フィンランド語の音韻構造を、国際音声記号 (IPA) を用いて示す。 フィンランド語における短母音には、次表に記すものがある。各枠の左方に文字を、右方にその発音方法を IPA でそれぞれ記す。 前舌中舌後舌 フィンランド語においては、日本語にはない母音があるので注意が必要である。 フィンランド語の母音は上の8つの短母音と、それを全て長母音化した8つの長母音、そして異なる短母音を2つ以上組み合わせた重母音(多くは二重母音)が全てである。長母音は、短母音字を2つ続け書きして表す:aa, ee, ii, oo, uu, yy, aa, oo。フィンランド語では、母音の長短が意味の区別に大きく影響する。例:tili 口座、tiili レンガ。 フィンランド語の子音をIPA にて示す。 両唇唇歯歯茎後部歯茎硬口蓋軟口蓋声門 上の表において、1つの枠に2つの小枠がある部分は、左が無声音、右が有声音であることを表す。また、( ) に囲まれた音素は通常外来語にのみ現れる。 フィンランド語の子音文字の発音は、おおむねそれと同じ字形の国際音声字母の示す音を表す。2, 3 ほど注意を付け加えると、 フィンランド語の子音について特徴的なこととして、-tt-, -ll-, -mm- など、同じ子音を重ねた重子音が多く使われることが挙げられる。例:kukka [kukk?] 「クッカ」(花)、ammatti [?mm?tti] 「アンマッティ」(職業)。このような重子音(日本語で言うところの促音)の存在は、ヨーロッパではイタリア語が有名であるが、フィンランド語における重子音の頻度はイタリア語よりもさらに多い。フィンランド語においては子音が重なっているか否かで異なる意味になることがかなり多く、きちんと区別して発音しなければならない。kuka(誰)- kukka (花)、pula(欠乏)- pulla (菓子パン)、kisa(競技)- kissa(猫)など。-rr-, -ll- を除けば日本語には慣れた発音である(綿 [wata] - 割った [watta]、未開 [mikai] - 密会 [mikkai]、加盟 [kamei] - 感銘 [kammei])が、日本語以外の言語ではこの類の発音や聞き取りの区別はかなり難しく、フィンランド語習得における難所の1つといわれることが多い。 フィンランド語のアクセントは、外来語,間投詞を除き必ず各単語の語頭の音節にピッチ(音程)の高いアクセントが付く。2語以上からなる合成語の場合は、その各要素の第1音節に副アクセントが置かれる。なお、日本語の橋と箸のようにピッチアクセントの違いで意味を区別することはない。 フィンランド語の音韻構造に基づく形態論的特徴の1つとして母音調和が挙げられる。音韻の節で取り上げた母音 A・E・I・O・U・Y・A・O の8文字の内、 Y・A・O は前母音、 A・O・U は後母音と呼ばれ、それぞれ別のグループに属する。また E と I は中立母音と呼ばれどちらのグループとも一緒になることが出来る[5]。母音調和が影響するのは、人称変化や格変化の時である。例えば、名詞の接格形(「?のところ(上、表面)に/で」の意)を作る格語尾は -lla と -lla があり、sohva(ソファ)は後母音のみを含むので接格形は sohvalla となり、名詞 Venaja(ロシア) は前母音と中立母音を含むので接格形は Venajalla となる(前母音と後母音は単語内で共存できない)。
母音
非円唇円唇非円唇円唇
狭i /i/y /y/u /u/
中央e /e/o /o/o /o/
広a /a/a /?/
"u" は、日本語の「う」よりももっと唇を円くして、尖らせて発音する。
"y" は、"i" の舌の位置のまま、唇の形を "u" にして発音する。
"o" は、"e" の舌の位置のまま、唇の形を "o" にして発音する。
日本語の「あ」は "a" と "a" の区別をしていないものなので注意が必要である。"a" は、唇を若干横長にした「あ」である。それに対し、"a" は、アメリカ英語の "hot" の "o" に近く、唇を縦長に大きく開け、さらに舌面を下方に押し下げて「あ」と発音する。
子音
鼻音m n ?
破裂音p(b) td k(g)(?)
摩擦音 (f)s(?)(?) h
ふるえ音 r
接近音 ? j
側面接近音 l
"-nk-" は [?k] 、"-ng-" は [??] と発音される。
"ts" は(外来語を除き)必ず語中に現れ、[tts] と発音される([ts] とはならないことに注意)。
"j" はドイツ語やスウェーデン語などと同じく、日本語の「や行」の子音 [j] をあらわす。英語の「ヂュ」やフランス語の「ジュ」の子音のような発音は(外来語でない限り)しない。
"r" は巻き舌での発音。
"v"は唇歯接近音で [?]と発音される。
"?", "?" は外来語にのみ使用され、それぞれ [?], [?] の音を表す。しかしどちらも外来音であるために [s] で発音されることが多く、また表記においても "s", "sh", "zh" で書き換えられることも多い。例:feti??i(フェチ)、?akki(チェス)、fa?ismi(ファシズム)、Azerbaid?an(アゼルバイジャン)
アクセント
母音調和
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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