パートナーシップ
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また、全社員が有限責任のパートナーシップ類似の形態としては、アメリカ合衆国ではリミテッド・ライアビリティ・カンパニーが、イギリスではリミテッド・ライアビリティ・パートナーシップが、それぞれ制定法により導入されている。
パートナーシップの種類
(ジェネラル・)パートナーシップ((general) partnership)
一般的なパートナーシップ。2人以上のパートナーからなる。全てのパートナーが無限責任(Personal Liability)を持つ。米国では、改訂統一パートナーシップ法(Revised Uniform Partnership Act)に基づく各州の法律によって規律される。改定前は他のパートナーが引き起こした通常の損失以外の損失については、不法行為(Tort)によるもののみが連帯責任であったが、改訂後は契約違反(Breach of Contract)も含まれるようになった。
リミテッド・パートナーシップ(limited partnership)
無限責任のジェネラル・パートナー(general partner)と有限責任のリミテッド・パートナー(limited partnesr)の2種類から構成される。ジェネラル・パートナーが最低でも1人はいなくてはならず、かつ2人以上のパートナーが居なければならない。例えば唯一のジェネラル・パートナーが死亡または破産した場合、リミテッド・パートナーシップは直ちに解散となる。米国では、改訂統一リミテッド・パートナーシップ法(Revised Uniform Limited Partnership Act)に基づく各州の法律によって規律される。リミテッド・パートナーシップの成立には登記が必要で、必ず全ジェネラル・パートナーが登録されなければならない。ジェネラル・パートナーの新規加入にはリミテッド・パートナーの賛同は必要なく、ジェネラル・パートナー全員の許可があればよい。リミテッド・パートナーの新規加入には全パートナーの許可が必要である。リミテッド・パートナーはパートナーシップの重大な経営戦略に直接関わってはならない。リミテッド・パートナーが経営に関わっているために外部からはジェネラル・パートナーであるかのように見える場合、無限責任を負わされる場合もありうる。
リミテッド・ライアビリティー・パートナーシップ(LLP; limited liability partnership)
米国におけるジェネラル・パートナーシップの一種。全てのパートナーが通常の損失については同様の無限責任を連帯的に持つ。また、パートナーシップの名義で行われる契約についても同様に無限責任を持つ。ただし、他のパートナーが引き起こした不法行為(Tort)については、有限責任である。つまり、あるパートナーの違法行為による金銭的損失は、他のパートナーには有限責任である、ということである。弁護士などの専門職の事業体として利用される。
リミテッド・ライアビリティ・リミテッド・パートナーシップ(LLLP; limited liability limited partnership)
米国におけるリミテッド・パートナーシップの一種。ジェネラル・パートナーについてLLPと同様に責任の制限がある。一部の州でしか法が施行されていない。
パートナーシップの税法的特徴

以下はアメリカ合衆国における税法を基に述べる。

税法上、パートナーシップは単一の企業体(entity)とされる。その面では、株式会社などのC法人(C corporation)や合同会社など人的法人であるS法人(S corporation)と同一である。しかし、パートナーシップでは、S法人と同様に、フロー・スルー(パス・スルーともいう。)と呼ばれる特徴的な課税方法が行われている。(これらの企業体を総称して、「フロー・スルー・エンティティ」flow-through entity (FTE) という。)

パートナーシップは前述の通り「フロー・スルー」課税の対象であり、具体的にはパートナーシップの収益に対し、企業体自体に法人税または所得税をかけるのでなく、費用と収入を直接各パートナーの所得に直接分配し、パートナーたる個人または法人の単位で所得を申告することになる。

ところで、アメリカにおける所得税法では、株式による配当(dividend)も通常の収入として課税される。したがって、通常のC法人においては、一度C法人が所得税を納め、その税引き後収入を配当した上でさらに個人のレベルで課税されるため、株主への配当と会社の所得に二重に課税されてしまう。これに対し、パートナーシップ、有限責任事業組合(limited liability partnership)、合同会社(limited liability company)、日本の旧有限会社法による有限会社、ジョイント・ベンチャー(Joint Venture)などは全てフロー・スルー税法の対象となるため、S法人の出資者や社員の国籍や納税地によっては、納税において有利なことがある。

Appleアマゾン(2016年5月1日以降)、西友ウォルマート)、シスコシステムズなど米国企業の日本現地法人は合同会社の形態をとることが多いが、これらの合同会社は、本国の税法上すべてS法人である。
配分率(Share)

各パートナーは、パートナーシップの損益を一定の割合で分配する。一般的には収益と損失は同一であるが、収益と損失をそれぞれ別の割合にしても構わない。例1:ABCパートナーシップは、アラン、ブラウン、カーリーがそれぞれ損益の1/3を分配する。もしもある年度に$3,600の収益がある場合はそれぞれ$1.200ずつ分配される。各パートナーはこの損益を個人の納税申告に加える。例2:D&Eパートナーシップにおいて、ドナルドは収益を40%、損失を55%、エルガーは収益を60%、損失を45%配分される。20x1年度にパートナーは$20,000の収益があった。ドナルドは$8,000、エルガーは$12,000の収入が分配される。20x2年度にパートナーは$1,000の損失があった。ドナルドは$550、エルガーは$450の損失が配分される。

パートナーシップの負債は、パートナーの負債と同義である。パートナーシップの負債は配分率で分配される。例えば2人のパートナーが50%ずつの配分率を持つ場合、$30,000のパートナーシップの負債は各パートナーが$15,000ずつ分配されていることになる。

もしも配分率を特に決めていない場合は、ジェネラル・パートナーシップの場合はパートナーの人数で頭割りとなる(パートナーが5人ならば20%ずつ)が、リミテッド・パートナーシップの場合は出資比率に応じて分配される。ただし、これは配分率を決めていない場合の措置であり、パートナーシップは自由に配分率をパートナーの合意で決めることができ、また後から変更も可能である。

配分の例外として、家族内パートナーシップがある。もしも構成するパートナー全員が家族内のみであるならば、実質的な貢献分をまず分配しなければならず、その残余を配分率に従って分配することになる。例:父兄妹の3人がパートナーシップを構成している。それぞれ1/3ずつの配分率を持っている。20X9年度のパートナーシップの収入は$6,000であった。ただし、父が$2,000、兄は$1,000の貢献をしているが妹は何の貢献もしていない。この場合、まず父と兄にそれぞれ$2,000と$1,000の配分がまずなされ、残りの$3,000が三等分される。つまり、父は$3,000、兄は$2,000、妹に$1,000の利益配分が行われる。
持分(Tax Basis)

パートナーの税法上の基準となるのが持分である。持分は、資本(Capital Account)と負債からなる。持分は前提として、$0未満には必ずならない。
持分が増加する条件
(a-1)資本を提供した場合(a-2)パートナーシップの収益が配分された時(a-3)パートナーシップが負債を持った時
持分が減少する条件
(b-1)パートナーシップの資産が分配された時(b-2)パートナーシップの損失が配分された時(b-3)パートナーシップの負債が返済された時

a-1:資本の提供は、基本的に非課税であり、損益が発生しない。そのため、金銭以外の不動産を含む物品の提供が行われた場合、その物品の修正後ベーシス(Adjusted Basis)といわれる、入手時のコストを元にした価格を使用する。納税者は通常はこの修正後ベーシスと譲渡時の時価(FMV:Fair Market Value)とを比較してキャピタル・ゲイン/ロスを認識し、ゲインに対しては課税される。しかしパートナーシップへの資本の提供においては、パートナーシップへ修正後ベーシスが引き継がれるため、その時点ではゲイン/ロスが発生しない。これは譲渡を行うと利益が確定してしまうために資本投資を控えることを防ぐと共に、パートナーシップの譲渡を利用して損益を調整して節税を行うのを防いでいる。パートナーシップへ提供された物品が第三者に譲渡される場合、譲渡時の時価と比較してキャピタル・ゲイン/ロスが発生するが、これを提供したパートナーが認識する。この物品の保有期間は、提供元のパートナーが入手した時点から換算する。例:あるパートナーの修正後ベーシス$400の物品がパートナーシップに提供された場合に時価が$600になっている場合、損益の発生は一切起こらない。そして時価でなくベーシスの$400だけ提供したパートナーの持分(Tax Basis)が増加する。その物品が第三者に譲渡された場合、売却額が$550の場合、$150のキャピタル・ゲインが提供元のパートナーにかかる。

資本の提供として労務(Service)を提供する場合は、その時価を労務を行うパートナーの持分に加える。例:3人のパートナーがそれぞれ現金$3,000、修正後ベーシス$4,000(時価$5,000)の不動産、修正後ベーシス$1,500(時価$1,000)の動産と労務、を提供する場合、パートナーシップの時価が$10,000ならば、現金と物品の時価合計は$9,000であるため、労務は時価$1,000となり、それぞれのパートナーの持分は$3,000、$4,000、$2,000だけ増加する。


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