フアン・カルロス1世_(スペイン王)
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2007年11月10日、チリで行われていた第17回イベロアメリカ首脳会議の閉幕式で、スペインのホセ・マリア・アスナール前首相を激しく批判したベネズエラウゴ・チャベス大統領と、これを民主的に選ばれた代表に対する侮辱と受け取って強く反発したスペインのホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ首相が口論となり、サパテロの諫言を全く聞き入れず一方的に批判を続けるチャベスに対して、フアン・カルロスが「?Por que no te callas?(黙ったらどうかね?)」と一喝した[2]。その後、国王のこの一言は携帯電話着信メロディTシャツなど様々な用途に商品化され、スペインでヒットした。着信メロディはおよそ50万のダウンロードにより約2億4千万の利益を生んだ[3]。ただし、着信メロディの声は国王のものではなく、別人によるものであるという。なお、翌年7月のチャベスによるスペイン訪問の際には、国王自らこのTシャツをプレゼントし、チャベスはこれに対して印税を話題にした冗談で応じるなど、友好ムードで会談が行われた[4]
譲位

フアン・カルロスは「ぜいたく好き」とも見なされており、2007年8月29日には左派政党から公金使途詳細の公表を求められていることを受け、監査人を指名した[5]#人物も参照)。2011年10月のスペイン政府の調査では、フアン・カルロス1世に対する支持率は50%を割っている。[6]

2012年、非公式で訪れていたボツワナで、アフリカゾウスポーツハンティング中に腰の骨を折る大怪我を負った。当時、スペインは経済的な苦境にあり(スペイン経済危機)、失業率が20%を超える状況にあり、国王といえども贅沢が許されるような状況になかったこと、また国王自身が世界自然保護基金の名誉総裁の職にあったにもかかわらずレッドリストに掲載されている動物を対象にスポーツハンティングを行ったことについて世界的な批判を受けることとなり[7]、名誉総裁を解任されるに至った(ただし、同国での象狩りは違法ではない)[8]。この事件以降、国民の支持は落ちており、『エル・ムンド』の2013年世論調査では、約45%が王太子アストゥリアス公フェリペ王位を譲るよう求めていた[9]中道左派系の新聞『エル・パイス』が同年3月に行った世論調査(発表は4月)では、国王の職務遂行ぶりについて回答者の42%が「支持する」、53%が「支持しない」と答えた。2012年12月時点では「支持する」が「支持しない」を21ポイント上回っており、数ヶ月で国王の支持率が急落している[10]。この頃には高齢なことから健康問題も抱えており、2012年11月には人工股関節を埋め込む手術を行っている[11]

2014年6月2日午前、マリアーノ・ラホイ・ブレイ首相がフアン・カルロスの譲位決定を発表した[12][13]。ただし、この時点でスペインには国王の譲位に関する法的規定がなく、ラホイ首相は新国王の即位に向けた手続きのため、特別閣議を3日に招集した後、憲法などの改正案を国会に提出した[14]。この発表に対して、急進左派政党ポデモスは、王室についての国民投票の実施を求める声明を出した[15][16]。またSNSにて反王室のデモが呼びかけられ、2日午後8時(現地時間)に君主制廃止派により君主制維持の是非を問う国民投票の実施を訴える大規模なデモが、首都マドリードをはじめ各地で起こされた[17][18][19]。そのような情勢の中、6月18日上院下院とも圧倒的多数で「国王の退位に関する法律」を可決し、国王も退位の文書に署名した。この法律が発効する19日未明に、自動的にファン・カルロスは退位し、新国王フェリペ6世が即位した[20]

なお、譲位時にスペインで行われた世論調査によれば、王室の存続を問う国民投票が実施されたら、49%がフェリペ王太子の即位を支持、36%が共和制への移行に投票すると回答しており[21]、王室の存在についてスペインが分断している実情が浮き彫りとなった。
事実上の亡命

サウジアラビア高速鉄道の建設をめぐり、2012年にスペインの鉄道建設会社との取引仲介に対する見返りとして同国国王アブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ(当時)の代理人より資金を得ていたとされており、在位時にパナマで設立された財団が持つスイスの銀行口座に預けられた後に一部が愛人に送金されたり、また財団が自家用ジェットのフライト費用数百万ユーロを支払うなど、資金洗浄に関与していた疑惑が取り沙汰されている[22]

一連の疑惑を受け、2020年3月に息子のフェリペ6世は父フアン・カルロスに対する年間手当19万4000ユーロ(約2300万円)の廃止と、相続財産を放棄することを発表し、距離を置く姿勢を示したものの、フェリペ6世自身もまたこの財団の受益者であったとされている(本人は否定)[23]。同年6月、スペイン最高裁は捜査を開始することを発表したが、在位時の免責特権があるため譲位後の疑惑に限定されたものの、疑惑にメスが入れられることとなった。

2020年8月3日、フアン・カルロスがスペイン国外に出国する意向であることが発表された[24]。スペインの報道機関は、フアン・カルロスがドミニカ共和国へ出国したと報じた[25]ものの、当のドミニカ共和国入管当局はフアン・カルロスが入国した記録はないと否定した[26]。このほか、逃亡先としてポルトガルアラブ首長国連邦を構成するアブダビなど諸説が報じられ[27]8月17日にスペイン王室は前国王の出国先がアラブ首長国連邦であると正式に発表した[28]


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