ヒトの脳
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脳幹詳細は「脳幹」を参照

脳幹は大脳の下に位置し、中脳延髄からなる。頭蓋骨の後ろ側、斜台と呼ばれる部分の上にあり、後頭骨に大きく開口した大後頭孔まで続いている。脳幹はそこからさらに下へ、脊椎に守られた脊髄に繋がっている[40]

12対の脳神経のうち10対[注釈 1]が、脳幹に直接繋がっている[40]。脳幹は多くの脳神経核と末梢神経の神経核があり、呼吸・眼球運動や平衡感覚の制御など、生命維持に不可欠な多くの作用の統制に関わる神経核もある[41][40]。網様体は、雑多に組み合わさった神経核のネットワークで、脳幹の全体にわたって存在する[40]。大脳皮質と体の他の部位との間で情報を伝達する神経走行の多くが脳幹を通過する[40]
微小解剖学

ヒトの脳は主として神経細胞グリア細胞神経幹細胞血管で構成される。神経細胞の分類としては、介在ニューロン、ベッツ細胞(英語版)などの錐体細胞運動ニューロン上位運動ニューロン下位運動ニューロン)、小脳のプルキンエ細胞といったものがある。ベッツ細胞は(細胞体のサイズでみると)神経系で最大の細部である[42]。成人したヒトの脳には860±80億個の神経細胞があり、また神経細胞でない細胞もほぼ同数(850±100億個)あると考えられている[43] 。神経細胞のうち、160億個 (19%) が大脳皮質にあり、690億個 (80%) が小脳にある[5][43]

グリア細胞の分類としては、アストロサイト(例えばバーグマングリア細胞)、オリゴデンドロサイト上衣細胞(例えばタニサイト)、放射状グリア細胞、小膠細胞、オリゴデンドロサイト前駆細胞の亜型がある。アストロサイトはグリア細胞の中では最大の細胞であり、細胞体から放射状に多くの突起を伸ばした星細胞(英語版)である。それらの突起は、先端が毛細血管を取り囲むようになっているものもある[44]。皮質のグリア境界膜(英語版)はアストロサイトの突起で構成され、脳の形を細胞の塊として保持する役割も果たす[14]

肥満細胞は脳の神経免疫系(英語版)で相互作用を行なう白血球である[45]。中枢神経系の肥満細胞は髄膜をはじめ多くの部位に存在し[45]、炎症が起こった際に神経免疫反応を取り持ち、血液脳関門の維持を助けると共に、特に血液脳関門が無い脳部位において働く[45][46]。肥満細胞は中枢神経系と体内の他の部位で同様の多岐にわたる役割を果たし、例えばアレルギー反応の作用と統制、先天性免疫(英語版)と適応免疫自己免疫炎症への対処が挙げられる[45]。肥満細胞は主たるエフェクター細胞(英語版)として働き、これを介して病原体は消化管と中枢神経系との間で交わされる生化学的シグナルのやりとりへ影響を及ぼすことになる[47][48]

約400の遺伝子が脳に限局して働くものと分かっている。全ての神経細胞でELAVL3が発現しており、錐体細胞ではNRGNとREEP2も発現している。神経伝達物質GABAの生合成に欠かせないGAD1は介在ニューロンで発現している。グリア細胞で発現する蛋白質としては、アストロサイト・マーカーのGFAPとS100Bがある。ミエリン塩基性蛋白、転写因子のOLIG2はオリゴデンドロサイトで発現する[49]
脳脊髄液詳細は「脳脊髄液」を参照脳脊髄液は脳の周囲および内部の空間を循環している

脳脊髄液は無色透明な細胞通過液で、脳の周囲のクモ膜下腔、脳室系、脊髄の中心管を循環している。またクモ膜下槽(英語版)と呼ばれる、クモ膜下腔にあるいくつかの空間を満たしている[50]。2つの側脳室第三脳室第四脳室の4つの脳室には、いずれも脈絡叢があり、それが脳脊髄液を産生している[51]。第三脳室は正中線の位置にあり、左右の側脳室と繋がっている[50]。橋と小脳の間にある中脳水道という1本の管が第三脳室と第四脳室を繋げている[52]。第四脳室正中口と2つの第四脳室外側口という3つの開口部が、脳脊髄液を第四脳室から主要な槽の一つである大槽(英語版)へ流し込んでいる。ここより、脳脊髄液はクモ膜と軟膜の間のクモ膜下腔を通じ、脳と脊髄の周囲を循環する[50]

いつの時点でも、脳脊髄液は約150 mL存在し、そのほとんどはクモ膜下腔にある。それは絶えず産生・吸収され、5 - 6時間でまるごと入れ替わる[50]

グリンパティック系(英語版)は、脳におけるリンパ排出系とされてきている[53][54][55]。脳全体で見たグリンパティック経路は、脳脊髄液から、および硬膜静脈洞にかかわる髄膜リンパ管からの排液路で、脳血管に沿っている[56][57]。この経路は脳の組織から間質液を排出する[57]
血液内頸動脈と椎骨動脈は大脳動脈輪で合流する脳を覆う膜組織と血管「en:Cerebral circulation」も参照
動脈系

内頸動脈は酸素を充分に含んだ血液を脳の吻側へ、椎骨動脈は尾側へ運ぶ[58]。この2つの流れは、中脳と橋の間の脚間槽(英語版)にある環状に動脈が繋がった大脳動脈輪で合流する[59]

内頸動脈は総頸動脈から分枝し、頸動脈管(英語版)を通じて頭蓋骨に入り、海綿静脈洞を通ってクモ膜下腔に入る[60]。そして大脳動脈輪に入り、2本の前大脳動脈(英語版)に分かれる。前大脳動脈はまず前方へ、次いで大脳縦裂に沿って上行し、脳の前部と中部に血液を供給する[61]。1本ないし複数の細い前交通動脈(英語版)が分枝の直後に2本の前大脳動脈に合流する[61]。内頸動脈は中大脳動脈と名を変えて先へ続き、眼窩蝶形骨に沿って横へ進み、島皮質を通って上行し、そこで最後の分枝が起こる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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