ビートたけしのオールナイトニッポン
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しかし、この『ビートたけしのオールナイトニッポン』が始まったことによって、『ナチ・チャコパック』に対し、聴取率の面で追い越して、前述したように聴取率記録を打ち立てたため、1981年の年末にTBSラジオが『ナチ・チャコパック』のみならず、パックインミュージック全体の終了を決断させた[10][12]
特徴

たけしは漫才時と同様に非常な早口で喋りまくり、「相方」の
高田文夫[13]の合いの手と相まって独特のテンポで進行されていた。この「本来はアシスタントでもない裏方が、メインパーソナリティの相方として登場し、会話や笑い声でトークを盛り上げる」という手法は、その後のラジオ番組に大きな影響を与えている。それ以前にも『欽ちゃんのドンといってみよう!』に裏方の作家集団(パジャマ党)が登場するなどということはあったが、高田のように恒常的にサブキャラとして相方を務める例はほとんど見られなかった。

時事ネタや芸能界裏話、社会現象から下ネタまで、幅広い内容のフリートークを展開した。人気絶頂のタレントの本音が聞ける番組として、一般リスナーはもちろん業界やマスコミ関係者も注目していた。

「音声のみで伝える」というラジオ番組の特性を敢えて無視した事も多い。全員でラジオ体操をするだけの企画や仮装でツアーに行く企画、跳び箱に挑戦する企画など、ラジオには不向きと思われる企画が度々放送されたが却ってリスナーの想像力をかき立てた。一方で余りにも下らない投稿にはハガキでマイクに突っ込みを入れ、たけしの笑い声と共に「ボコッ」という音が流れて臨場感が伝わる事もあった。いずれも従来は無かったラジオメディアの使い方である。

取り上げる話題や企画は「たけしが個人的に面白いと思う物」が基準であり、既存の知名度等に依存しなかった。その為いわゆる業界用語や芸界の専門用語、マイナーな芸人など一般的でない単語や事柄を特に説明なくトークの流れで喋った。この番組で一般的になった業界用語や人名も多い。

常連投稿者の「ハガキ職人」を重用。投稿してきたギャグやコントを多く取り上げた。番組にハガキが採用されるとポイントが貯まり、上位の投稿者は北の屋での忘年会やビヤガーデンなどに招待する事もあった。また、その模様は度々生放送された。

たけしはテレビ番組では次第に当初のアナーキーな過激さが失われたと評されたが、当番組では猥雑な個性を発揮し続けていた。「この番組はナウい君たちの番組ではなく、私の番組です」と公言し、クレームにも殆ど動じず過激な企画を放送していた。しかし一方でハガキ職人の招待やリスナーへのプレゼントなど、実際にはリスナーやファンを大切にしていた。

「メインパーソナリティー+放送作家+ハガキ職人」、放送内容をまとめた番組本の出版という、お笑い系ラジオ番組の現在に至る基本形を確立した歴史的番組である。

フリートークの内容

主に自身の体験談で、番組や映画制作時の裏話から家族や不倫相手までリアルかつ赤裸々な内容だった。その他にも時事ネタやスポーツ、下ネタ、芸人や関係者の武勇伝など幅広い。多くは面白おかしい内容だったが、時には巨人江川卓引退時や自身のファンの在り方など、笑い無しで真剣に語る事もあり、特に江川の引退直後の放送では、早すぎる引退をしきりに惜しんでいた。政治や社会現象を語る時の切り口は鋭く、そのファンは若者に留まらず著名人や知識・文化人にも広まった。

なお、フリートークといっても全てがアドリブという訳ではなく、ネタ帳に話す内容が箇条書きされていた。これは後にラサール石井らが語っている。
番組で取り上げられた人物

この番組で人気を得たり有名になった人物も多数いる。たけしの師匠である深見千三郎や玉乗りの江川マストンの様に、浅草の舞台を主な活動の場にしていた一般的には知名度の低い芸人や、前田隣のように以前は人気があったが廃れてしまった芸人、普通は表に出ない裏方など、当時の若者や一般リスナーには馴染みの薄かった人物が多く紹介された。
歌手・俳優・タレント
村田英雄
ひょんな事から「村田英雄の頭はデカい」という話になり、リスナーからネタを募ったところ村田に馴染みのなかった若年層から人気が爆発、「ムッチーブーム」の火付け役となった。敬意とおちょくりを交え、村田のことは「村田先生」と呼ぶのが通例だった。1981年5月のコーナー放送中に、当時まだ面識の無かった村田からスタジオに電話が入り、初めは録音だと思っていたたけしは、生電話だと知るや応対にたじろいでいた。また、後に村田を正式なゲストとして招き、たけしが村田の親分とともに三波組を叩き斬る任侠物のドラマ「男の盃」を放送したこともある。最初は滑稽なコント劇の予定だったが、村田が本気で乗り気になったため、作家の高田文夫が村田を褒め称える内容に急遽書き換えた。
高倉健
たけしの役者論である「役者は存在感だけあれば下手でも構わない。高倉健だってそんなに上手くは無い。オレもやろうと思えば役者なんていつでも出来るが、役者には漫才は出来ないだろう」をインタビュー記事で読み、「面白い奴だ」と興味を持つ。後に映画『夜叉』でたけしと共演。その際に田中邦衛と漫才をやろうとした等のエピソードや、映画撮影の裏話などがネタにされた。その後も1?2年に1度は食事を共にしたり携帯電話で連絡を取り合う等、たけしとは高倉が亡くなるまで交流があった。
伊丹幸雄
初め視聴者から番組宛てに、伊丹のアイドル当時の「ウィスパーカード」というメッセージ入りソノシートが届き、番組で流したところ余りのキザな内容に人気が出て本人もゲスト出演。後に『オレたちひょうきん族』の出演のきっかけになる。
安岡力也
当時は少し忘れかけられた存在だったが、様々な映画で脇役を勉めていて、たけしが見掛けていたところから『オレたちひょうきん族』の「ホタテマン」に抜擢し、以後、安岡は再ブレイクを果たした。当時大人だった安岡の強面かつコミカルな個性から、架空の武勇伝などを紹介する。これも大半はハガキ職人の創作。
大橋巨泉
当時たけしと共演が多く、番組での裏話や「無理やりゴルフにつきあわされる」、「無理やりリゾートマンションを買わされる」といったようなプライベートのエピソードがネタにされた。
逸見政孝
当時フジテレビアナウンサー。たけしとはテレビ番組での共演から親交を深め、その人となりがネタにされた。特に当番組に出演した際に、著書『マジメまして逸見です』10冊をリスナーにプレゼントしたが応募が8通しかなく、「自分でハガキを選ぶ」と言う逸見に困ったというエピソードは有名。その後も度々共演し、逸見が亡くなるまで親交があった。
深澤弘
当時ニッポン放送アナウンサー。後に同社専務取締役。「ミスターショウアップナイター」と言われたスポーツ実況の第一人者。たけしが野球中継のゲスト解説で関根潤三と共に度々共演。「ニッポン放送の深澤さん」として、その人となりや裏話が良くネタにされた。
塚越孝
当時ニッポン放送アナウンサー。後にフジテレビに移籍(平成24年逝去)。番組直前の時報前コメントを担当。たけしがそれを受けて「また塚が余計な事を言ってやがるな」等とコメントするのが定番だった。塚越の番組『朝からたいへん!つかちゃんです』も度々ネタにされ、たけし欠席時には代打も務めるなど当番組には縁が深い。
和田弘とマヒナスターズ
ひょんな事から番組内で話題になり、1988年新年会企画などに出演した。後に『北野ファンクラブ』で共演したり、マヒナ40周年記念アルバムでも共演するなど長い付き合いになる。
伊吹二郎
「いのちの女」などのヒット曲を持つ演歌歌手。その人となり等がネタになり番組に乱入した事もある。番組では「銀座の伊吹さん」と呼ばれていた。
お笑い芸人
ポール牧
一連の自慢めいたホラ話。これも大半はハガキ職人の創作。
島田洋七
その途方もないホラ話が度々ネタにされ、ビアガーデン企画などで出演もした。
若人あきら(現:我修院達也
年齢詐称ではないかと番組で疑われ、言動に時代錯誤があるという証言をする。
ホラッチョ宮崎
トロンボーン漫談が持ち芸のピン芸人。当時浅草の舞台で活動。中田ガッタン・ゴットン、江川マストンなどと共に面白い芸名がネタにされた。たけしが弟子におかしな芸名をつけるキッカケになった人物。2016年に話題になったショーンKの学生時代のあだ名「ホラッチョ川上」の由来はここから来たという説が唱えられている。
林家彦六
長屋住まいの噺家としてのエピソードや、独特な話し方のまね、広沢瓢右衛門との天国お迎えレースなどがネタとされた。
スポーツ選手
ガッツ石松
彼にまつわる様々な笑える「伝説」を紹介。村田英雄のコーナーとよく似た内容で、これも大半はハガキ職人の創作。
ジャイアント馬場
馬場の身体がいかにデカいかを面白おかしく度々ネタにされた。
長嶋茂雄
当時いわゆる浪人中で、野球解説の他にも『全英オープンゴルフ中継』やソウルオリンピックのレポーターなど様々な仕事をしていた長嶋のエピソードが良くネタにされた。たけし謹慎中に自ら心配してゴルフに誘ったのに誰を誘ったか忘れ、ゴルフ場で「たけしさんもゴルフですか、誰とですか?」と聞いてきたエピソードは有名。
南牟礼豊蔵
当時阪急ブレーブス在籍のプロ野球選手。その面白い名前とユニークなエピソードが度々ネタにされた。
事務所関係者
副社長(フクシャ)
太田プロ磯野(旧姓:太田)泰子副社長。やり手で知られた副社長の言動を虚実織り交ぜて披露。副社長のことは「フクシャ」と呼ぶのが通例だった。同社磯野勉社長(フクシャの夫)の話題も頻繁に登場した。
菊地忠
当時たけしのマネージャー。極度の酒乱で別名「ジキル菊地」。数々の武勇伝が番組で披露され、後に『オレたちひょうきん族』(歌へたのルーツ)や『ビートたけしのスポーツ大将』に出演するなど有名になった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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