ビタミンK
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新生児用の粉ミルクには、ビタミンKを食品添加物として入れてある。また、産科では出生時、出生1週間、一か月健診などの頃合いで、ビタミンKシロップを投与する[26]
骨代謝とビタミンK

ビタミンKのうちビタミンK2(MK-4)が骨粗鬆症の治療薬として利用されている。骨形成マーカーの1つであるオステオカルシンは、ビタミンKによって活性化され骨代謝を調節する。このオステオカルシンを十分に活性化するためには、血液凝固を維持するために必要なビタミンK量よりも多くのビタミンKを摂取しなければならない[27]。納豆を多く食べる習慣のある地方では、納豆をあまり食べない地方よりも骨折が少ないことが知られており、納豆に含まれるビタミンK2(MK-7)が骨折を予防する因子と考えられる[28]。ビタミンKのうち、MK-4やMK-7などのビタミンK2はオステオカルシンを活性化するだけでなく、骨組織に対して直接的に骨形成を促進し、骨の破壊を抑える効果がある[29]。また、ビタミンK2は、骨のコラーゲン生産を促進し、骨質を改善する点に特徴がある[30]
病気との関連

研究段階ではあるが、心臓、骨、腎臓、脳、一部のがんやインスリン感受性などとの関連が研究されている[31]
動脈硬化

動脈にカルシウムが沈着する動脈石灰化が動脈硬化症の最も重要な症状の1つとして認識されている[32]。ビタミンK依存性タンパク質の1つであるマトリックスGlaタンパク質(英語版)(matrix Gla protein)を欠損したノックアウトマウスは、全身の動脈にカルシウムが沈着し死亡する[33]。心臓病とビタミンK摂取量を調べた疫学研究で、ビタミンK2の摂取量が高い群では低い群と比べて動脈石灰化が抑制され、心臓病による死亡率が半分程度であったことが報告された[34]。ビタミンK1摂取と石灰化抑制に関連が認められない一方で、ビタミンK2摂取は摂取量と石灰化抑制に関連が認められるとする報告がある[35][36]。また、臨床試験においてビタミンK1とビタミンDを3年間投与すると血管の弾力性が維持されることも知られている[37]
その他

ビタミンK2の高用量摂取は、
メタボリックシンドロームの発生を減らすとの報告がある[38]

ビタミンKはインスリン抵抗性(感受性)を改善し、2型糖尿病のリスクを低下させると示唆されている[39]

ビタミンK1が、白内障のリスクを低減するとする報告がある[40]

アルツハイマー病の患者では、ビタミンKの摂取量が少ないとする研究がある[41]

歯周病病巣部では、歯肉溝滲出液中のビタミンK1濃度が低いという報告がある[42]

ビタミンK2(MK-7)は、アディポネクチンを増やし、内臓脂肪を低減させる可能性がある[43]

ラットでは、ビタミンK1の塗布により、傷の治りが早まるという報告がある[44]

ラットの脳では、スフィンゴ脂質の濃度が、ビタミンK2(MK-4)の濃度に相関しているとする研究がある[45]

ビタミンKと炎症との間に逆の相関があり、ビタミンKが多いと炎症マーカーが低くなるコホート研究がある[46]

ビタミンKクリーム

ビタミンKクリームは、挫傷の治療や色素沈着の抑制に使われてきており、血管外の血液の除去を容易にする[47]。ビタミンKとレチノールが含まれるクリームによって、有意に目の周囲の腫れや変色を減らすと考えられている[48]
摂取
食事摂取基準

「日本人の食事摂取基準 (2010年版)」[49]において、ビタミンK摂取目安量は血液凝固を指標として決められている。
目安量
目安量(AI)は「潜在的な欠乏状態を回避できる摂取量として82 μg/日(体重72 kg)が必要であるとのアメリカの報告」に基づいて体重比で求められており、通常の食生活で充分に摂取されていれば欠乏症に陥ることはほとんどないと考えられている。

目安量(AI、2010年版)[50]年齢男性女性
18-29歳75μg60μg
30歳以上75μg65μg

目安量(AI、2015年版)[51]年齢男性女性
18-29歳150μg150μg
30歳以上150μg150μg

上限量(UL)


ビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン)については副作用の報告がなく耐容上限量は設定されていない。

ビタミンK3(メナジオン)は大量摂取による毒性が認められる場合があるとしている。

病気の場合
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」[52]では、250-300μgの摂取を推奨している。
摂取源
腸内細菌の合成
ヒトなどの腸管内には
腸内細菌が棲んでいるが、腸内細菌はビタミンB群や、ビタミンKの合成を行っている[53]。腸内細菌は、長鎖MK(MK-8?MK-13)を多く作る。成人では腸内細菌の作るビタミンKにより必要量をまかなえると考えられていたが、腸内細菌由来のビタミンKを遠位消化管から吸収することは難しく[54]、腸内細菌由来のビタミンKの利用だけでは十分に得ることができない[55][56]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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