パールシー
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パールシーは、1875年にロシア人オカルティストのヘレナ・P・ブラヴァツキーとアメリカ人ヘンリー・スティール・オルコットが設立した神智学協会神智学から相当に大きな影響を受けている[1]。また逆に、1879年に神智学協会がインドに進出してマドラスに本拠地を置いた当初には会員の半分がパールシーだった程、神智学協会におけるパールシーの勢力も大きく、オルコットは神智学協会が説くオカルト科学とゾロアスター教は一致した内容を持つと考えていた[1]。パールシーと神智学協会は共にゾロアスター教の教義が時代遅れでないことを証明しようとした[1]。近代化に反発するパールシーは、神智学協会の反物質主義的な思想を歓迎した。神智学協会によるパールシーの宗教儀式への秘教的意味付けを、儀式を無意味であるという批判への反論を可能にするものとして歓迎する人もいた。また、神智学協会は善・悪の二神を人間心性の二傾向として理解し、ブラヴァツキーは人間を導く天使と悪魔はその人の心の上位自己と下位自己であるとしたが、改革派パールシーはこれを受けて、善神アフラ・マズダを上位自己、悪神アンラ・マンユを悪しき欲望、下位自己であると考えた[1]

両者の関係は、キリスト教宣教師によるゾロアスター教への攻撃、イギリス統治下でのパールシーの経済的成功からパールシー社会に広まった拝金主義と宗教的無関心、パールシー司祭階級の堕落への危機感といった背景がある[1]。神智学協会は、ゾロアスター教は一神教であり輪廻転生の教義[3] を持つと考え、菜食主義などゾロアスター教と関係のない習慣もパールシーに持ち込んでおり、パールシーの伝統と思想を脅かすという懸念も少なくなかった。パールシーの神智学徒たち(パールシー神智学)は、開祖ザラスシュトラを神智学の「知恵のマスター」たちよりもさらに偉大な神的存在であると考えた。また、オルコットがフリーメーソンに入会していたこともあり、フリーメイソンの支部がパールシーに作られ多くの知識人が入会した[1]

世界同胞思想、反植民地思想を持つ神智学協会には社会思想・社会活動としての面があり、W・P・Wadiaが設立したインド最初の労働組合など、現実的な問題に関心を向ける進歩的なパールシーと共に行った社会活動も少なくない[1]

パールシーによるゾロアスター教的オカルト運動、または神智学をゾロアスター教化したものとして、エルメ・フシュヌーム(英語版)がある。
現状

少数派の民族として生き残るために、パールシーは共同体ともいえるネットワークを作り出し、お互いに協力している。イランから持ち運ばれた火の燃えるパールシーの寺院はムンバイとプネーにいくつかあるが、異教者の入場は認められていない。パールシーは裕福な層が多く、教育や文化度が高い。

2010年現在、6万1千人程のパールシーがインド国内にいるといわれるが、数は減少傾向にある。10年ほど前には6万9千人だった。理由は、現在もパールシーはグジャラートのマハラジャとの約束を守っていることにある。父親がゾロアスター教でなければ信徒となれず、女性が異教徒と結婚した場合は、信仰を捨てなければならないからである。

パールシーは数世代前までは子供は5人程度もつのが一般的であった。しかし最近はその生活水準の高さから、結婚や子供の数が欧米や日本のような少子化傾向になっている。1人かせいぜい2人、場合によっては一生を独身のままで子供を作らない男性もいる(その宗教的背景から女性の結婚は増加に寄与しない)。この結果、年々パールシーの数は減少している。タタ財閥の相続が行われた際[いつ?]に、タタの名字をもつ相続者は1人しかいなかったといわれている。

インド独立運動にかかわったパールシーの政治家フェーローズ・ガーンディーは、後年インドの初代首相となったジャワハルラール・ネルーと親しくなって、ネルーの一人の娘でありのちにインドの第3代首相となったインディラ・ガンディーと結婚した[4]。ただし、ガンディーの家族名はグジャラート出身者に多い名前で、必ずしもパールシーだけの家族名ではない。
著名な人物「インドの財閥」も参照

フレディ・マーキュリー-イギリスのロックバンド・クイーンのボーカリスト、当時イギリス領だったタンザニア・ザンジバル島でパールシーの両親の下に生まれ、子供時代にインドへ移住した。

ズービン・メータ - インド出身の指揮者。

カイホスルー・シャプルジ・ソラブジ - イギリスの作曲家、ピアニスト

パーシス・カンバッタ-元ミスインド、女優。スター・トレックなどに出演の女優。

その他

19世紀から続く学者神官一族ジャーマースプ・アーサー家の第6代当主カイ・ホスロウ[5] によるパールシー教入信の儀式、Navjote

ゾロアスター教寺院・ムンバイ

ゾロアスター教寺院・ムンバイ

ゾロアスター教寺院・バンガロール

ゾロアスター教寺院・アフマダーバード

フレディ・マーキュリー

パールシーの少女(画:ラヴィ・ヴァルマ)

ムンバイに建設された沈黙の塔


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