ビタミン
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軍医大監だった高木兼寛は、士官は脚気に冒されず、かつ単調な食事をしていないことに気づいた(脚気の原因のタンパク質の不足説と米よりタンパク質を多く含む麦飯優秀説を提唱)。そこで 1884年白米大麦を加え、肉やエバミルクを加えるなど食事の中身を若干イギリス風にした。これにより脚気自体はなくなった。しかし、高木はビタミンの存在に気づかず、単にタンパク質が増えたためと考えた。

1896年には、クリスティアーン・エイクマンが滞在先のインドネシアで米ヌカの中に脚気に効く有効成分があると考えた。

物質としてビタミンを初めて抽出、発見したのは鈴木梅太郎であった。彼は1910年、米の糠からオリザニンを抽出し論文を発表した。ところが日本語で発表したため世界に広まらなかった。1911年には、カジミール・フンクがエイクマンにより示唆された米ヌカの有効成分を抽出することに成功した。1912年、彼は自分が抽出した成分の中にアミンの性質があったため、「生命のアミン」と言う意味で "vitamine" と名付けた。このとき発見されたのは、ともにビタミンB1(チアミン)である。

1913年エルマー・ヴァーナー・マッカラム(英語版)は、バターまたは卵黄の脂肪の中にネズミの成長に不可欠な成分があることを発見し、翌年(1914年)その成分の抽出に成功した。マッカラムの抽出した成分は、フンクが抽出した成分と明らかに異なるため、前者を「油溶性A」、後者を「水溶性B」と名付けた。

1920年ジャック・セシル・ドラモンド(英語版)が柑橘系果物の中の壊血病を予防する成分の抽出に成功した。「生存に不可欠な微量成分」=「ビタミン (vitamine)」の名称は、既に日常的に使用されていたが、これら新発見の成分は明らかにアミン (amine) の化合物ではなかった。そこでドラモンドは、ビタミンの発音はそのままで若干スペルを変更すること (vitamin) を提案し、発見した壊血病を予防する成分を「ビタミンC」と命名した。同時に、前段の「油溶性A」および「水溶性B」もそれぞれ「ビタミンA」、「ビタミンB」と命名されることとなった。以降、vitaminの綴りが定着していくことになる。

その後、生命に必要な成分はいくつか見つかり、その都度、正式な化学構造が判明し適切な名前を付けるまでの仮称として、D, E, F, … と順に名付けられた(ビタミン K を除く)。また、ビタミンBに関しては、非常に似た性質を持つグループがあることが分かり、ビタミンB群として、B1, B2, B3, … と順に名付けられた。

さらにその後、ビタミンFなど、いくつかのビタミンは間違いであることや、ビタミンHなど、B群であることが判明し消滅した。その後、各ビタミンの構造が明らかになり、適切な名称が付けられたが、ビタミンB12(シアノコバラミン)やビタミンC(アスコルビン酸)など、ビタミンの方が知名度が高いものもある。また、化学構造の解読が早かったり、解読の結果B群に属することが明らかになった結果、仮称(「ビタミン?」)が一般的でないビタミンも存在する(葉酸(ビタミンMもしくはビタミンB9)、ナイアシン(ビタミンB3)など)。

2003年にはピロロキノリンキノン (PQQ) が半世紀ぶりに新しいビタミンとして発表されたが[2]、その後ビタミンとははっきりとはいえないとされた[3]

2023年、マルチビタミンのサプリメントと高齢者の認知能力の向上との間に、明確な因果関係があることを示す研究が発表された[4]
ビタミン様物質

ビタミンの定義に当てはまらないが、ビタミンと似た作用のある物質をビタミン様物質と呼ぶことがある[5]

ビタミン様物質のなかには、歴史的には誤ってビタミンと考えられたもの、あるいは定義の変更によりビタミンとされなくなったものも含まれる。
一例:

生物から抽出して得られた混合物をそのままビタミンとしたり、他の研究者と独立に命名を行ったりしたために、他のビタミンと重複しているもの(ビタミンB10など)

正確な化学構造、化学物質名が不明なもの(パンガミン酸など)

体内でも合成されるため必須ではないもの(ヒト以外のある種の生物にとっては必須だが、ヒトには必須でないものを含む)(オロト酸カルニチンなど)

炭水化物・タンパク質・脂質のいずれかに分類されるためビタミンの定義から外れるもの(ビタミンFなど)

必要摂取量が多すぎるため通常はビタミンとして扱わないもの(コリンなど)

薬理作用はあるが必須ではないもの(塩化メチルメチオニンスルホニウムなど)

実際には何の働きもないもの、むしろ害になるもの(アミグダリンなど)

以下には過去に誤ってビタミンと考えられた物質を挙げるが、俗にビタミン様物質と呼ばれているものはこれらに限らず、ビタミン様物質とすら呼ぶべきでない物質や同定できない物質も含まれている。

ビタミンB4: アデニン

ビタミンB8: エルガデニル酸(Ergadenylic acid、アデニル酸

ビタミンB10: 葉酸はじめ各種ビタミンB群の混合物。ビタミンRともいった。

ビタミンB11: 葉酸類似化合物。ビタミンSともいった。

ビタミンB13: オロト酸

ビタミンB14: 葉酸またはリポ酸などの混合物。

ビタミンB15: パンガミン酸ジメチルグリシントリメチルグリシンなどの誘導体とされる)

ビタミンB16: ジメチルグリシン

ビタミンB17: アミグダリン

ビタミンBH: イノシトール

ビタミンBP: コリン

ビタミンBT: カルニチン

ビタミンBX: パラアミノ安息香酸葉酸の部分構造、別名:PABA)

ビタミンF: リノール酸などの必須脂肪酸

ビタミンI: 米糠の抽出物。かつてはビタミンB7とも呼ばれた。

ビタミンJ: カテコールフラビンまたはコリン

ビタミンL1: アントラニル酸

ビタミンL2: アデニルチオメチルペントース

ビタミンN: チオクト酸α-リポ酸


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