作品の中で今は「犯罪に走る極端なオタク」は登場させたが、「オタク」に限らず、物事に極度に熱中する人間は往々にして「自分と他者」や「夢と現実」の境界を曖昧にしてしまう、と描きたかっただけで、特に批判的意図はないと語っている[13]。最後に主人公がミラー越しにセリフを言うのは、今自身による解釈では、すべてが嘘だったからではなく、人生とは苦難を乗り越えれば完全に成長できるという単純なものではなく、何度も同じことを繰り返して成長するものであり、正面から捉えてしまって確定してしまうことを避けるという意図があるという。ただ、どんな解釈があってもいいとも語っている[21]。 本作では予算上の都合からCGを導入できなかった一方、ホワイトアウトが意図的に多用された[13]。ホワイトアウトの多用した目的は、主人公・未麻の心理的な混乱に加え、「未麻とアイドルとしての未麻(今らはヴァーチャル・未麻と呼んでいた)」「アイドルとそのファン」「タレントと裏方のスタッフ」という対比を表現するためである[13]。 本作ではショッキングな演出も含まれており、今は過去のインタビューの中で「執拗にすると暴力描写自体が目的になりかねず、あれ以下に抑えると、それらのシーンが表現すべき『感情』が弱まる気がした」と暴力表現の調整の難しさについて述べている[10]。 未麻の部屋は彼女の精神状態を示すためのアイテムの一つとして用いられ、五味彬の『YELLOWS PRIVACY '94』やインテリアの写真集などを基に構築された。また、登場人物の設定上必要な場所への取材も行われ、その中には村井が当時参加していた『木曜の怪談・怪奇倶楽部』の収録現場や水野あおいのステージなども含まれている[22]。 今は、自分の作品では一切ロトスコープを使っていない[7]。アイドルグループのステージシーンは、振り付け師に依頼して実際にプロダンサーに踊ってもらい、それをビデオ撮影して作画参考にはしたが、いわゆるロトスコープと呼べるようなものではない[7]。 作中上には平沢や平沢が率いたバンドのマンドレイク、P-MODELの名前や曲名が描かれており、次作「千年女優」より今は平沢とタッグを組む事となる[23]。 今は作画の時点で未麻の演技のイメージが定まっていた一方、声質についてのイメージがなかったことから、未麻役の選出には苦労したと自身のブログの中で振り返っている[24]。オーディションの参加者の中には、エンディングテーマを歌う予定の川満美砂 他の登場人物の選出は三間雅文が中心となって行い、ルミ役にはオーディションで松本梨香が選ばれた[24]。作品完成後、松本は今に「ルミ役は絶対私しかいないと思ってくれていた」と話している[24]。 男性の登場人物の選出は声優のプロモーションテープによる判断で行われたが、独特のキャラクター性を持つ田所の役や、終盤までセリフがない上に「体格の割に声が甲高い」という設定の内田役の選出には時間を要した[24]。最終的にはプロデューサーの判断により、田所役には辻親八が、内田役には大倉正章がそれぞれ起用された[24]。 また、制作状況の悪化により、フィルムがすべてそろわない状態で収録せざるを得ず、細かな演出上の指示を出すことができなかった[10]。
美術・演出
演技・キャスティング
スタッフ
原作:「パーフェクト・ブルー 完全変態」竹内義和[注 2]
監督・キャラクターデザイン:今敏
企画:岡本晃一・竹内義和
企画協力:大友克洋・樋口敏雄・内藤篤
プロデューサー:中垣ひとみ・石原恵久・東郷豊・丸山正雄・井上博明
脚本:村井さだゆき
キャラクター原案:江口寿史
演出:松尾衡
作画監督・キャラクターデザイン:濱州英喜
色彩設計:橋本賢
美術監督:池信孝
撮影監督:白井久男
音楽:幾見雅博
音楽プロデューサー:斎藤徹
音楽A&Rプロデューサー:堀正明
振り付け:IZUMI
音響監督:三間雅文
音響効果:倉橋静男(サウンドボックス)
協力:寿精版印刷株式会社・朝日放送株式会社・株式会社ファングス