ビルマ語
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綴りの上では末子音 "-m" "-n" "-?" が残っているが、現在ビルマ語ではその区別が消失して全て鼻音化している。また、ビルマ語の二重母音は単独では存在しない。日本語の「愛」などといった発音は鼻母音を補って発音される。鼻母音は、"iN" [??], "auN" [a??], "aiN" [a??], "aN" [??], "eiN" [??], "ouN" [o?], "uN(wuN)" [??] が挙げられる[5]

鼻母音で終わる音節というものはそれ自体はあくまでも開音節であるが、次に別の子音で始まる音節が続く場合は鼻子音が実現して閉音節となり、母音の鼻音性は失われる(例: ????????? ko??" tay? [ka?n d??] カウン デー〈良いよ〉)[6]

声門閉鎖音 [?]

驚いたとき「アッ!」といったときなどに喉をぐっとしめた感じの音である。日本語の小さい「っ」に近いが、日本語の場合「アッ」を除けば次の子音の形でとまるので厳密には異なる。("kattaa"や"kappa"など。)綴りの上では "-p"(??) "-t"(??) "-k"(??) "-c"(??) といった末子音が残っているが一部の外来語(/bas ka:/など)を除き、声門閉鎖音に変化している。綴りでは一部の子音記号にアタッ(???? /??t?a?/)と呼ばれる補助記号(?)をつけることで表す。子音に綴りの上で "-k"(??)の場合直前の母音 "-a" は /?/ となって /??/ と発音し(例: ??? lak? /l??/ レッ〈手、腕〉)、 "-c"(??)の場合直前の母音 "-a" は /?/ となって /??/ と発音される(例: ??? sac? /t???/ ティッ〈新しい〉)。また、綴りの上で

直前の母音が "-i"(?)で "-p"(??)や "-t"(??)と接続する場合: /e??/(例: ???? cit? /se??/ セイッ〈心〉)

直前の母音が "-u"(?)で "-p"(??)や "-t"(??)と接続する場合: /o??/(例: ???? khut? /k?o??/ コウッ〈伐る〉)

直前の母音が "-o"(??)で "-k"(??)と接続する場合: /a??/(例: ????? sok? /t?a??/ タウッ〈飲む〉)

直前の母音が "-ui"(??)で "-k"(??)と接続する場合: /a??/(例: ????? buik? /ba??/ バイッ〈腹〉)

となることに文字学習の際は注意されたい。
子音

子音は全部で34個ある。

ビルマ語には有声音無声音の対立の他に中国語朝鮮語にみられる有気音無気音の区別が存在することに注意する。「」内には日本語で近い音を示したが、発音方法に注意すること。


破裂音
両唇破裂音
p [p]<無声無気音>「パ」行 ?ph [p?]<無声有気音>息を伴う「パ」行 ?b [b]<有声音>「バ」行 ?、場合によっては ? や ?(例: ?????? /t?ib????/ ティービン〈果樹〉[7]
歯茎破裂音
t [t]<無声無気音>「タ」行 ※ただし、"th"音や "D"音との混同を避けるため、舌先がやや硬口蓋よりになる。そり舌音にはならない。?th [t?]<無声有気音>息を伴う「タ」行 ?d [d]<有声音>「ダ」行 ?、?、場合によっては ? や ?(例: ????? /d??????/ ダニン〈ジリンマメ(ポーランド語版)〉[8]; ?????? /d?w??/〈ダウェー
硬口蓋破裂音
ky [t??]<無声無気音>「チャ」行 ?? (k+y)、?? (k+r)khy [t???]<無声有気音>息を伴う「チャ」行 ?? (kh+y), ?? (kh+r)j [d??]<有声音>「ヂャ」行 ?? (g+y)、?? (g+r)、場合によっては ??(例: ?????? /lud??o???/ ルージョン〈知り合いから金品や手紙などを託されて運ぶ旅行者〉)[9]
軟口蓋破裂音
k [k]<無声無気音>「カ」行 ?kh [k?]<無声有気音>息を伴う「カ」行 ?g [?]<有声音>「ガ」行 ?、場合によっては ? や ?s [θ] <無声音> ? ※ T, D の調音点は英語の "th-" の音と同じだが、ここでは破裂音の節に含める。歯破裂音 [t?], [d?] で発音される場合もある[10]。一方 Jenny & San San Hnin Tun (2016:15) は歯閉鎖音(つまり歯破裂音)であって摩擦音破擦音ではなく、話者によってはそれぞれ /t, d/ との区別が見られないと述べている。(s) [d] <有声音> ?(例: ?????? /t???d???/ ティーディー〈ゾウノリンゴ(英語版)の実〉)[11]
声門破裂音
? ※母音の項参照

摩擦音
歯茎摩擦音
c [s]<無声無気音>「サ」行 ?ch [s?] <無声有気音>息を伴う「サ」行 ?j [z]<有声音>「ザ」行 ?、場合によっては ?(例: ??? /zi/ ズィー〈ナツメ〉)[12]rh [?]「シャ」行 ?? (r+h)、??? (l+y+h)(例: ??? rh?/?a/ シャー〈探す〉; ???? lyh? /?a/ シャー〈舌〉)h [h]「ハ」行 ?

鼻音m [m]「マ」行 ?mh (MLCTSでは hm) [m?] 無声の /m/ あるいは出だしに息が入る (: preaspirated) /m/[13] ??n [n]「ナ」行 ?nh (MLCTSでは hn) [n?] 無声の /n/ あるいは出だしに息が入る /n/[13] ??nn (MLCTSでは ny) [?]「ニャ」行 ? nna /?a?/ ニャ〈夜〉nh (MLCTSでは hny) [??] 無声の /?/ あるいは出だしに息が入る /?/[13] ??? (MLCTSでは ng) [?] 鼻濁音で発音した「ガ」行 ??h (MLCTSでは hng) [??] 無声の /?/ あるいは出だしに息が入る /?/[13] ??(例: ???? /????/ フンゲッ〈鳥〉)

半母音v (MLCTSでは w) [w]「ワ」行 ?vh (MLCTSでは hw) [w?] 無声の "w"。出だしに息が入り「フワ」といった感じになる。??y [?] 日本語の「ヤ」行より摩擦が強い。「濁ったヤ行」に聞こえる。?, ?

流音l [l] 英語のl音 ?lh (MLCTSでは hl) [l?] 無声の /l/ あるいは出だしに息が入る /l/[13] ?? /l?a?/ フラ〈美しい〉r パーリ語由来語など外来語に多く、英語の "r"音とほぼ同じ。厳密には有声歯茎接近音とされる[14]。?

介子音-w-、-y- の2種類がある。???? kyvai /t??w??/ チュエ(水牛)、??????? my?" tay? /mja d??/ ミャー デー(多い)など。

日本語の「キャ」行にあたる発音は存在しない。転写すると「ky」となる ?? やALA-LC翻字法で転写すると「khy」となる ?? は「チャ」行の発音(c、chと同じ)となる。また、転写で「kr」となる ?? もチャ行音、「yha」?? や「rha」?? の組み合わせはシャ行音、「gy」?? や「gr」?? はヂャ行音となる[3]。なおこのようなビルマ語の綴りと実際の発音との乖離のために、逆にビルマ語話者は日本語の「東京」(とうきょう、Tokyo)を「とーちょー」のように発音してしまう傾向がある[3]。また、場合によっては無声子音を表す字が有声化することもある。
声調

ビルマ語は声調言語であり、音節の音の高低によって意味が区別される。ビルマ語の声調は下降調、低平調、高平調の3つがある。

下降調高音から急激に下がる。ma のように表記する。英語の文献では「きしみ声調」(: creaky tone)という呼び方をされていることもある、比較的短い声調である。例: ? ca /sa?/ サァ〈始める〉[15]

低平調低音か中音で平らに発音する。m? のように表記する(無表記)。普通は平らであるが、時に上昇調となる。長さは中である。例: ?? c? /sa/ サー〈言葉、文字〉[15]

高平調高音で平らに発音する。単語が文末に来る場合などはゆるやかに下がる。m?" のように表記する。比較的長く、息もれ声があると分析されることもある。例: ??? c?" /sa/ サー〈食べる〉[15]

なお以上のような声調の区別が存在するのは開音節や鼻音終わりの音節の場合の話であり、声門閉鎖音(/?/)で終わる閉音節の場合は声調は中立となる[15]。声門閉鎖音終わりの閉音節に関しては声調を高く発音しようが低く発音しようが、あるいは「きしみ声調」で発音しようが構わないが、大抵の場合は短い音となる[15]
文法

基本的に
膠着語であり、日本語とよく似た骨格をもつ。ただし孤立語的性格ももつが、動詞を単独で用いることは少なく、あとに小辞を1つないし多数つけるのが普通(そのため膠着語とされる)。

文の種類は名詞文と動詞文に大別される。

前置詞も日本語と同様語尾変化である。

助詞も日本語に似たものが見られる[1]

「おはよう」や「こんにちは」の決まった挨拶の言葉は通常はない(参照: #挨拶表現)。

ミャンマー人には、通常、姓にあたるものはない。名前は生まれた曜日によって使用される字が決められている。ただし、親の名の一部を自分の名につけて示す場合がある。アウンサンスーチーも、父の名のアウンサン、父方の祖母の名のスー、母の名のキンチーに由来する。

所有構文

〈…の〉という名詞句を作るには以下の2通りの方法がある[16]
所有者を表す名詞の声調を下降調(いわゆる「きしみ声調」)に変化させる(たとえば以下の例では ?????? /t???n??/ チャノー が ??????? /t???n??/ チャノォ に変化している)。

助詞 ??? /j??/ イェ[注 2] を所有者を表す名詞に後置する。


??????? (???) ???
転写: kya no?' (rai') char?IPA: /t???n?? (j??) s??ja/カナ表記: チャノォ (イェ) サヤーグロス: 私.男性 (の) 先生訳:「僕の先生」

ただし ??? は省略することが可能である[16]。また1.のパターンでも ??? /t???ma?/〈私(女性)〉のように元から下降調で終わる語の場合は結果的に発音が変化しないということになる[16]

??? (???) ???
転写: kya ma (rai') char?IPA: /t???ma? (j??) s??ja/カナ表記: チャマァ (イェ) サヤーグロス: 私.女性 (の) 先生訳:「私の先生」
名詞文

名詞文は〈…は~である〉という内容のものである[17]


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