パーフェクトブルー
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

2023年、公開25周年とマッドハウスの創業50周年を記念して、4Kリマスター版が9月15日から全国で劇場公開された[1]
テーマ・モチーフ

今にオファーがあったときには、すでに『パーフェクトブルー』というタイトルと「B級アイドルと変態ファン」という設定が決まっていた[12][13][14]。今は原作を全く読まず、原作に近いとされる映画の最初のラフプロットだけを読んだ[注 4]。そして、彼はこの脚本を映画の中で一切使わなかった[13][20]。元々の小説には劇中劇もなければ、夢と現実の境界の曖昧さというモチーフもなかった[20]。その初期のプロットは、「アイドルの女の子が彼女のイメージチェンジを許せない変態ファンに襲われる」という内容で、映画よりももっとストレートなスプラッター・サイコホラー物だった。出血の描写も大変多く、特にホラーやアイドルが好きではない今には向かない内容だった[10][11][20]。今も、自分がもし自由に企画を立てられる立場だったらそのような設定を考えることはあり得ないと語っていた[20]。そのようなジャンルは、『セブン』『氷の微笑』『羊たちの沈黙』など様々な作品で既に扱われている手垢のついてしまったものであり、またアニメが不得手とする分野でもあった[8][10][13]。そしてその手のジャンルの作品は、そのほとんどが「加害者である犯人がいかに変態であるか、あるいはどれほど狂っているか」に重きを置いているように見えるので、今はその裏をかいて「ストーカーに狙われることによっていかに被害者である主人公の内面世界が壊れていくか」に焦点を当てた[13]。ただし劇中劇『ダブルバインド』については、すぐにハリウッドの流行に便乗して安直な物真似ドラマを作る日本のテレビドラマ業界への批判を込め、ストレートなサイコホラー、というよりもむしろパロディに近い内容にした[13]

今が監督を引き受けることにしたのは、初監督の魅力に抗えなかったことと、映像化にあたって原作者の竹内から「主人公がB級アイドルであること」「彼女の熱狂的なファン(ストーカー)が登場すること」「ホラー映画であること」という3点さえ守れば、好きなように話を作り替えても構わないという許可を得たからである[10][11][20]。そこで彼は、原作から日本特有の存在とも言うべき"アイドル"、それを取り巻くファンである"オタク"、それが先鋭化していった"ストーカー"、といったいくつかの要素を取り出し、それらを使って全く新しいストーリーを作るつもりで脚本家の村井さだゆきと可能な限り様々なアイディアを出していった[8][10][11]

また、映画にはその核となるモチーフが必要で、それは脚本家や他の誰かではなく、監督である今自身が見つけなければならなかった[8][10][11]。そこで彼は、原作小説を自分が面白いと思える内容に翻案しようと思案し、その中で「虚実を曖昧にする」という方法論が出てきた[14]。コンセプトの「現実と虚構」は、今が平沢進のアルバム「Sim City」を聴いたことからインスピレーションを得た[4]。今は「このアルバムは、何の進化の過程もなしに、突然高度な現代性を持って生み出された都市のようなものです。私はこのアルバムに影響を受け、私に大きなインスピレーションを与えてくれました。」と語っている[4]。そして以前脚本を書いた短編映画「彼女の想いで」(オムニバス映画『MEMORIES』より)や、中断していた自分の漫画『OPUS』から、「夢と現実」「記憶と事実」「自己と他者」といった本来「境界線」があるはずの物同士がボーダーレスとなって溶け合うというモチーフを思いついた[13][14]。その内に、主人公である「私」の周囲の人間たちにとっては「現実/現在の私」よりも「私」らしいと思える存在が、主人公本人も知らないうちにネット上で生み出されている、というアイディアが出てきた[8][10][11]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:114 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef