ヒマラヤ山脈
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なお、この行政区域はすべてヒマラヤ南麓のものであり、ヒマラヤ北麓はすべて行政的には中国チベット自治区に属する[2]

ネパールとブータンの国土のほとんどがヒマラヤ山脈である。パキスタンのバルティスターン、インドのジャンムー・カシミール州などの北部の地域がヒマラヤ山脈の中にある。チベット高原の南東部もヒマラヤ山脈に接しているが、チベット高原そのものは地理学的にはヒマラヤ山脈とは別の山系に分類される。
自然ヒンドスタン平野西ヒマラヤ亜高山帯針葉樹林(インドヒマーチャル・プラデーシュ州)

ヒマラヤ山脈の植物相と動物相は、気候、雨量、高度と地質によって分類することができる。気候は山脈の麓にある熱帯から始まり、氷床と雪に覆われた高山帯まで変化する一方、年間降水量は西より東の地域の方が多い傾向がある。気候、高度、雨量と地質の複雑な変化が多様な生態系を育んでいる。
低地森林帯

ヒマラヤ山脈とデカン高原の間にはインダス川とガンジス川が流れる広い平野がある。この平野はヒンドゥスターン平野(またはインダス-ガンジス平原(en:Indo-Gangetic plain))と呼ばれ、森林地帯が広がっている。この平原の西部は乾燥しているが東部は雨量が豊富であるため、東西で植生が異なっている。北西部のパキスタンとインドにまたがるパンジャブ平野は有刺低木林に覆われている。インド東部のウッタル・プラデーシュ州のガンジス上流域にはガンジス上流域湿性落葉樹林帯(英語版)、ビハール州西ベンガル州にまたがるガンジス平原にはガンジス下流域湿性落葉樹林帯(英語版)が広がっている。これらのモンスーン気候の落葉樹林は乾季になると落葉する。アッサム平野は湿性のブラマプトラ流域半常緑樹林(英語版)に覆われている。
テライ・ベルト(Terai belt)

粘土からなる沖積平野にはテライ・ベルトと呼ばれる湿地帯が広がっている。テライ(英語版)とは季節的に湿性になる草地のことである。テライ・ベルトはモンスーンになると冠水し、肥沃な土砂が堆積する。乾季には水が引くが、ヒマラヤから流れてくる地下水で高い地下水位がある。テライ・ベルトの中心部にはテライ-デュアサバンナ・大草原地帯(英語版)がある。ここには世界でもっとも背の高い草で覆われた草原と、サバンナ、落葉樹林、および常緑樹林がモザイク状に広がっている。またテライ・ベルトはインドサイの生息域である。
ババール・ベルト(Bhabhar belt)

テライベルトの標高の高い地域には、ヒマラヤ山脈から流れてきた岩石が堆積してできたババール(英語版)・ベルトと呼ばれる地域がある。ババールと低シワリク山脈は亜熱帯気候に属しており、この亜熱帯地域の最西部にはおもにヒマラヤマツ(英語版)(Chir Pine)を主植生とするヒマラヤ亜熱帯針葉樹林(英語版)がある。低シワリク山脈の中央部にはサラノキを主植生とするヒマラヤ亜熱帯広葉樹林(英語版)が広がっている。
山地森林帯(Montane forests)

ヒマラヤ山脈の中高度の地域には亜熱帯の森に代わって温帯性混交広葉樹林(英語版)がある。この地域の西部は西ヒマラヤ落葉樹林(英語版)と呼ばれ、東部のアッサム州およびアルナーチャル・プラデーシュ州の森は東ヒマラヤ落葉樹林(英語版)と呼ばれる。これらの広葉樹林より標高の高い地域には西ヒマラヤ亜高山帯針葉樹林(英語版)および東ヒマラヤ亜高山帯針葉樹林(英語版)が広がっている。
高山帯(Alpine shrub and grasslands)

森林限界より標高の高い地域には北西ヒマラヤ高山灌木草原帯(英語版)と西ヒマラヤ高山灌木草原帯(英語版)、および東ヒマラヤ高山灌木草原帯(英語版)がある。この地域より標高が高くなるとツンドラ地帯となる。高山草原地帯は絶滅の危機にあるユキヒョウの夏の生息域となっている。ヒマラヤ山脈の最上部は万年雪に覆われている。
プレートテクトニクスインド大陸は6,000キロ以上を移動し、4,000万年から5,000万年前にユーラシアプレートと衝突した

ヒマラヤ山脈は地球上で最も若い山脈の一つである。現代のプレートテクトニクス理論によると、ヒマラヤ山脈はインド・オーストラリアプレートユーラシアプレートの間の沈み込みで起きた大陸同士の衝突による造山運動から生じた。

衝突はおよそ7,000万年前後期白亜紀に始まった。そのころ、インド・オーストラリアプレートは年間15センチの速度で北上し、ユーラシアプレートと衝突した。

約5,000万年前、このインド・オーストラリアプレートの速い動きによって海底の堆積層が隆起し、周縁部には火山が発生してインド亜大陸とユーラシア大陸の間にあったテチス海を完全に閉ざした。これらの堆積岩は軽かったため、プレートの下には沈まずにヒマラヤ山脈を形成した。今もインド・オーストラリアプレートはチベット高地の下で水平に動いており、その動きは高地にさらに押し上げている。ミャンマーアラカン山脈ベンガル湾アンダマン・ニコバル諸島もこの衝突の結果として形成された。かつて海だった証拠として、高山地帯でなどの化石が発見される。

今もインド・オーストラリアプレートは年間67ミリの速度で北上しており、今後1,000万年の間でアジア大陸に向かって1,500キロ移動するだろうと考えられている。この動きのうち約20ミリは、ヒマラヤの南の正面を圧縮することによって吸収される。結果として年に約5ミリの造山運動が発生し、ヒマラヤ山脈を地質学的に活発にしている。このインド亜大陸の動きにより、この地域は地震の多発地帯となっている。
氷河と河川ブータンの氷河湖航空機から見たヒマラヤ山脈。いたるところが氷河に覆われている

ヒマラヤ山脈には非常に多くの氷河が存在し、面積は極地を除く地球上では最大である。ほかにおもな氷河としては、ガンゴートリー山系(英語版)のガンゴートリー氷河、ヤムノートリー(英語版)氷河、カンチェンジュンガ山系のゼム氷河(英語版)、エベレスト山系のクーンブ氷河(英語版)などがある。またカラコルム山脈にはシアチェン氷河ビアフォ氷河バルトロ氷河などがある。

ヒマラヤ山脈の麓は熱帯気候や亜熱帯気候に属するが、頂上部は万年雪に閉ざされている。これらの万年雪は巨大な2つの河川の水源となっている。西への流れはインダス盆地に流れ込み、インダス川はその西方水系の中でもっとも大きな河川である。インダス川はチベットでセンゲ川(英語版)とガル川(英語版)の合流地点から始まり、カーブル川ジェルム川シェナブ川ビアス川サトレジ川などの河川と合流したのち、パキスタンを南西方向に横切り、アラビア海に流れ込んでいる。

インダス川方面以外のヒマラヤ山脈の水源の多くはガンジス・ブラマプトラ川流域に流れ、両河川に合流する。ガンジス川はヒマラヤ南麓にあるガンゴートリー氷河に流れを発するバーギーラティー川(英語版)を源流としている。氷河の下からバギーラティー川が流れ出す地点はゴームク(牛の口)と呼ばれ、標高3,892メートルである[3]。その後、下流でヒマラヤから流れ出したアラクナンダ川(英語版)と合流し、そこからガンジス川という名に変わる。アラクナンダ川のほうが長いが、ヒンドゥー教の文化や神話ではバーギーラティー川のほうが真のガンジスの源流であるとみなされている[4][5]。その後、リシケーシュで山脈から離れ、ヤムナー川と合流したあと、北インドヒンドスタン平原を南東に横切る。

ブラマプトラ川は、西チベットに発するヤルンツァンポ川が、チベットを東に流れ、アッサム平野を西に流れていく。ガンジス川とブラマプトラ川は、バングラデシュで合流し、世界最大のデルタ地形を形成して、ベンガル湾へ流れ出ている[6]

ヒマラヤ最東部の河川はエーヤワディー川を形成している。エーヤワディー川は東チベットから始まり、ミャンマーを南に縦断、アンダマン海に流れ込む。

サルウィン川メコン川、長江と黄河は、ヒマラヤ山脈とは地質学的に区別されるチベット高原から始まるため、本来はヒマラヤ山脈を水源とする河川ではないと考えられている。一部の地理学者は、ヒマラヤ外縁水系の川と分類している。


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