ファランクス_(火器)
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本システムは、M61「バルカン」 20mm多銃身機銃捕捉追尾レーダーを組み合わせて1基の砲台に集約したシステムである[6]。Mk 15はシステム全体の呼称であり、艦内に配置される操作部を除くとMk 16と称される。マウント単体ではMk 72、FCSはMk 90と称される[5][8]

本システムは150ミリ厚のプラットフォーム上に架されるが、甲板下に配置しなければならない部分はない。5.5平方メートルの甲板と射界があれば[8]、艦のシステムからは操作用電源と冷却水の供給を受けるだけで作動できる。他のシステムとのインターフェースが少なく、本システムだけで独立した兵器システムとして運用可能であり、全備重量も比較的軽量であることから、大型艦艇から小型艦艇に至るまで搭載できる[9]

信頼性にも優れており、1977年に行われた評価では、平均故障間隔(MTBF)は188時間、平均修復時間(MTTR)は2時間45分と、いずれも海軍の要求(60時間および3時間)を大きく上回る結果が記録された[8]
機銃部

上記の通り、本システムでは20mm口径・6銃身のM61A1「バルカン」を装備した。これは当時のアメリカ軍戦闘機で標準的な航空機関砲になりつつあったものであり、高発射速度と安定した弾道が特長であった[6]。砲身長は当初は76口径であったが、ブロック1Bより99口径に長砲身化された[4][5]

発射速度は、当初は最大で毎分3,000発とされていたが[4]、ブロック1ベースライン1では、機銃の駆動方式を油圧式から空気圧式に変更したことで、発射速度を毎分4,500発まで向上できるようになった[5]。給弾はベルト式で、円筒形弾倉が機銃の下方に配された。準備弾数は、初期型のブロック0では989発、ブロック1では1,550発に増大した[6]。空薬莢は回収シュートによって再び円筒形弾倉に回収され、またもし不発弾が生じた場合も、空薬莢とともに回収される[9]。再装填は30分以内に完了できる[8]。なお射撃そのものは持続的に行われるが、射撃指揮の観点からは、10発ごとのバースト射撃として評価される。またブロック1Bでは、対水上射撃の際には50発ごとのバースト射撃を行うことができるようになった[5]

弾薬として、当初は、アメリカ海軍では劣化ウラン弾芯のAPDSを使用していたのに対し、海上自衛隊では航空自衛隊と同じM51普通弾を使用していた。その後、技術研究本部ニッケルクロムタングステン合金を弾芯に使用するAPDSが開発され[9]、海上自衛隊では57DD「やまゆき」より装備化された[10](86式20mm機関砲用徹甲弾薬包)。またアメリカ海軍でも、1989年から1990年にかけて同様のタングステンAPDSに切り替えた。本システムでは20mm口径弾を使用することから、30mm口径弾を使用するゴールキーパーよりも火力で劣るという批判もあったが、アメリカ海軍では、いずれにせよ弾着によって目標ミサイルの弾頭が誘爆することから破壊力には有意な差はない一方、小口径弾のほうが多くの弾薬を搭載できて有利であるとして、問題はないという見解を発表している[5]

射撃中のファランクス

ファランクスの砲身

弾倉

20mm擬製弾を抜き取る作業の様子

FCS

本システムの際立った特徴は、他戦闘システムから独立して目標の捜索・探知・追尾・攻撃および攻撃効果の判定、再攻撃または他の目標捜索へ移行という一連の対空戦闘を自動で完結するものである[6]
センサーレドームと右側に装着された光学センサ(Block 1B)

機銃部上部には白く塗られた円筒形のドームが配置されており、上側には捜索レーダー、下側には追尾レーダーアンテナが設置されている。これらのレーダーは、アメリカ陸軍がバルカン砲と連動させているAN/VPS-2と混同されることもあるが[6][8]、実際にはVPS-2は単なる測距レーダーであり、別のシステムである[5]

いずれも動作周波数はKuバンドで、これらの2基のアンテナで1基の送信機を共用しているため、同時に電波を発射することはできず、システム単体では捜索中追尾を行うことはできない。パルス繰り返し周波数(PRF)は、距離に応じて3段階に切り替えられる[5]

なお最初期のブロック0では、アンテナとしてはいずれもリフレクタアンテナが用いられており、捜索レーダーの捜索範囲は仰角0度から5度に限られていたが、ブロック1ベースライン0では、捜索レーダーのアンテナはバック・トゥ・バック配置のフェーズドアレイ・アンテナ4面に変更され、捜索範囲も仰角70度まで拡大された[5][8]

またブロック1Bでは、レドームの右側に光学照準装置が追加された。これはピルキントン社製のFLIR(HDTI 5-2F)を用いたもので、検知波長は8?12マイクロメートル、FOVは2×1.3度および4.5×3度であった[5]
射撃統制

これらの捜索・追尾レーダーにより探知した目標の「現在位置」と、高速で発射される「弾丸群位置」の双方を追尾して両者の差を検出、修正量を算出して、継続的な閉ループ制御による修正射撃を行い、命中を得る[6]。目標の撃破を確認すると射撃を終了し、捜索レーダーの捉えた次の目標に対応する[9]。この射撃計算のためのコンピュータとしては、ブロック0・1ではコントロール・データ・コーポレーション(CDC)社のモデル469Eを使用していたが、ブロック1AではR3000を使用したCDC AMPに変更された[8]

アメリカ海軍の資料では、1目標の探知から攻撃開始まで約2秒、目標の破壊に要する弾数は平均約200発、最大有効射程は約1,500メートルとされる[6]。最初期の想定では、目標を5,600ヤード (5,100 m)で探知、4,300ヤード (3,900 m)で捕捉し、2,500ヤード (2,300 m)で射撃を開始することとなっていた。内側限界線(阻止圏、keep-out zone)は100?230ヤード (91?210 m)に設定された[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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