直立姿勢であることによって、背面はやや中央がくぼんだやや弓なりな平面を成し、胸と腹がやや前に突き出した形になる。また、両側の肩胛骨がほぼ同一平面に並び、平らな背中を形成する。胸には気管支、肺と心臓がある。心臓は左にあることが多く、右にある場合を内臓逆位という。心臓からは動脈と静脈に血液が流れている。腹には、胃、腸(大腸、小腸、十二指腸、直腸、盲腸)、肛門、肝臓、膵臓、脾臓、膀胱、尿道などの臓器がある。胴を支える脊椎は骨盤によって受け止められる。そのため、他の霊長目とは違い直立姿勢によって発生する上部の加重軽減するためにやや弓なりに組まれている。ただし、全ての加重を軽減できるものではなく、そのことがヒト独特の脊椎(主に腰椎)に加重ストレスがかかった損傷状態である腰痛を引き起こす要因になる。
胴の下部には生殖器がある。雄は精巣、睾丸と陰茎など。雌は卵巣、子宮と膣など。雌では胸に一対の乳房が発達する。また、腰骨は幅広くなっており、腰の後部に多くの筋肉と脂肪がつき、丸く発達する(尻)。尻の隆起は主として二足歩行によって必要とされたために発達したものと考えられる。しかし雌の尻は脂肪の蓄積が多くてより発達し、乳房の発達と共に二次性徴の一つとされる。特に、雌における乳房は性的成熟が始まるとすぐに発達が始まり、妊娠によってさらに発達するとはいえ、非妊娠期、非保育期間にもその隆起が維持される点で、ヒトに特異なものである。これには、性的アピールの意味があるとされるが、その進化の過程や理由については様々な議論がある。乳房の項を参照。 前足は「腕」、特に尺骨・橈骨より先の部分は「手」と呼ばれ、歩行には使われない。あえて四足歩行を行う場合には手の平側を地につけ歩き、チンパンジーなどに見られるようなナックル・ウォークは一般的でない。 肩関節の自由が大きく、腕を真っすぐに上に伸ばし、あるいは左右に広げてやや後ろに曲げることが可能である。親指が完全に手の平と向かい合う。指先は器用であり、発達した大脳の働きもあり細やかな操作が可能。 後足は「脚部」、特に地面に接する部分は単に「足」とも呼ばれ、歩行のために特化している。膝を完全に伸ばした姿勢が取れる。膝は四足歩行時にここを接地させるので肥厚しやすい。踵と爪先がアーチを形成し、間の部分(土踏まず)がやや浮く。これによって接地の衝撃を吸収する。まれに土踏まずのほとんどない形状(いわゆる「扁平足」)の個体もある。 ヒトは往々にして「裸のサル」といわれる。実際には無毛であるわけではなく、手の平、足の裏などを除けば、ほとんどは毛で覆われている。しかし、その大部分は短く、細くて、直接に皮膚を見ることができる。このような皮膚の状態は、他の哺乳類では水中生活のものや、一部の穴居性のものに見られる。ヒトの生活はいずれにも当てはまらないので、そのような進化が起きた原因については様々な説があるが、定説はない。代表的なのは以下のような説である。 全身は裸に近いが、特に限られた部分だけに濃い毛を生じる。それには生涯維持されるものと、性成熟につれて発生するものがある。おおよそのパターンはあるが、実際の毛の様子には雌雄差、人種差、および個体差が大きい。 毛が密生する部位は、数か所に限られる。それらは、以下のようである。 なお、哺乳類の顔面には上述の体毛とは別に、感覚器官としての毛「洞毛(どうもう)」が生えているが、ヒトの顔面からは洞毛が完全に消失している。 この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方)
前足
後足
体毛について
外部寄生虫がとりつきにくくする、あるいはそれらを取りやすくするための適応。
体表を露出することで、放熱効率を上げて、持久力を上げるための適応。
幼形成熟(ネオテニー)の結果。
性的接触の効果を上げるための適応。
一時期に水中生活を送ったなごり。(水に浸からない頭髪だけが残ったという説。アクア説を参照。)
頭部の上から後ろにかけて(頭髪)・目の上の横長の部位(眉)・まぶたの縁(睫毛)・鼻孔内(鼻毛):この部分は、ごく幼い頃から毛が濃く、成人までそれを維持する。特に頭髪は生涯伸び続け、放っておくと数メートルに達するが、ほとんどの個体は自ら(あるいは他の個体に依頼して)道具を用いて適度な長さに整えている。老化が進むにつれて頭髪は薄くなる場合があり、それは雄で特に著しい(ハゲ)が、個体差が大きい[注 1]。
脇の下(脇毛)・股間の性器上部と周辺から肛門周辺にかけて(陰毛):いずれも第二次性徴の発達に並行発達する。
顔の鼻から下、耳から顎にかけて(髭)・胸の中心線周辺(胸毛)・足の膝から下(すね毛):これも二次性徴の発達にしたがって出現するが、雄に顕著で、雌ではあまり発達しない。雄でもこれらの毛の濃さには個体差があり、ほとんど生えないものもいる。
内部形態
出典検索?: "ヒト"
ヒトは大部分の哺乳類とは異なり、後肢だけで立つ直立姿勢が普通の姿で、移動は主としてこの体勢で両足を交互に動かす、いわゆる直立二足歩行を行う。ゆっくり移動するのを歩く、早く移動するのを走るという。長距離移動に関しては能力が高く、訓練すれば数時間も走り続けることができる。 前肢は主としてものをつかむ、引く、押すなど操作するのに使われる。そのため、前肢の基部の関節の自由度が高い。通常、赤子の時期を除いて、前足を移動に使うことはない。他の類人猿のように前かがみになっても、両手が地面につくことはまずない。ただし、急傾斜地や崖を登る際には両手を使うこともあるが、地面を押さえて体を支えるよりは何かをつかんで体を引き上げるのが普通である。 ヒトの特筆すべき能力として、複雑な指の運動や腕の運動による、道具の加工、武器の使用、投擲がある。手で物をつかんで投げる能力は、一部のサルのみが持っているが、中でもヒトは、個体にもよるが速度は150km/h、距離は数十mを優に超える投擲能力を有している。こうした能力は道具・武具の進歩と共に相乗効果的に向上し、生活に必要な技能(狩猟)のほか、個体対個体や社会対社会の衝突(喧嘩・縄張り争い・戦争)、そして娯楽文化(スポーツ)などを発達・発展させる基礎の一端にもなっている。 特に高温への適応に卓越している。エクリン腺を全身に有し、水分と電解質を充分摂取すれば高温環境でも激しい運動が可能である。エクリン腺による発汗能力を発達させ、炎天下で長距離疾走できるのは哺乳動物の中ではヒトの他にはウマ科など一部の種に限られる。もっとも高温への対応を発汗機能に頼ったことで、高温かつ多湿には耐性が弱い。 皮下脂肪が発達しており低温環境にも一定の適応性を有しているが、ヒトは他の哺乳動物のように体毛での体温保持はできず、低温には衣服で対応している部分が大きい。 消化管が短く、歯やあごが弱いなど消化吸収能力が低い。他の動物でしばしばみられる糞食も通常は行わなず、それを行う個体はむしろ異常な性的嗜好を持っていると見なされる場合がある。一般に食物は、たとえば同じ重量の肉・イモでも加熱調理によって分子結合が変化するため短時間で消化吸収でき、摂取できるカロリーが増える。ヒトはそれを行わなければ生存すら困難である反面、消化吸収で運動能力が低下する時間が短い。 また、ビタミンCを体内合成できない。かなり多くの塩分を処理できるが、海水では生活できない。 動物はたいてい生まれつき泳げるが[要出典]、ヒト・ゴリラなどを含むごく一部の霊長類だけが例外的に、学習しない限り泳げない。しかし訓練すれば20-30mの水中に潜ることも可能であり、200mまで潜った記録もある[8]。 他の多くのほ乳類と同じく有性生殖で胎生である。妊娠期間は約266日、約2 - 4kg前後で生まれる。 新生児はサル目としては極めて無力な状態である。一般のサル類は、生まれてすぐに母親の体にしがみつく能力があるが、ヒトの場合、目もよく見えず、頭を上げる(首がすわる)ことすらできない状態である。これは直立歩行により骨盤が縮小したために、より未熟な状態で出産せざるを得なくなったためと考えられている。しかしながら、出産直後の新生児は自分の体を支えるだけの握力があることが知られ(数日で消える)、また、体毛も出産までは濃く、その後一旦抜けるなど、「裸で無力」なヒトの乳児の性質は二次的に獲得されたとする説もある。 約2年で、次第に這い、立ち歩き、言葉が操れるようになる。栄養の程度にもよるが、10年から20年までの間(思春期)に性的に成熟を完了する。体の成長はその前後に完成する。 だいたい12歳 - 15歳のころに生殖能力を得るようになる。11歳未満で生殖能力を得る個体も存在するが、雌の場合はまだ身体が成長途中であるために、妊娠には大きな危険が伴う。個体が成育する文化によるが、雌雄共に15歳を過ぎたあたりから生殖に対し活発になり、40歳くらいまでは盛んな時期が続く。雄の場合、その活動は次第に低下していき老齢に達しても生殖能力を持つものから50代程度で失うものがいるなど個体差がかなり大きい。それに対して雌では通常50 - 55歳くらいに閉経があり、それを期に生殖能力を失う。
ヒトの前肢
ヒトの体温調節能力
ヒトの消化吸収能力
ヒトの泳ぎ
生活史
Size:126 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef