パーヴォ・ヌルミ
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ストップウオッチを手に、1周また1周と(終点の)テープに向かい、数学テーブルの規則にしか従っていない」と述べた[注 5][112]。マラソン選手のジョニー・ケリー(英語版)は1936年オリンピックではじめて憧れのヌルミに会った。彼はヌルミが始めには冷たかったが、ヌルミが彼の名前を聞いた後に割と長く話し合っており、「彼は私の手を握った――興奮した様子で。信じられない!」と回想した[113]

ヌルミの速さと性格のつかみどころのなさにより、「ファントム・フィン」(Phantom Finn)、「走者の王様」(King of Runners)、「無比のパーヴォ」(Peerless Parvo)などのあだ名をつけられた[8][114][115]。一方、彼の数学における技術とストップウオッチの使用によりマスコミは彼を走る機械として描写した[116]。とある記者はヌルミを「時間を消滅させるために作られた機械のフランケンシュタイン」と形容した[117]。フィル・コージノー(英語版)は「ロボットが現代の霊魂のない人類を代表するようになる時代、彼自身が発明した、ストップウオッチでペースをつけるテクニックは人々に霊感を与えるのと同時に困惑させた」[117]。大衆向け新聞ではヌルミに関する噂としては彼が「奇形的な」心臓を持ち、脈拍数が異常に低い、というものがある[118]。ヌルミがアマチュアかどうかの論争の最中、ヌルミは「世界中の運動選手の中で最も低い脈拍数と最も高い提示価格を有した選手」であるといわれた[115]

フィンランドから遠く離れた日本においても、ヌルミは同時代において知られた存在であった。詩人の高村光太郎は1929年9月に書いた詩「或る筆記通話」に「ヌルミのぬ」という一節を入れている。
死後アテネウム美術館にあるヌルミ像の前に立つヌルミとヴァイノ・アールトネン、1930年代の写真。

ヌルミは1500メートルから20キロメートルまでの競走の公式世界記録を合計で22更新しており、更新数自体が新記録である[15][119]。非公式記録も多く作り、公式記録と合わせて合計58となっている[84]。国際陸連は1980年代まで屋内記録を認可しなかったため、ヌルミの屋内世界記録は全て非公式である[15]。ヌルミの生涯オリンピックで金メダルを最も多く獲得した選手という記録は1964年に体操選手ラリサ・ラチニナが、1972年に競泳選手マーク・スピッツが、1996年に陸上競技選手カール・ルイスが並び、2008年に競泳選手マイケル・フェルプスに破られた[120][注 6]。ヌルミの生涯オリンピックでメダルを最も多く獲得した選手(英語版)という記録は1960年にフェンシング選手エドアルド・マンジャロッティ(英語版)が13個目のメダルを獲得したことで破られた[121]タイム雑誌は1996年にヌルミを最も凄いオリンピック選手であると選び[122]、国際陸連は2012年に陸上殿堂入り選手を初めて選抜したとき、ヌルミはその時に選ばれた選手12人の1人となった[123]

ヌルミは常にストップウオッチをもって走り、均一速度走法を発明して1レース間にエネルギーを均一に消費した[124]。この走法を使用した理由について、ヌルミは「時間と競争するとき、スパートをかける必要はない。(終点の)テープまで一様に辛いので、他の人はそのペースを維持できない。」と述べた[115]。アーキー・マクファーソン(英語版)は「常にストップウオッチを手に持った彼(ヌルミ)は陸上競技において賢く努力することを新しい水準に上げ、現代科学で武装した陸上競技選手の先駆者となった」と述べた[125]。ヌルミはトレーニングにおいても先駆者として知られ、彼は一年中を通してトレーニングを行う系統的なプログラムを作成、長距離走とインターバルランニングを組み込んだ[126][127]ピーター・ラヴゼイは著作の「長距離の王:偉大な走者5人に関する研究」(The Kings of Distance: A Study of Five Great Runners)でヌルミが「世界記録の更新を加速。分析的なトレーニング法を発展させて、それを具体化。フィンランドだけでなく、世界の陸上競技全体に対しても大きな影響力を有した。ヌルミのスタイル、テクニック、戦術は絶対確実とされ、実際にフィンランドの選手が模倣して記録を更新してきたことから尚更だった。」と述べた[78]Track & Field Newsの創刊者コードナー・ネルソン(Cordner Nelson)は競走が多くの観客を集めるスポーツに発展したことについて、ヌルミがその功労者であると考え、「彼の競走における足跡は空前絶後だった。


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