ビーバー
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ビーバーの縄張りに侵入された場合は攻撃的となり、人間を死なせる事件も起きている[14]。ただ、隣の縄張りのビーバーにはDear enemy effect(英語版)(顔見知り効果)が働き、あまり攻撃的にはならない[15]。また、親戚の場合も攻撃的とならない[16][17]
ビーバーとダムビーバーのダムビーバーの巣

ビーバーは「自分の生活のために周囲の環境を作り替える、ヒト以外の唯一の動物」であるとも言われる。

ビーバーのダム作りは、持って生まれた本能的な行動で、教わらなくても自然にできるようになると言われている。水辺の木を齧り倒し、泥・枯枝・水草・石などとともに材料として、川を横断する形に組み上げ、大規模なダムを作る。オスの役目で縄張りには尿をかける。ダムによってできた「ダム湖」の中心部にも同様に様々な材料を組み上げ、ドーム状の巣を作る。巣の床は水面より上にありビーバーが休息出来るが、巣の出入り口は水面下にしかなく、乾けば頑丈なため天敵が侵入出来ず、かつ枝の隙間の空気穴により空気を通している。ダムを利用することでちょうどいい水位を常に保っている。

長い年月の間にはいくつもの「ダム湖」が作られ、これによって岸辺の総延長が伸長し、食物をとる範囲が増えることになる。

ビーバーが環境を大きく変えることで多くの命を森に呼び込んでいる。川が流れているだけで水鳥は棲めない場所であったものが、池になることで渡り鳥もやってくる。池にはたくさんの水草も育ち、様々な生物で賑わうようになる。数十年経つと池は土砂に埋まって使えなくなり、残された栄養豊富な土砂には草が良く育ち、池は後に広大な草原に生まれ変わり、森の草食動物の貴重な食事場所になる。しかし、天敵がいない環境だと、過剰に木が倒されて後述の森林破壊になるケースもある。ビーバーが水が流れる音を探知すると本能的にそこをせき止めるダムを作ることが分かってからは、それを利用して柵を立てるなどして流水音を人工的に発生させてビーバーがダムを作る場所を人為的に調整する試みが行われている。[18]

2011年現在で確認されている世界最大のビーバーのダムは、2007年10月にカナダ・アルバータ州ウッド・バッファロー国立公園内で発見されたダムで、長さは850mにもなる。ダムそのものに草木が生えていることから、1970年代から建設が始められ、数世代にわたって拡張され続けているものと考えられている。このダムはさらに拡大を続ける可能性がある[19]。2011年04月29日にカナダ・アルバータ(Alberta)州で、原油のパイプライン破断事故が発生し、その後、同州環境当局者は、「ビーバーが作ったダムにより、被害も拡大せずに済んだ」との趣旨を、公表している[20]
人との関わり「ビーバー戦争」も参照食害を受けた木

ビーバーの毛皮は長い撥水性がある剛毛と密生する柔らかな保温性がある下毛の2層の毛をもつため[21]、帽子やコートやマフなど防寒衣類の材料に用いられた。現在シルク・ハットと呼ばれる円筒型の帽子(材料にかかわらず「トップ・ハット」と呼ばれる)は、元はビーバーやラッコ[22]の毛皮で作られていたパパーハ(猟虎帽[23])のような形だった。ビーバー・ハット (beaver hat) 、ビーバー・ハイ・ハット (beaver high hat) 、あるいは俗にカスター (castor) とも呼ばれたこの帽子は、17世紀以降作られ、長い間紳士には必携の帽子だった。また、ナポレオン・ボナパルトが愛用した二角帽子もビーバーのフエルトで作られるなど[24]ビーバーの毛皮は高級素材として広く流通した。またその香嚢からとれる海狸香も需要があった。このためビーバーの乱獲が進み、19世紀前半には年間10-50万頭が殺され、ビーバーの生息数は絶滅寸前まで減少した。

19世紀初頭、供給が減少したビーバーの毛皮の代わりに、表面をけば立たせて毛皮風に仕立てたシルクを用いた「シルク・ハット」がイタリアで考案されると、トップ・ハットの主流はシルクに移ったため、ビーバーの需要は衰え、アメリカやカナダで保護法が成立したこともあって、ビーバーの乱獲時代は終了した。

1940年代、アルゼンチン政府は、毛皮を目的として 50 頭のアメリカビーバーを南アメリカ大陸南端に位置するフエゴ諸島に移入した。天敵がいない土地に棲み着いたビーバーは2008年までにおよそ10万頭に増加し、フエゴ諸島固有の木々を大量に噛み倒し森林破壊の原因となっている。2008年現在、アルゼンチンおよびチリ政府は、フエゴ諸島でのビーバーの大規模な駆除を計画している。反対に、スコットランドでは、400年前に絶滅したヨーロッパビーバーを再移入して、生態系を回復させようとする計画が進行している[25]

また、ビーバーの肉は食用にされた。最も有名なビーバーの毛皮の供給元は、アラスカ中部のユーコン川に面したビーバー村であった。味については佐藤垢石はエッセイ「香熊」において、ニホンアナグマがビーバーに似ていると記述している。特に魚肉の一種とみなされ食肉が禁止されていた修道院に需要があった[26][27](同様に日本の江戸時代食肉禁止文化でもウサギが鶏肉と見なされ需要があった[28][29])。

ビーバーの毛皮を求める行動が、欧州の北米進出を加速させた面があり、このことからカナダでは国獣としてビーバーが指定されている[30]

ビーバーは警戒心の強い野生動物であるため不用意に近づくと襲われることがある。木を噛み切るビーバーの歯は人間にひどい怪我を負わせることが可能で、動脈を傷つけるなどして死に至らしめることもある[31]
モチーフにした作品

ビーバーが主たるモチーフであったり、主役として活躍するもの。

絵本『ベントリー・ビーバーのものがたり』 (文/マージョリー・W・シャーマット
、絵/リリアン・ホーバン)

アニメ『ドン・チャック物語

映画『それでも、愛してる』(原題 The Beaver、監督/ジョディ・フォスター)ビーバー人形がうつ病の主人公を救う。

映画『ゾンビーバー』(en:Zombeavers) ゾンビと化したビーバーが人間を襲うホラー映画。

小説 『ビーバーの小枝』小川洋子 著(「いつも彼らはどこかに」集録 初版2015/12/23新潮社 )

ゲーム『Timberborn』Mechanistry

雑学

そのダム作りの様子から、ビーバーはしばしば勤勉の象徴とされる。
英語には work like a beaver (ビーバーのように働く)という言葉がある。世界的に有名な名門ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのマスコットがビーバーである。

日本のボーイスカウトでは、最少年代(幼稚園・保育園の年長から小学2年生)の隊をビーバースカウト(通称・ビーバー隊)と呼ぶ。

三菱重工業の家庭用ルームエアコンのブランド名はビーバーエアコンである。

カナダ海軍ハリファックス級フリゲート「オタワ」のマスコットはビーバーである。

戸田競艇場のマスコットキャラクター「ウインビー」「ウインク」のモチーフはビーバーである。

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 海生であるとの誤解を与えやすいこともあり、現在ではほとんど使われない。

出典^ a b Kristofer M. Helgen, " ⇒Family Castoridae". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 2, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 842-843.
^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・横畑泰志ほか 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
^ ビーバーとは
^ a b c d e f g Richard A. Lancia, Harry E. Hodgdon「ビーバー」今泉吉晴訳『動物大百科5 小型草食獣』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社1986年、18-21頁。


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