ビタミンD
[Wikipedia|▼Menu]
一つは活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3カルシトリオール)(下図右)となる[14]。ヒドロキシ化されたC1は下側リング右側に位置する。ホルモン作用を有する活性型ビタミンD(カルシトリオール)は、副甲状腺ホルモンに加えて低カルシウム、低リン酸状態により活性化したカルシジオール-1-モノオキシゲナーゼ(1α-ヒドロキシ酵素)によって生成される。

1α-ヒドロキシ酵素が不活性な場合には、別の酵素がカルシジオールのC-24をヒドロキシ化して、もう一つの非活性型ビタミンD(24,25-ジヒドロキシビタミンD3)(下図左)を生成する[14]。この反応によりカルシジオールは生化学的な作用から不活性化される。また、不要となったカルシトリオールは、カルシトリオール24-ヒドロキシラーゼの触媒作用によってカルシトロン酸(下図右)が生成される。この物質は、水に溶け、尿中に排泄される。24,25-ジヒドロキシコレカルシフェロールカルシトロン酸
作用のメカニズム

カルシトリオールは、循環器系に放出される。リンパ液中の輸送物質であるビタミンD結合タンパク質(VDBP)と結びついてカルシトリオールは、様々な対象臓器に運ばれる[15]。カルシトリオールは、対象細胞細胞核内に主に所在するビタミンD受容体(VDR)と結びついてその生体効果を発現する[15]。カルシトリオールとビタミンD受容体(VDR)との結びつきは、腸内でカルシウム吸収に関わっているようにビタミンD受容体が(TRPV6[腸内でのカルシウム吸収の第一段階をつかさどる膜カルシウムチャンネル]やカルビンディン[腸及び腎臓でのビタミンD依存型のカルシウム結合タンパク質として初めて発見されたカルシウム結合タンパク質]のような)輸送タンパク質の遺伝子発現を調節する転写因子として作用させることである。

ビタミンD受容体は、ステロイド/甲状腺ホルモン核内受容体の一群に属している。心臓、皮膚、生殖腺前立腺及び乳房を含むほとんどの臓器の細胞で作用している。腎臓及び副甲状腺の細胞でのビタミンD受容体の活性化は、(甲状腺ホルモン及びカルシトニンの補助により)血中のカルシウム及びリン酸の濃度の維持及び骨密度の維持を司っている[16]。ビタミンD受容体は、細胞の増殖分化に関わっていることが知られている。ビタミンDは免疫システムにも影響を及ぼしているし、ビタミンD受容体は、単核白血球、活性化T細胞及びB細胞を含むいくつかの白血球で作用している[17]

ビタミンD受容体以外の様々なメカニズムの作用が知られている。これらの作用のうち重要なものの一つとして形態形成に関わるホルモンなどシグナル伝達経路によるシグナル伝達の天然の酵素阻害剤としての作用がある[18][19]
摂取

ビタミンD2の前駆物質であるプロビタミンD2(エルゴステロール)はシイタケに、ビタミンD3は魚類肝臓に多く含有される。紫外線を浴びれば体内でも合成されるが、一般的に不足するので食品から摂取する必要がある。平成16年の国民健康・栄養調査では、男性で平均8.3μg、女性で平均7.5μg摂取しており、必要量を摂取している。[20] ビタミンDは、大部分の植物性食品には含まれない[1]
食事摂取基準

ビタミンDの食事摂取基準(日本、2015年版)[21]区分目安量 (AI)耐容上限量 (UL)
成人(男女)5.5μg/日
( 220 IU/日 )100μg/日
( 4,000 IU/日 )

ビタミンDの食事摂取基準 (米国、2011年)[22][23][24]区分推奨量
(RDA)耐容上限量
(UL)無毒性量
(NOAEL)
成人(男女)600 IU/日4,000 IU/日10,000 IU/日
老人
(70歳以上)800 IU/日

ビタミンDを多く含む主な食品[25]食品名100gあたり含有量
しらす干し46-61μg
焼き紅鮭38.4μg
いわし(缶詰)17-20μg
焼きさんま15.9μg
さば(水煮缶)11μg

サプリメント

ヨーロッパではビタミンDが混合されたオイルやサプリメントを日常的に摂取することが一般的で、医者や政府からも推奨されている。おそらく1日あたり600?800IUを超える必要はない。医師の勧めがない限り、安全な上限と考えられている1日あたり4,000IUを超える摂取は避ける必要がある。可能であれば、サプリメントではなく、食品源からビタミンDを入手することを勧めている。強化乳製品、脂肪の多い魚、干物、キノコはすべてビタミンDが豊富な食品である[26]

太陽光から隔離されるような環境では、上記目安量の摂取では不足することが示唆されている。例えば、潜水艦の乗組員での調査では400IU/日の摂取でも血中ビタミンD濃度を適切に維持できないとの報告がある[27]。別のパイロット研究では800IU/日を半年続けた場合でも理想的な血中濃度に達した参加者は50%に過ぎなかった[28]。さらに、糖尿病患者ではあるが2000IU/日を18ヶ月間投与した場合でも22%が不足なままだったとする研究がある[29]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:129 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef