のおよそ20倍である[18]

フェーベ環の物質はフェーベへの微小隕石の衝突によって発生したチリが由来だと考えられているため、フェーベと同様に逆行軌道で公転しているはずである。従って、内側を順行軌道で公転するイアペトゥスとは逆向きの動きをしていることになる。環の物質は土星に向かって徐々に内側へと移動しており、一部はイアペトゥスの公転の先行半球に衝突する。これが、イアペトゥスの表面の二面性の要因になっていると考えられている[19][20][21][22]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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