ビブラート・ユニット
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セミアコのコロナドの専用設計であり、1970年にはコロナドが発売終了したために、2014年現在このユニットは出回っていない。
モズライト・ビブラミュート

モズライトのギターに搭載されていたビブラートユニット。「ヴァイブラミュート」などと呼ばれることもある。当初はブリッジサドルの前に脱着可能なミュート機構が取り付けられていたのが名称の由来。

基本的な作動形態はビグスビーとほぼ同じだが、ブリッジサドルとテールピース(可動部分)が一体化している点が違う。当初はアルミニウムの削り出しで製作されていた。モズライトの創始者セミー・モズレーギルドの為に製作したもののキャンセルとなり、モズライトに回されたという経緯がある。そのためユニット中央の黒く塗りつぶされた部分にギルドのロゴを削った跡がある。これは直ぐに真鍮鋳物クロムメッキを施した物と、オクターブ調整の可能なローラー式サドルをセットした物に変わるが、名称はそのまま受け継がれた。

テールピースの弦を通す穴の位置(高さ)が弦によって変えられており、ピッチ変化量が各弦で一定になるよう配慮されている。つまりアーミングしても和音があまり崩れない(他のビブラートユニットは和音が崩れる)。これは後のスタインバーガー・トランストレムの思想と一致する。ピッチの可変量を調整する機構も考案され、パテントを取得していたが、機構が複雑化する欠点があったため、採用は見送られている。ネッド・スタインバーガー(スタインバーガーの創立者)は、ビブラミュートがトランストレムと同様の思想で作られていた事を後年になってから知り、非常に驚いたと語っている(「ギターマガジン」誌のインタビュー)。

モズライトの1966年製品からは、亜鉛合金製のモズレーユニット(モズレーアーム)に置き換えられた(セミアコースティックギター用のセパレートタイプも新たに登場する)。ビブラミュートよりも若干トレブリーな音質となる。
フロイド・ローズフロイド・ローズの分解写真詳細は「フロイド・ローズ」を参照

ロック式ビブラートユニットの元祖的な存在。日本では「フロイト・ローズ」と呼称される場合もある。シンクロナイズド・トレモロを原型としており、その代替部品としてストラトキャスターに改造で交換されることも多かった[4]

弦をナット部とブリッジ部で挟んで固定(ロック)し、この部分での弦の摩擦(チューニングの狂いの原因)をほぼ根絶している。シンクロナイズド・トレモロはユニット揺動の支点が6本の木ねじになっており、支点の位置が正確に定まらず、支点部分での摩擦抵抗も大きい[5]。フロイド・ローズの支点は左右2本のみで、しかも鋭角に成型されており、支点の位置のズレや摩擦抵抗がほぼゼロになっている。そのためチューニングの狂いがほとんど起きず、アームの操作感も軽い。反面、その操作性の軽さは、ボディを持ってギターを上下左右に動かすと、ユニット自身の重量でチューニングが変わってしまうほどである(元の角度に持ち替えればほぼ元の音程に戻る)。

シンクロナイズド・トレモロに比べ実質的な弦長が短くなるため、音程の可変幅がさらに大きくなる。特にアーミングアップ・キャビティを設置した場合には、大幅なアーム・アップを行うことができる[6]

アーミングに伴うチューニングの狂いをほとんど解消し、多くのギタリストにとって福音となった。その一方、ナットとブリッジの材質や構造が元のギターとは別のものに変わり、弦をその素材で挟み込んでしまうため、そのギター本来のサウンドが失われる(どんなギターに取り付けてもフロイド・ローズ特有の音になる)という点を問題視する意見もある。そのためチューニングが多少狂いやすくなるのは承知の上で、ナットはギター本来のものを活かす(ナット部で弦をロックしない)方式の亜流ユニットも登場した。

近年特殊なボールエンド(弾丸のような形状で、スタインバーガーのダブルボールエンドの様に前後に取り付けられている)を採用した「スピードローダー」が発売されていた。これはナット部分のロック部分とブリッジサドルのロック部分で弦を固定すると同時に、弦を張ったのと同時にチューニングが完了するというシステムで、前述したスピードローダー専用弦が必要となる。チューニングの細かい狂いは通常のフロイドローズ同様、ファインチューナーを回して行う。しかし専用の弦が必要となるなどの不便さが露呈し、市場での評価を得られず姿を消している。
トランストレム

スタインバーガー社の製品に純正装着されていたビブラート・ユニット。ペグやヘッドストックを持たないデザインで、ナット部分に弦のボールエンドをひっかけ、ブリッジ側にも同様にボールエンドをひっかける(この為、スタインバーガー社の製品専用のギター弦が販売されていた)。

最大の特徴は、各弦のチューニングを相対的に保ったままアーミングをすることが可能という点である[7]

さらにトランストレムならではの機能として、和音の平行移動を利用したチューニングのロック機能がある。アーム基部に階段状のノッチを刻んだロックピンがあり、ノーマル状態からダウン3段、アップ2段での固定が出来る。これによって、わざわざチューニングし直すことなく、アームの操作だけで一音下げチューニングなどが簡単に出来る。但しこの機能を使う為には、トランストレム専用のダブルボール弦が必要となる(通常のギター弦を使用できる別売りのストリングアダプターを使用すると、トランストレムの動作にバラつきが出て、機能が発揮できない)他、細かい調整が必要で煩雑となる弱点がある。トランスポーズ機能のみならず、独特の柔らかく滑らかなアーミング効果を好むギタリストも多い。

このトランスポーズ機能を省略したものがSトレムとして発売されていた。ブリッジの固定はアームではなく、ボディ底部のチューニングノブ横にあるレバーを使用して固定する。

ギター用以外に、4弦ベース用のトランストレム"ベーストランスポーザー"も存在した。

2009年現在は大幅な商品ラインナップの整理が行われ、"ZT-3"に採用された"トランストレム-3"及び、廉価な入門機種"Spirit"シリーズに採用された"R-TREM"のみ流通している。また現在は現行モデルのみならず過去に生産された各モデルのスペアパーツの供給が大変困難な状況となっている。その後は更に商品ラインナップの大幅な削減が行われ、トランストレム-3が姿を消し、R-TREMのみとなっている。

トランストレム他一連のスタインバーガーのパテントを所有するヘッドレスギター専用のダブルボール弦は、ダダリオやラ・ベラ等から発売されているが、総じて流通量は少ない。特にラベラの弦はメーカー自体が小規模な為、大量生産が望めず、安定供給が難しくなっている。
ケーラー詳細は「ケーラートレモロシステム」を参照

ケーラー社が開発し、販売しているビブラート・ユニット。

構造上の弦への負担や取り付けによる音質の変化などの欠点はあるが、シンクロナイズド・トレモロやフロイド・ローズなどとは異なる構造から来る滑らかなアクションを好む者も多い。以前はメインのアームの他にも、手のひらでビブラートを掛ける事ができる"キャットテイルアーム"を取り付けてあるモデルも存在したが、現在は市場から姿を消している。またフェンダー・ジャパンから発売されていた"Strat"に使用されていたフロイド・ローズライセンスの"スパイダートレモロ"も存在した。

ビジネス上の様々な問題から生産がままならず、長い間市場から姿を消していたが、諸問題が解決した2006年に生産を再開、荒井貿易が代理店となり、ライセンス生産品ではないオリジナル・ケーラーの販売を開始した。

ギター用のユニットのみならず、ベース用のトレモロユニットも製造しており、ヴィクター・ウッテン等ベースソロでそれまでのベースには在り得なかったテクスチャーを加えるベーシストが使用している。近年、5弦ベース、6弦ベースといった多弦ベース用のトレモロユニットを製品化した。
シャーラー

シャーラー(SCHALLER)社が開発し販売しているLPビブラート・ユニット。

Les Paulに代表されるTOMブリッジのギターへ、比較的簡単にビブラート・ユニットを付けられる様に作られたもの。ユニットの裏に細いコイルスプリングが5本あり、アーミングに対応させている。張り具合の調整は出来ない。

薄い板ばねが、各スタッドボルト部に2枚ずつ計4枚あるが、これはアーミング用ではない。ユニットが上記コイルスプリングで引っ張られ過ぎない様に制限するもの。これが無いと、弦を外した時に、可動部分がコイルスプリングに引っ張られて、スタッドボルトでボディーに固定される部分から外れてしまう。この板ばねと可動部分には、アーミング時に擦れ合って摩擦が生じる。その為、アーミング前後で可動部の角度が安定し辛い。潤滑するメンテが不可欠となる。薄い板ばねを重ね合わせた隙間も潤滑した方が良い。共に音程の安定化に効果が大きい。というか、潤滑しないと音程のズレが大きい。

サドルはローラーサドルとなっている。ブリッジの高さ調整は、スタッドボルト(スタッドアンカーに入れるボルト部分)にかぶさる筒状のナットを回して行う。これは、6角ナットと一体成型されているが、構造上6角ナット部は薄く、ボディーとの隙間も狭い為、弦を張った状態でブリッジの高さ調整がし辛い問題点がある。

キットには、附属品として
スタッド間隔が標準と違う場合に取り替えられる様に、入れ替えるパーツ(上記筒状のナットで、筒の径が細いもの)

テールピースを外した時、テールピース固定ボルトの代わりに入れるボルト(元々のテールピース固定用ボルトをそのまま使っても構わない)

ブリッジとテールピース用スタッドを繋げてアースを接続する為の「メガネ状」のパーツ。TOMブリッジを採用したギターの弦アースは、テールピース用スタッドの1弦側で接続している。このパーツを、上記(2)で固定するか、元々あるテールピース固定用ボルトで固定する。

が付属する。

(3)は見た目に違和感が有るので、ブリッジ用アンカーからアースが取れる様に改造するのも、一つの方法。
ステッツバー

Stets Metal Arts社が製造するビブラート・ユニット。基本的に無改造で取り付けが可能であり、レス・ポール等のアーチトップギター用やテレキャスター用、ストラトキャスター用などのバリエーションがある。構造はベースプレートの上で小さな2本のスプリングで支えられたブリッジブロックが前後に移動することで音程を変化させる。ブリッジはTune-O-Maticタイプの物が使用されている。ベースプレートとブリッジブロックの間にはローラー型のベアリングが挟まっておりそれによりなめらかな動作をする。.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節の加筆が望まれています。

脚注^ 後の1963年に同社から発売されたヴァイブロヴァーブ("Vibroverb")というアンプはVibrato+Reverbという意味で命名されたが、これに搭載された機能は実際にはトレモロ(音量の変化)でありヴィブラート(音程の変化)ではなかった。


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