エベレスト(8,848メートル)、カンチェンジュンガ(8,586メートル)、ナンガ・パルバット(8,125メートル)をはじめ、世界でも有数の標高の高い山が数多く属している。
プレートテクトニクスによると、ヒマラヤ山脈は、インド亜大陸のユーラシア大陸への衝突により形成された。インド亜大陸の北上は続いており、ヒマラヤ山脈の成長も続いている。
各山々の標高には数説あり、エベレストは、ネパールと中国が共同発表した8,848.86メートルが最新データである。測量技術の向上と地殻変動による推移が関係している。注として、上記のデータには山頂の積雪3.5メートルは含まれない。
地理シッキムのユムタン渓谷(英語版)
ヒマラヤ山脈の全長は西のナンガ・パルバット(パキスタン)から、東のナムチャバルワまで実に2,400キロに及ぶ。地理学的には、ヒマラヤ山脈は標高と地質によって平行に走る3つの山脈に分類される。3つのうちでもっとも後に形成された山脈は外ヒマラヤ(シワリク山地)と呼ばれ、およそ1,200メートルほどの高さの山で構成されている。この山脈はヒマラヤ山脈の成長にともなって発生した土砂の流出物によって形成されたと考えられている。
この山脈の北隣に平行に走る形で、小ヒマラヤがある。小ヒマラヤは2,000メートルから5,000メートルの標高の山々で形成され、マハーバーラト山脈とも呼ばれる。小ヒマラヤと大ヒマラヤの間にはカシミール盆地およびカトマンズ盆地という2つの肥沃な盆地があり、ここでは古くから高い文明が栄えていた。もっとも北にあるのが大ヒマラヤで、3つの山脈の中でもっとも古い山脈である。6,000メートル以上のピークを多数有し、世界でもっとも高いエベレスト、3番目に高いカンチェンジュンガがこの山脈に属している。
ヒマラヤは、東西にはおよそ5つに区分される。もっとも西寄りに位置するのがパンジャーブ・ヒマラヤであり、インダス川からサトレジ川までのインダス水系に属する山々である。行政的にはインドのジャンム・カシミール州やヒマーチャル・プラデーシュ州、パキスタンのギルギット・バルティスタンとなる。次いでその東に位置するのがガルワール・ヒマラヤ(クマオン・ヒマラヤ)である。インドのウッタラーカンド州に属する区域で、ガンジス川本流の源流域にあたる。ガンジス本流の源流とされるガンゴートリー氷河もここに属する。その東には、ネパール・ヒマラヤが広がる。行政的にはネパールに属する区域で、エベレストやダウラギリ、マナスルなど、ヒマラヤでもっとも高い山々がそびえる区域である。その東はシッキム・ブータン・ヒマラヤで、行政的にはインドのシッキム州とブータン王国の区域となる。もっとも東に位置するのがアッサム・ヒマラヤであり、行政的にはインドのアルナーチャル・プラデーシュ州となる。なお、この行政区域はすべてヒマラヤ南麓のものであり、ヒマラヤ北麓はすべて行政的には中国のチベット自治区に属する[2]。
ネパールとブータンの国土のほとんどがヒマラヤ山脈である。パキスタンのバルティスターン、インドのジャンムー・カシミール州などの北部の地域がヒマラヤ山脈の中にある。チベット高原の南東部もヒマラヤ山脈に接しているが、チベット高原そのものは地理学的にはヒマラヤ山脈とは別の山系に分類される。
自然ヒンドスタン平野西ヒマラヤ亜高山帯針葉樹林(インドヒマーチャル・プラデーシュ州)
ヒマラヤ山脈の植物相と動物相は、気候、雨量、高度と地質によって分類することができる。気候は山脈の麓にある熱帯から始まり、氷床と雪に覆われた高山帯まで変化する一方、年間降水量は西より東の地域の方が多い傾向がある。気候、高度、雨量と地質の複雑な変化が多様な生態系を育んでいる。 ヒマラヤ山脈とデカン高原の間にはインダス川とガンジス川が流れる広い平野がある。この平野はヒンドゥスターン平野(またはインダス-ガンジス平原(en:Indo-Gangetic plain テライベルトの標高の高い地域には、ヒマラヤ山脈から流れてきた岩石が堆積してできたババール ヒマラヤ山脈の中高度の地域には亜熱帯の森に代わって温帯性混交広葉樹林 森林限界より標高の高い地域には北西ヒマラヤ高山灌木草原帯
低地森林帯
テライ・ベルト(Terai belt))とは季節的に湿性になる草地のことである。テライ・ベルトはモンスーンになると冠水し、肥沃な土砂が堆積する。乾季には水が引くが、ヒマラヤから流れてくる地下水で高い地下水位がある。テライ・ベルトの中心部にはテライ-デュアサバンナ・大草原地帯(英語版)がある。ここには世界でもっとも背の高い草で覆われた草原と、サバンナ、落葉樹林、および常緑樹林がモザイク状に広がっている。またテライ・ベルトはインドサイの生息域である。
ババール・ベルト(Bhabhar belt)
山地森林帯(Montane forests)
高山帯(Alpine shrub and grasslands)
プレートテクトニクスインド大陸は6,000キロ以上を移動し、4,000万年から5,000万年前にユーラシアプレートと衝突した
ヒマラヤ山脈は地球上で最も若い山脈の一つである。現代のプレートテクトニクス理論によると、ヒマラヤ山脈はインド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートの間の沈み込みで起きた大陸同士の衝突による造山運動から生じた。
衝突はおよそ7,000万年前後期白亜紀に始まった。そのころ、インド・オーストラリアプレートは年間15センチの速度で北上し、ユーラシアプレートと衝突した。
約5,000万年前、このインド・オーストラリアプレートの速い動きによって海底の堆積層が隆起し、周縁部には火山が発生してインド亜大陸とユーラシア大陸の間にあったテチス海を完全に閉ざした。これらの堆積岩は軽かったため、プレートの下には沈まずにヒマラヤ山脈を形成した。今もインド・オーストラリアプレートはチベット高地の下で水平に動いており、その動きは高地にさらに押し上げている。ミャンマーのアラカン山脈とベンガル湾のアンダマン・ニコバル諸島もこの衝突の結果として形成された。かつて海だった証拠として、高山地帯で貝などの化石が発見される。
今もインド・オーストラリアプレートは年間67ミリの速度で北上しており、今後1,000万年の間でアジア大陸に向かって1,500キロ移動するだろうと考えられている。この動きのうち約20ミリは、ヒマラヤの南の正面を圧縮することによって吸収される。結果として年に約5ミリの造山運動が発生し、ヒマラヤ山脈を地質学的に活発にしている。このインド亜大陸の動きにより、この地域は地震の多発地帯となっている。