ビルボード
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この大改変以降、HOT100チャートにおいて急激にヒップホップR&Bといったブラックミュージック系が上位を占める割合が大きくなった。これはアルバム志向が強い白人層に対し黒人はシングル志向が強く、シングルセールスチャートの上位はブラックミュージックが占めていたことによる。

この改変以後、シングルセールスよりもエアプレイが主体であるロック系の楽曲が上位(特に1位)を獲得することは極めて難しいものとなった。一方でセールス主体のヒップホップR&Bなどブラックミュージック系の曲が数ヶ月にわたって1位を取り続けることが恒常化していった。この改変以前は10週連続1位を獲得することは稀で、1970年代のデビー・ブーン(「恋するデビー」)や80年代のオリビア・ニュートン=ジョン(「フィジカル」)など数える程度でしかなかったのが、1992年以降はボーイズIIメンの「End Of The Road」が13週連続で1位になったのを皮切りに、ホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」の14週、ボーイズIIメンとマライア・キャリーによる「One Sweet Day」の16週、他にもAll-4-One「I Swear」やブランディ&モニカ「The Boy Is Mine」、パフ・ダディ「I'll Be Missing You」などブラック系を中心に10週以上の1位を獲得する曲が続発した。また、ブラック以外でもロス・デル・リオの「恋のマカレナ」が14週1位、エルトン・ジョンの「Candle In The Wind 1997」も14週間1位、サンタナの「SMOOTH」も13週間1位を獲得している。

「End Of The Road」や「I Will Always Love You」は『HOT100 Airplay』でも10週以上の1位を記録しており、セールスの力だけで1位になったわけではない。例えばHOT100の1位連続記録を樹立した「One Sweet Day」にしても空前の売上を記録したわけではなく(およそ230万枚)、R&Bチャートでも1位になっていない(最高2位)。これは『HOT100 Airplay』の主要構成要素であったPOPやAC(Adult Contemporary)、Rhythmic(Rhythm Crossover)といった各フォーマットで連鎖的にヒットしていったことが長期に亘る大ヒットに繋がったことを示している。また、この時期にリアル・マッコイの「Another Night」や、クリスタル・ウォーターズの「100% Pure Love」といったダンスチューンが45週を超える長期ランクインを果たしたのもほぼ同様の理由である。

また、セールスにこだわるあまり、一時期シングルカットしない人気曲がHOT100にまったく反映されないことも問題視されるようになった。エアプレイでかなりの人気を誇ったノー・ダウト「Don't Speak」、カーディガンズ「Lovefool」、ナタリー・インブルーリア「Torn」を筆頭に、パール・ジャムグリーン・デイを始めとする楽曲はラジオ&レコーズのチャートやHOT100の構成要素となる「HOT100 AIRPLAY」では上位に食い込んでいたものの、当時のHOT100はシングルカットしていない曲はジャンルを問わずランキングの対象としなかったため、当然これらの曲がHOT100上位にランクインすることはなかった。

ビルボードの知名度を世界的なものに押し上げた人気ラジオ番組「American Top 40」もこのような流れの中で、HOT100がセールス重視を打ち出したのとほぼ時を同じくしてHOT100をチャートソースから外し、エアプレイ主体のランキングに切り替えたものの、その後は同じくエアプレイ主体である「ラジオ&レコーズ」をチャートソースとする「Rick Dees Weekly Top40」や「Casey's TOP40」に人気を奪われる形となり、1995年にいったん番組が打ち切られてしまう。1998年に復活した「American Top 40」もビルボードではなく、ラジオ&レコーズのCHR/Pop Chartをチャートソースに使うようになってしまった。また、1998年にはグー・グー・ドールズの「Iris」が、8月1日付けのチャートから12月5日付けまでの間、10月3日付けのエアロスミスの「I Don't Want to Miss a Thing」を除いて約4ヶ月に渡り、HOT100 AIRPLAY史上最長となる18週1位を記録したのだが、発売されていないということを理由にランキングに載せられていないという事態が発生。このような状況の中、ビルボードは1998年12月5日付で、エアプレイとセールスの比率を3:1に再変更した。この初のチャートで「Iris」は9位にランクインした。

この再変更ではR&Bやカントリーなど各ジャンルからのチャートを集計した総合チャートとしての色彩を強め、これまで認めてこなかったエアプレイのみでの発表曲もチャートインさせることにした。しかし、例えばR&Bやヒップホップの曲はメインストリーム(ポップ)局だけでなくR&BやRhythmic、Urbanなどの各フォーマットでクロスオーヴァーヒットするため合計ポイント数が自ずと高くなるが、それに対しカントリーはほぼカントリー局、ロックはロック系フォーマットやポップ系フォーマットでのみ集計されるためもともとオーディエンスが少なく、ジャンルによって強弱が目立つ集計となり(Top40/ポップ系のオーディエンスがオーディエンス全体の中で実際はあまり多くないため[要出典])、結局その後もオーディエンスの多いヒップホップ系やR&B系の曲ばかりが上位に上がり、長期間1位に滞在し続けるというポップ・ロックファンから見れば偏った「総合チャート」が毎週発表され続けることになる。遂にニッケルバックの2001年のシングル「How You Remind Me」を最後にその後6年近くもロック系アーティストによる楽曲が1位に到達することはなくなってしまう[4]

また、2000年代に入るとアメリカン・アイドルで注目された新人がシングルCDを出すと突発的に1位になるものの、すぐに順位が低落してしまう(Fantasia「I Believe」のように週間で1位を獲得したにもかかわらず年間チャートで100位にも入れない楽曲も現れた)というこれまでではあまり見かけなかったチャート上の欠陥も目立つようになった。これは、この時期アメリカではシングル市場が崩壊していたために、他にCDのセールスポイントを稼いでいる曲が無かったためである。[要出典]

2005年2月になってダウンロードセールスを新たにカウントするようになり、ダウンロード1000件をエアプレイオーディエンス100万人と同ポイントに計算するルールになったと思われる。ダウンロードはCDやレコードに比べるとクリック1つで気軽に購入でき、売れ筋の曲がすぐにチャートに反映されるため、様々なジャンルがチャートを賑わすようになった。

2007年5月にはロックバンドであるマルーン5の楽曲「Makes Me Wonder」がこのダウンロードセールスが効き3週1位となった。ポップバンド扱いされることもあるが、ロックバンドによる1位獲得はニッケルバック以来のことであった[5]。このようにダウンロード件数重視により、ポップ・ロックソングに対する門戸が広まったといえる。しかし、同時にダウンロード件数増加によりそのポイントが強力になりすぎて、ダウンロードが解禁されたとたん大幅にジャンプアップするという現象が発生するようになった。この「Makes Me Wonder」は当時史上最高となる64位からのジャンプアップだった。このように、現在の集計方法においては上位はほぼエアプレイを無視したチャートになっており、集計方法に対する試行錯誤は当分続くことになると思われる。
日本におけるビルボード詳細は「Billboard JAPAN」および「阪神コンテンツリンク#ビルボード」を参照

日本では1970年、ビルボードと提携した[6] 音楽業界誌ミュージック・ラボ(ビルボード・ジャパン・ミュージック・ラボ)が創刊した(1994年に休刊)。創刊号(1970年8月24日号)のシングルチャート1位は岸洋子の「希望」、休刊号(通巻1189号、1994年2月28日号)のシングルチャート1位はB'zの「Don't Leave Me」。

その後、2006年阪神コンテンツリンクとの提携を行い[7]2007年夏にBillboard JAPANとして本格的に進出を開始。ライブハウスの開業や公式着うたサイトの開設を行った。2008年2月28日からは日本版チャートの公開を開始した[8]。アメリカ国外でビルボードの名を冠したチャートを発表する国は、カナダ(2007年6月7日開始)に続いて世界で2ヶ国目。

日本版Billboard Hot 100にあたるBillboard Japan Hot 100も公開されており、本家同様多様な音楽の視聴スタイルを反映した複合チャートが特徴である。同じ複数の指標で構成される米国Hot 100との違いは、カラオケ指標の有無のみとなっている。
ストリーミング再生回数の不正問題

自分の好きなアーティストを一位にするために、ファンによるストリーミング再生回数のフェイクプレイや音楽総攻と呼ばれる不正工作が問題となっており、2018年10月に米メディアのバズフィードは、これらのキャンペーンが高度化すればするほど、ビルボードチャートの信頼性を損なう恐れがあると警告した。当初は米国国内での現象だったが、その後SNSを利用して海外にもその手法が輸出されていることに懸念を表明している。ペンシルベニア大学のピーター・フェーダー教授もファンによる再生回数の水増し工作が続けば、「ビルボードチャートは破綻に追い込まれるだろう」と警告している。記事ではチャート不正の例として、韓国の音楽グループBTS(防弾少年団)のファンである「BTSアーミー」による戦略を挙げている。ただK-POPアイドルのCDにはグッズ特典が付く場合が多く、前述のBTSも2020年にアメリカ年間フィジカルセールス一位となっているなど、ザ・ウィークエンドなど、他のアーティストと比べてストリーミングによる比率がかなり低いとの反論も出ている。韓国ではファンによる音楽ランキングのチャート不正が相次いでおり、同国の国家行政機関である文化体育観光部が調査に乗り出すこととなった[9][10][11]


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