ビデオコール
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技術の確立
インターネットの普及

実用的なテレビ電話機登場には、日常的に使える高速回線の整備が重要であったため、1990年代後半に実用的なテレビ電話機が出てきた。

単に電話に映像が付加されると言う利用以外では、主な利用方法は以下などが挙げられた。

テレビ会議(ビデオコンファレンス)

英会話等のインターネットレッスン、インターネット家庭教師など

医療現場における医師同士、また対患者との医師伝達手段および遠隔診療

ろう者に対する手話通訳

介護福祉事業者と要介護者宅との連絡

テレビ放送における視聴者、出演者宅との中継

交通事業者における乗務員の出先での点呼

ISDN回線を利用したテレビ電話機HITACHI HV-31テレビ電話専用端末
NTT PICSEND-R

ISDN回線は開発当初からテレビ電話で利用されることを想定し、音声・映像各64Kbpsで2チャネルという帯域が決定された。

カメラ付き携帯電話端末を利用したテレビ電話と比較した場合の優位点としては、一番に画像の鮮明さ(解像度)と画面の大きさがあげられる。主なISDNテレビ電話においては704×408ドット(最大)の画像を扱う事ができるようになっている。このため搭載される液晶モニターも5インチ大のものが主力であり複数人での同時通話にも適している。中には家庭用テレビに接続できる(または別途テレビを必要とする)製品もある。ISDN回線を利用したテレビ電話も量産機が開発された当時は静止画が主力だったが、画像圧縮技術の進歩や高速なプロセッサが開発されたこととINS64の2Bチャネルを利用し、その1/5の帯域をADPCM音声(通話)に、4/5を動画とバランスよく配分する事で比較的ストレスの無い動画と音声の送受信を行えるようになった(ITU-Tにおける国際規格上はPCMのみとなり、その場合は音声1/3、動画2/3の帯域配分となる)。

一般的なISDNテレビ電話端末では秒間15フレーム(最大)を実現しており、30万画素程度の解像度を持つカメラを搭載する。ISDNの特性(デジタル回線交換)から送受信時のデータの損失がほとんど無いため、環境に依存せず、開発時に見込まれた動作を忠実に再現できるのも大きな特徴である。

多くの製品は通常の電話機に液晶モニターとカメラが組み込まれた形状をしている場合が多く、テレビ電話としては最も一般的で完成された形を見る事ができる。通信方式もほぼ規格が確立され、各メーカー間である程度統一されており、片側64Kの通信速度を利用した静止画や低画素の下位通信方式にも対応できるようにしたため、アナログ方式のテレビ電話とも通信できる製品が多い。

1990年にITU-T H.261(画像圧縮の国際規格)が提唱された事を受け開発が進められ、2000年代以降、医療、教育、マスメディアの現場を中心に急速に普及した。

こうした際に使用される代表的な機種として三菱電機がNTTにOEM供給した廉価端末のPhoenix miniがあり、上位機種としては日立製作所がNTTに PICSEND-Rの名称でOEM供給を行ったHV-300、HV-31等もある。後者2機種はISDN固定テレビ電話における高級機に位置付けられている。さらにPhoenix miniの後継機としてFOMAとの連携を果したモデルも登場している(ただし、対FOMA通信における動画はFOMA側の網品質に依存するため、かなり低速かつ不鮮明になる)。

ほぼ全てのモデルが多地点会議に対応しており、HV-31等一部の高級モデルには特定端末自体がホストとなり、それぞれの端末を掌握して特別なサービスを介する事無くテレビ会議が行えるようにした製品もある。
アナログ回線テレビ電話機

日本では従来のアナログ電話網 (GSTN) でも、アナログ電話モデムの高速化により、十分実用的な画質のテレビ電話が使えるようになった。H.263によるアナログ回線用V.34モデム33.6kbpsの回線交換データ通信を利用する。ISDNテレビ電話との相互接続も可能であるものが多い。ただし相手側のISDNテレビ電話が1Bビデオ通話をサポートしている必要がある。また1B通信の場合、多くの例では秒間フレーム数が相当量削られる事となり、スムーズさが失われる結果となる上、接続から通信開始までに時間を要するため、ISDN方式に比べ実用性は低減している。
IPテレビ電話機

1990年代後半から2000年代前半にかけてインターネットの利用が普及し、IP電話におけるVoIPと同様に、ビデオ信号をIPネットワークで伝送する技術が登場した。Video VoIP (VVoIP) とも言う。ブロードバンド回線に接続するIP電話機の形態を取るものが多く、1秒間に15 - 30フレーム程度を送受信できることが多い。特に、光ファイバーをアクセス回線とする場合、動画の円滑さはほとんど問題ないレベルに到達した。また、設置形態は回線系に依存する事から固定系が殆どであった。

IP電話と同様に、電話サービスとして電話番号が割り当てられる場合がある。また、同じネットワーク間では通話料がかからない場合がある。

IPテレビ電話の分野では通信規格が乱立状態にあったが、エンドtoエンドのプロトコルとしては当初から用いられたH.323からSIPへの移行が急速に進んでおり、映像コーデックについてもH.263からMPEG-4H.264に移行が進んだ。

NTT(東西) : フレッツフォン VP1000により、主要IP電話事業者によるIPテレビ電話サービスや、フレッツ網上のビデオチャットサービスにも対応。

ひかり電話の回線に接続したVP1000と、FOMAとの間でのテレビ電話サービスを開始。

ビジネス利用向けの安価なテレビ電話/テレビ会議端末としてフレッツフォン VP1500、コンシューマ向けの安価なテレビ電話端末としてフレッツフォン VP100、より大画面のインターネット・テレビ電話端末としてフレッツフォン VP2000(NTT東日本のみ)、VP3000も発売した。


ギンガシステムソリューション : NOVAの外国語レッスンにテレビ電話端末を提供している。

LOBIC : ピアトゥーピア方式のテレビ電話システムLOBICAを提供している。

JANISネット : ソネット社TELEBB-1000を用いてテレビ電話サービスを提供している。

フィーチャーフォンでの実現

1999年、世界初のカメラ付き携帯電話京セラVP-210が発売され、移動可能なテレビ電話機の普及が現実的なものとなり、様々な試みがなされた。
DDIポケット

1999年9月にDDIポケット(ウィルコム→現ソフトバンク)より発売された、京セラ製端末のVP-210が世界初の移動体電話上のテレビ電話である。32kbps回線交換Motion JPEGのカラーで1秒間に2フレームという当時の技術的な限界のため実用的とは言い難かった。携帯電話に先んじて開始したサービスだったがその後端末は生産中止となっている。
FOMA (W-CDMA)FOMA SH900iでテレビ電話を見る

NTTドコモFOMAでは、W-CDMA共通規格の一環として、テレビ電話をサービスの柱に掲げることになった。FOMA第一弾のP2101Vからテレビ電話が可能であり、1秒間に15フレームとなった。

FOMAの普及に伴い、テレビ電話に対する発信者非通知によるワン切りという手口も生まれた。理由として、FOMAでは電話番号でメールが届くSMSが有り、そのメールを送るための情報収集が目的と言われる。

なお、同じ通信方式を使用するソフトバンクモバイルSoftBank 3Gや、海外でW-CDMA (UMTS) を採用するキャリアにおいてもテレビ電話を提供しており、FOMAとの互換性もある(FOMA端末内でアバターデータのデコードを行って送信しているため、SoftBank 3Gでのキャラ電画像の受信も可能)。

FOMAを含む第3世代携帯電話は全て、テレビ電話の技術として、動画にMPEG-4ビジュアル、音声にAMRを用いる「3G-324M」規格を採用している。W-CDMAのテレビ電話は、64kbpsの回線交換データ通信で実現されている。

NTT(東西)のひかり電話の回線に接続したVP1000と、FOMAとの間でのテレビ電話サービスを開始。
ドコモPHS

2002年7月にドコモPHSにも、FOMA「P2101V」の筐体を流用した、Lookwalk P751vという端末が登場している。性能的にもFOMA対応のP2101vをPHSに対応させただけの内容になっている。当時はFOMAのエリアが狭かったので、こちらの方が実用的だったが、PHSにしては大型過ぎる、パソコンに繋いでのデータ通信が出来ない事などにより、あまり売れなかった。また、@FreeD対応端末向けにパソコンに差して使える、 ⇒テレビ電話ソフトが提供された。64kbpsの回線交換データ通信が標準だが、32kbpsでも使用でき、FOMAとも接続できる。
SoftBank 3G (W-CDMA)

ボーダフォン日本法人(旧J-PHONE、現ソフトバンクモバイル)が2002年12月にサービスインした3GサービスVodafone Global Standard (VGS) においても、「TVコール」の名称でW-CDMA規格のテレビ電話サービスが開始され、対応端末 (V-N701・V-SA701) も提供された。しかしVGS自体があまり普及しなかったため、TVコールの利用者もあまり増加しなかった。

2003年には社名がボーダフォンとなり、それに伴って「10の約束」と称する公約を発表、その中で「TVコールサービスが通話と同じ料金に」と謳った。しかし翌2004年には10の約束は反故にされ、テレビ電話は音声通話の1.8倍へと値上げされた。

同年12月には、サービス名をVodafone 3Gと変更し、国内での本格的なサービス普及に向けて、海外製を含む7端末を投入した。


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